乳がんは早期発見が重要。命を落とさないために検診を

 10月はピンクリボン月間。ピンクリボンとは、乳がんの正しい知識を広め、乳がん検診の早期受診を推進することを目的とした世界的な啓発キャンペーンで、日本でもさまざまなイベントや運動が行われている。
 ここ数年、著名人でも乳がんで亡くなったり、闘病を明かしたりする人が増えているが、毎年約1万人以上が、乳がんで命を落としているという。
 しかし、乳がんは検診で早期発見できれば、治療が有効で生存率が非常に高いがんでもある。乳がんとその治療法、また検診の必要性について、日本対がん協会マネジャー・小西宏先生(東京大学大学院医学系研究科生物統計学分野客員研究員)に聞いた。


日本対がん協会マネジャー・小西宏先生
がん検診の現状

 日本対がん協会は、東京都を除く46道府県に支部があり、うち42支部でがん検診を行っています。年間の受診者数は延べ1100万人前後になり、1万3000人から1万5000人ぐらいの人にがんが見つかっています。そのほとんどが、国の勧める5つのがん検診(胃、肺、大腸、乳、子宮頸)です。国と歩調を合わせ、国が進めるがん検診を、民間の立場で普及を図っている、ということになります。乳がんでいうと毎年約130万人が検診を受け、がんが見つかるのは大体2500人から3000人ぐらい。そのうち6~7割が早期がんです。


乳がんの進行度と早期がん

 大まかに分けると、早期といわれる1期と2~4期まであり、3、4期は進行期と言われています。1期で発見された場合の治療成績は、がん専門病院では、ほぼ100%に近いと思います。5年後にどのくらい生きているかという割合、5年相対生存率では95%以上となります。ですから、早期で発見するという事は非常に重要なんです。ちなみに1期は、2㎝までのがんが1個で、リンパ節に転移がない状況です。セルフチェックでは、1㎝未満でも分かる場合もありますが、分からない場合もありますので、セルフチェックだけではなく、検診を定期的にきちんと受けていただきたいと思います。


遺伝性による乳がん

 乳がんは、その性質によって治療のしやすいものと、しにくいものがあります。基本的にがんは遺伝子の病気なんですね。遺伝子に異常が起きて、それによって正常なたんぱく質が作れなくなるなどしてがん化していく。どこの遺伝子がどう異常になるのかは、分からないのですが、その時のタイプによって、悪性度が違ってくるんです。アンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝性の乳がん・卵巣がんのリスクを考慮し、乳房予防切除、卵巣予防摘出手術を行ったことが話題となりました。遺伝性の乳がんにかかわる遺伝子は大きく知られているもので2種類あり、その2つの遺伝子のいずれか、ないしは両方が異常になった乳がんは治療がちょっと難しく、予後も悪い。つまり、両親の遺伝子による乳がんは予後が非常に悪いのです。予後のいいものか悪いものかは検査で分かります。


乳がんと女性ホルモンの関係

 分かりやすく言うと、乳がんは女性ホルモンを食べて大きくなるんです。乳がんは女性ホルモンが大好きなんですね。仮に閉経しても、わずかですが女性ホルモンは出ているので、女性でいる限り乳がんになる可能性はあります。しかし、乳がんの中でも女性ホルモンを取り込むタイプと、そうじゃないタイプがあり、取り込むタイプの乳がんは、その取り込み口をブロックしてあげると、大きくならなかったり、逆に小さくなったりするものもあります。いわば、がんの「栄養」を遮断してしまうのです。ですから手術後、ホルモン剤を長く服用する事でがんをおとなしくさせられる人もいます。最近は、よく効く薬が開発されていますし、その人のタイプに合った薬の使い方で、かなりコントロールができるようになってきているというのが現状です。がんの中でも乳がんの治療はここ15年ぐらいで一番進んだんじゃないでしょうか。


乳がんの罹患年齢

 がんに罹患する年齢は、30代後半から増えてきて、40代、50代にぐっと増えます。もちろん若いからといって癌にならないわけではなく、10代でも20代でもなる人はいます。ちなみに、若いと進行が早いと言われるのは、若い人の場合は比較的遺伝的な要素があることが多いんですね。見落としがちですが、子どもは両親から1/2ずつ遺伝情報をもらっているので、父親の家系、例えばお父さんの親や姉、妹にも乳がんや卵巣がんの人がいなかったか、知っておくことが大事です。乳がんで遺伝というと、母親からの遺伝のように感じるかも知れませんが、それは違いますので、父親のほうの家系も調べてみて下さい。



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