子どもの病気やけが、実は…「代理ミュンヒハウゼン症候群」とは?
「代理ミュンヒハウゼン症候群」の症状は?
症状としては、自らあるいは代理者の体を刃物で傷つけたり、打撲を負わせたり、故意に食事を摂取しないさせないなどといったいわゆる自傷行為によって傷や衰弱を創作します。その上で、本人は診察室で体調不良について深刻かつ劇的に訴えるのです。症状の説明もインターネットなどで勉強していて、原因や治療法など説得力を持って説明します。
エスカレートすると、本人ないし代理者が死に至ることもあります。欧米では患者が病気を作り出すために、代理者を痛めつけるなどの行為によって、1割程度の子どもが死亡しているとの報告もあります。先ほども言った通り、背景に境界性パーソナリティ障害が関係していることも多く、その場合は周囲への依存心が強く、思いが通らないと激しく反応します。誤解されがちなのですが、パーソナリティというのは性格ではなく、ある環境下におけるその人の行動パターンのことです。
「代理ミュンヒハウゼン症候群」の治療は?
境界性パーソナリティ障害の方には、本人の要求や要望に対して、応えられることと応えられないことがあります。つまりリミットがあることをはっきり伝え、リミットを超えては対応できない、スペシャルな対応はできないことを納得してもらいます。また、気を引くためにさまざまな問題を起こすことがありますが、感情的にならず毅然とした態度で臨まなければなりません。そして、我慢できたこと、行動化せず言葉で自分の感情が表現できた時は、しっかりと評価してあげることが大切です。こういった共同作業を根気強く継続していくことで、偏った人間観を修復していくことができます。
いずれにせよ、子どもの病気やけがを作り出す「代理ミュンヒハウゼン症候群」の治療については、専門医療機関の関与が必要です。不幸な事件や事故を生まないためにも、周囲で気づいた際には、躊躇せず早めに対応することが大切です。
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