新型コロナ感染や後遺症に有効なアミノ酸「5-ALA」とは。論文発表の長崎大・北教授に聞く

今後の見通し

―現在、新型コロナウイルス感染症患者を対象とした「特定臨床研究」が進められているとのことですが、今後の見通しはいかがでしょうか。

 はい。試験管での実験が昨年5月、実際にヒトを対象に特定臨床研究が始まったのは、今年2月のことです。通常、試験管の中で起こったことは、動物実験で安全性を見極めてから、ヒトへと移行します。5-ALAの良いところは、もともとヒトが持っているアミノ酸であり、10年以上に渡り安全性が確認されているというところで、スムーズに進行しました。緊急性が求められる中で、5-ALAの優位性を活かした形になったと思います。

 現在、行われている特定臨床研究は、長崎、横浜、神戸の6つの病院で、軽症や中等症の患者さんにご協力いただきながら行われています。軽症や中等症の患者さんに期待できるメリットは、重症化しないということでしょうか。スパイクタンパク質やG4構造への結合を阻害して、ウイルスがこれ以上増殖するのを抑えることが期待されます。今後は、どれくらい摂取すれば改善が見られるのかなど、実現性の高い研究が進んでいくことが期待されます。医療機関の皆様にご協力いただきながら、7月には何らかの研究結果を示せればと思っています。

<北潔教授プロフィール>
北潔
昭和49年東京大学薬学部卒業後、同薬学系研究科博士課程を修了。東京大学理学部助手、順天堂大学医学部助手、講師を経て、平成3年より東京大学医科学研究所助教授。平成10年より東京大学大学院医学系研究科・教授。平成15~18年、日本寄生虫学会理事長、平成21〜23年、日本生化学会会長。平成24〜27年、東京大学大学院医学系研究科副研究科長。平成27年〜、長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科長(平成27年は東京大学と長崎大学のクロスアポイントメント)

<参考> 『5-アミノレブリン酸(5-ALA)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)原因ウイルスの感染抑制が判明 〜今後の治療薬候補として期待〜』(長崎大学 2021年2月9日)https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science225.html 『熱帯医学・グローバルヘルス研究科の北潔教授が、Asian Scientist Magazineの2021年版「アジアの科学者100人」に選出されました』(長崎大学 2021年4月28日)https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/news/news3316.html
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