「手洗い」の重要性を発見 知られざる“消毒の父”ゼンメルワイスとは?

 新型コロナウイルスの感染拡大が長期化している。いまだに特効薬やワクチンがない中で、感染予防にもっとも有効なのが「手洗い」「手指消毒」だろう。現代でこそ当たり前の「手洗い」だが、その概念がなかった19世紀に「手洗い」の重要性を説いたのがハンガリー人の医師、ゼンメルワイス・イグナーツ(1818〜65)である。公益社団法人東京都医師会の角田徹副会長に解説してもらった。

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19世紀に「手洗い」の重要性を説いたゼンメルワイスとは?(画像はイメージです)
 ゼンメルワイス(センメルヴェイス)・イグナーツはハンガリー出身の医師です。当時は病原体という概念がなく、人間の身体は「血液」「粘液」「黄胆汁」「黒胆汁」の4種類の基本体液から成り立ち、このバランスが崩れることで病気を発症すると信じられていました。細菌やウイルスなどの病原微生物が、感染症を引き起こす原因とは認められていなかったのです。そんな時代に科学的な思考および検証で「手洗い」の重要性を見出したのがゼンメルワイスでした。

 ゼンメルワイスがオーストリアのウィーン総合病院で産科医をしていた当時、1〜3割の妊産婦はお産の後に産褥熱(さんじょくねつ、分娩によって生じた傷に細菌が感染して産後24時間から10日の間に38℃以上の熱が2日以上続く状態)で亡くなっていました。その頃、感染症はミアズマと呼ばれる瘴気が原因で起こるとされ、予防することは不可能な病気だと考えられていたといいます。ゼンメルワイスは同院での産褥熱による死亡率が、医師や医学生が分娩を行う第一クリニックでは約13%、助産婦やその見習いが分娩を行う第二クリニックでは約2%であることに気がつきました。そして、第一クリニックの医師や医学生たちが、死体の病理解剖を行った後に産科で検診していたことを突き止めたのです。
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