靴にまつわるマイストーリー テリー伊藤 

 感度が高く、おしゃれな着こなしで人気のテリー伊藤。数あるファッションアイテムの中でも、靴には特にこだわりがあるという。
愛用の靴の話から、仕事とプライベートでの使い分けなど、テリー流靴の履きこなし術。
撮影・辰根東醐

靴って魔法なんだよね。



「世の中が多少豊かになってきた時期だったっていうのも大きいですね」と、ファッションに興味を持ち始めたころのことを語るテリー伊藤。

「だって僕らよりちょっと前の世代っていうのは、古い映画なんかを見ても、大学生がみんな学生服を着ているような時代でしたもん。夏場の野球場でも、男性は白いシャツを着ていた。そのちょっと後ぐらいに、アメリカから新しい音楽が入ってきたり、イギリスからビートルズが来日したりして、一気にファッションも変わってきた。ある意味、一番いい時期にファッションに出会えたんじゃないかな。小さいころから洋服が好きだったというのもあり、そういう流行を敏感に感じながら多感な時期を過ごしていました」

 ファッションに強いこだわりを持つテリーは、小物使いにも定評がある。

「帽子、メガネ、時計、靴。そういう小物を服装に合わせて変えるのが楽しい。一番の趣味ですね。基本的にテレビに出る時もほとんど自前で、スタイリングなんかも自分でやります。だから衣裳部屋はかなり広い。今日着ているスーツも3年ぶりに着ました。ファッションでこだわっている事はたくさんあるけど、体形を維持するということに関してはものすごい努力をしています。だって、10年前の服でも体形さえ変わらなきゃずっと着られるじゃない。だからそこは一番気を付けているかな。10年前の服を着られれば、無駄がないよね」

 洋服を引き立てる靴は、テリーが特にこだわりを見せる重要なアイテムのひとつ。プライベートでもよく訪れるという東京靴流通センターの本社ショールームを訪ねると、靴のプロフェッショナルがすかさずテリーの履いていたローファーに目をとめた。実はコイン・ローファー(ペニー・ローファー)の名前は、テリーのように、靴の甲の部分の切れ込みに1セント硬貨であるペニーを挟んだことに由来する。それを知っていても、実践している人はほとんど見たことがないと、テリーの靴に対する知識とセンスに驚いていた。

「靴は100足以上持っているけど、これは2回かかとを張り替えて長く履いている。とにかく履きやすいし、スーツにもジーンズにも合うから、重宝しています。アメリカのSebagoっていうブランドなんだけど、いつ買ったか忘れちゃった(笑)。とにかく、まめに手入れをしてずっと履いてます。このペニーですか? これは自分で入れました」

 ショールームで気になるサイドゴアブーツを発見、試し履きしてみる。

「テレビに出る時はブーツが多いんですよ。というのは、立っているより座っていることのほうが多いんだけど、ブーツじゃないと座った時に靴下が目立ち過ぎちゃうんです。それが嫌だから、テレビの時はブーツにしている。ファッションってTPOだから、プライベートでは靴下の柄が見えるように履いたり、船に乗るときはドライビングシューズを素足に履いたりとかしていますよ。時間や場所、シチュエーションだけじゃなく、どう見られるかっていうのも含めてトータルコーディネートだから。僕はスーツにもカジュアルにも合うからブーツをよく履くんだけど、例えばこれを女の子が履いてもかわいいじゃない。ミニスカートにこういうブーツにするかパンプスを履くかで、洋服以上にキャラクターをアピールできる。靴ってさ、魔法なんだよね。服は年齢や性別を選ぶけど、靴は年齢性別を問わずに履ける。それでいて、その人がどんな人なのか、表現できる。そして、一瞬にして、人を輝かせることができるから、靴は魔法だと僕は思うね」
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