【インタビュー】玉山鉄二と佐々木希、愛し合う夫婦が背負う究極の試練とは!?
Huluオリジナル 連続ドラマ「雨が降ると君は優しい」。センセーショナルなストーリーに、誰もが心揺さぶられるエモーションを織り込む稀代の脚本家・野島伸司が「セックス依存症」を題材に“本当に描きたいドラマ”を描いた!
性嗜好障害を抱える妻と彼女への愛と葛藤に悶える夫。彼らの愛はどんな結末を迎えるのか。玉山鉄二と佐々木希が、かつてない夫婦の純愛に挑む!
野島さんの脚本は例えるなら幅の広い道。どこを歩いてもゴールにたどり着く表現の幅がある(玉山鉄二)
一途に愛する妻が“セックス依存症”(=性嗜好障害)だと知り、計り知れない苦悩を背負う主人公・立木信夫を演じた玉山鉄二。夫を心から愛しながらも障害により不特定多数の男に抱かれる妻・彩を演じた佐々木希。これほどチャレンジングな役に2人はなぜ挑んだのか。
玉山鉄二(以下:玉山)「僕は、野島さんの作品に出演させていただくのは今回で2度目になるのですが、僕にお声がけいただいた時点で3話まで台本が上がってきていて、それをまず読ませていただきました。僕の最初の印象では、恋愛において日本の文化的な価値観を持った男性には、なかなか理解しづらい部分が多いのではないかと思いました。特に僕自身も家庭を持っていますし、余計に理解しがたい気持ちになったんだと思うんですが、信夫の人物像を含め見えない部分が多かったので、野島さんと食事しながら話を伺う機会を頂いたんです。僕はもう野島さんの言葉の一言一句を聞き漏らすまいとアンテナを張っていて、目の前の料理を結局一口も食べずに店を出てしまったんです。このドラマが成功したら、あのお店にもう一度連れて行ってくださいとお願いしましたけど(笑)。実際、クランクインして信夫を体感し、初めて見えてきたものがたくさんありました。自分の中で考えた意図やイメージではなく、僕自身が信夫でいることにいかに集中するか。現場で“彩”の顔を見て思ったこと感じたことを出していこうというマインドになってからはすごく楽というか、つかみながら演じている感覚を持てています」
佐々木希(以下:佐々木)「性嗜好障害を抱えている女性、ということを知ったうえで台本を2話目まで読ませていただいたのですが、とにかく続きが気になって仕方がなくなってしまったんです。彩は、そういう障害を抱えているけれどとてもピュアで、信夫だけを心から愛している女性なんです。“信ちゃんと別れるくらいなら死んじゃう”と言いそうなキャラクター。少し子供っぽいところもあって、愛おしいと思ったんです。彩のことが好きになっているなら、やりがいを感じるはず、と思い、演じさせていただきたいと言いました」
センセーショナルともいえる題材、役作りも難易度の高い挑戦的な役どころに、躊躇は無かったのだろうか。
玉山「僕は今回このような機会を頂いたことに本当に感謝しています。もともと僕は起業モノや社会性が強い作品のオファーを頂くことが多くて、このような純愛ものもやってみたかったですし、今回の作品はなかなか巡り合えないような役でしたから。僕自身、いかに作品の脚本や人物に興味を持てるか、その作品に参加したいと思うかという点で決めているので、今回の役はぜひやらせていただきたかったんです。もしかしたらこの先、こういう役が回ってくるのが何年先になるのか分からないし。おそらくこれを断って他の人が信夫を演じているのを見たら、すごく悔しい思いをするだろうな、と思いましたね」
佐々木「私も迷いというのは無かったです。脚本が本当に面白くて、純粋にキャラクターが愛おしくて、この役をやりたいと思いました。台本を読む前のほうが迷いはあったかもしれないですね。やはり言葉だけで見ると“依存症”ってどんな感じなのだろう…と」
玉山「イメージが湧かないよね」
演じることに迷いは無かった。脚本が本当に面白くて、純粋に彩がが愛おしかった(佐々木希)
いわゆるセックス依存症という言葉のインパクトの一方で、実際の障害について知る人は少ない。
佐々木「私もそういう言葉があるのを知っていたくらいで、そういう行為をやめられない人なのかなという程度のイメージしか無くて、内に抱えている葛藤や苦しみまではまったく意識していませんでした。今回、自分が彩を演じるにあたって、この障害についてきちんと知りたいと思いました」
衝撃的な設定を持つキャラクターだが、2人はその奥にある人物像をしっかりととらえていた。
玉山「3話目あたりから信夫の背景も明るみになっていくんですが、信夫は過去のとある経験から、物事を先送りにしたり、自分が我慢することで丸く収めようとするところがある人物です。実は僕もそういう部分に共感できるものがあるんですよね。自分を押し殺してしまいがちというか。たぶん僕も幼少期にそういう思いをしたのかもしれないですね。僕がわがままを言わなければ両親がけんかすることもなかったのに…とか。そういう思いは誰でもしたことがあると思うんですが、信夫の場合はそれをもっと強く感じた。でも今はそばに彩がいて、彩が自分に注いでくれる愛情が本当に心地よくて…」
彩の秘密に気づいても変わらぬ愛情を注ごうとする信夫。彼もまた心に傷を抱えているのか…。
玉山「現場では、佐々木さんのふとした表情ですごく心がほっこりしたりリラックスできたりと、佐々木さんに引き出されている部分がたくさんあるんです。たぶんそれは僕が信夫であることを大事にしているがゆえに出てきている表現でもあると思うんですが。なので現場では、このシーンをどうしたい、どう演じたいということではなく、きちんと彩の表情を見て自分の中から出てきたものを大切にしています。僕自身も前日に台本を読んで、現場でどんな信夫が出てくるんだろうと楽しみにしながらやっている感じがあります」
佐々木「本当に、現場でどんな感情が出てくるのか分からないんですよね。特にカウンセリングを受けているシーンでは、衝動に駆られているときの彩は挙動不審というか、一つの感情がずっと続かなくて、1シーンの中でも急に笑ったり泣いたり怒ったり、感情の揺れ動き方がとても大きいんです。そういうシーンは演じていて自分でもよく分からない感情になるんです。勝手に涙が出てきたり…。事前にこう演じようとか考えていてもそうはいかない(笑)。玉山さんがおっしゃったように、現場で出てくる感情に任せるしかなくて。なのでカウンセリングのシーンは演じていても本当に辛いので余計に“信ちゃん”と一緒のシーンはすごく癒されます(笑)」
野島脚本の奥深さも関係しているようだ。
玉山「野島さんの脚本は、表現の幅を道に例えるなら、ものすごく広い道。右側に寄って演じても左側に寄ってもゴールにたどり着くことができるんです。読む人によっては、まったく違う感じ方ができるから、ロジックを説明しても伝わりづらい。現場で演出の方が伝えてくれることも、すぐにはピンと来ず、いろいろ考えさせられることも多々あるんです。でもそれが大事なのかな、と。僕自身、流れに身を任せて道のど真ん中を楽々と歩むのは好きではないし、きちんと自分の中から出てくるものを大切にしながらリスクを恐れず演じたい。むしろセオリー通りに行かないことを大事にしたいなと思っています。その表現の幅が野島さんの脚本は本当に広いと感じます。そういう脚本だからか、演者だけでなくスタッフ、ディレクター、プロデューサーまで全員がきちんと、もの作りをしようという姿勢が見える。カメラマンや照明さんが“僕はこう解釈したのでこう動いてみました”と、自分で考えてチャレンジしているんです。これほどの現場には、そうそう巡り合えるものではないなと感じています。そういうものは相乗効果で、やはり自分もどこかでかき立てられるんですよね」
佐々木「私もすごくそう思います! 本当にプロフェッショナルな現場だなと思いますね。いつも現場で玉山さんが“ここはどう見えていますか”とか確認すると、スタッフさんもみんなしっかり答えてくれる」
玉山「うやむやにする人がいないよね」
佐々木「良い作品にするためにこれだけみんなで頑張っているのだから、私もしっかり頑張らないと、と思います。それに、地上波ではなかなかできない表現にも挑戦しています。普通だと消極的になりがちな描写でも、行けるところまで行くし。ちゃんと攻めてるなと思います」
果たして信夫と彩の愛はどこへたどり着くのか。
玉山「彩がこの障害を抱えていなければ2人はごく普通の幸せな夫婦だったと思う。でも彼女の病によってこの夫婦は底なしの沼で、もがくことになる。ただ、これはあくまで僕の感覚ですけど、もしかしたらその障害も“たかが”と思える愛情の深さが信夫と彩にはあるのかもしれない。どんなに依存症に翻弄されても、2人の愛情は何も変わらないかもしれない。そこに野島さんのお感じになった“文学”があるのかな、と」
佐々木「信夫が彩の障害を知ったときの計り知れない衝撃と悲しさ、葛藤を思うと、すごく切なくなります。大人だったら隠し通すのも優しさじゃないかと思ってしまうけれど、彩は信夫に隠していることも辛いし嘘を付くのも嫌な性格。だけど、一方で少し子供っぽいところもあったり…何なんだろうって」
玉山「2話くらいではまだ序章に過ぎないですからね(笑)。本作は『人間・失格』や『聖者の行進』の野島節全開と言っていいと思います。ぜひ今の時代にいろんな方に見ていただきたい作品です」
佐々木「不思議と彩を応援したくなっちゃうんですよね。こう言うと変に思われそうだけど、それを変と決めつけさせない夫婦の純愛や絆が描かれているんです」
玉山「いや、本当に佐々木さん、よくこの役を引き受けたと思うもん」
佐々木「この夫婦の行く先がどうしても気になっちゃったんです(笑)」
衝撃、緊迫、そして体と心が引き裂かれる夫婦の愛の行く先は…? かつてない役に自らの体と心を投げ出した玉山、佐々木の演技にも心震えること必至。究極の純愛ストーリーの誕生だ。
(本紙・秋吉布由子)
脚本:野島伸司 演出:大塚恭司、岩﨑マリエ 出演:玉山鉄二、佐々木希他/9月16日(土)Huluにて配信スタート http://amefuru.com/http://amefuru.com/