ハリウッド実写映画化でMANGAファンを増殖させる! 『Death Note/デスノート』プロデューサー マシ・オカ
日本の大ヒットコミックにして実写化やアニメ化なども人気を博した、原作・大場つぐみと作画・小畑健による漫画「デスノート」をハリウッドが実写化! Netflixオリジナル映画『Death Note/デスノート』誕生のキーマン、プロデューサーのマシ・オカが語るハリウッド実写化の舞台裏とは?
「もちろん脚本も読んでいますしチョイ役で出演しているので現場の雰囲気も分かっていたんですが、完成した作品を見たら“すっげー血が飛んでる!”って。実は僕、ホラーが苦手なので画面を見られないシーンも多かったです(笑)。でも何より、原作をリスペクトしつつ、ハリウッド版を作ろうというチャレンジ精神を感じましたね」と本作プロデューサーの一人であるマシ・オカは語る。
「一人の高校生がデスノートを手にし、その力で犯罪者を抹殺していくという核となる物語はオリジナルを踏襲しているのですが、キャラクターは、よりハリウッド作品らしい人物像になっています。オリジナルでは、主人公の月はもともと天才的頭脳を持つ高校生であり、アンチヒーローとして確立している。でもそれだと、アメリカの一般的な人々の共感を得づらいんです。ハリウッド作品では“キャラクターの成長”を見せることがとても大事。もう少し現実的で、より人間味のあるキャラクターが、成長したり変化していく物語のほうが受け入れられやすいんですね。しかも今回はそれを2時間弱で描かなければならなかった。その時間内でアメリカの観客にも伝わるよう、より物語をシンプルに、キャラクター心理も分かりやすく表現する必要があった。それで、ナット演じるライトはより共感しやすい主人公になっているし、ラキース演じるLも喜怒哀楽の感情表現をきちんとする人間らしいタイプとして描かれています」
プロデューサーとしてマシ・オカには重要な任務が任されていた。
「製作中から大場つぐみ・小畑健作両先生とは何度もやりとりしていました。僕がメールで直接、両先生に、こういう脚本になっているけどどうでしょう、と要所要所でご意見を伺いながら進めていきました。他に日本語でメールを打てる人がいないのでね(笑)。両先生はハリウッド版として新たな『デスノート』を作るという姿勢を応援してくださっていて、オリジナルとの違いにも納得していただきながらアドバイスをくださったので本当に感謝しています。それだけじゃなく、こちらの脚本の“設定ミス”を見つけていただいたこともあったんです(笑)。小畑先生から“このデスノートのルールだと、この人がここで死んじゃうことになるよ”と指摘していただいたことがありまして。こっちで20人がその脚本に目を通していて誰も気づかなったのに(笑)」
現場の自由すぎる作品作りをフォローするのも大変だった様子。
「ハリウッドでは会議を重ねる中ですぐにストーリーが変わったり方向性がガラッと変わることもある。原作者が常に同席できればいいですけど現実的に難しいので、アメリカにいながら日本語で原作者とやりとりできる人間が必要だと思っています。本当に、唐突にとんでもない案が出てくることがありますからね。僕が参加する前には“リュークがいないバージョン”案もあったんです。死神のリュークがいなかったら『デスノート』じゃないでしょ。ハリウッドの人たちって平気でそういうこと言いだすんです(笑)。だから僕は一つひとつ“それじゃ違うものになっちゃうから”と説明していって。うるさいヤツだと思われていたと思います(笑)。両先生に完成作を見ていただいて、すごく良かったよと言っていただいたときは努力が報われた気がして、つい涙目になりましたね」
通常、ハリウッドで原作ものを実写化する場合、基本的に“映画は別物”という意識で作るという。
「制作に携わらないかぎり、原作者に相談しながら進めるということはまずありません。でも今回、僕がプロデューサーの一人として参加している以上、原作者を無視するようなことはしたくなかった。先生たちに納得してもらったうえでハリウッド版を作りたかったんです。そしてこの意識は本来マストだと思います。原作者を無視することはファンを無視することでもあると思う。僕は今後も日本の面白い作品をどんどん世界に紹介していきたいと思っているんですが、自分が携わる以上は原作者とのやりとりを重要視しながらハリウッドでの展開を目指したいと思っています」
同時に地域の人々に受け入れられる作品作りも重要だとマシ・オカ。
「確かにアメリカにも熱心な原作ファンはいるので、そういった人たちはオリジナルを正確に再現したハリウッド版を望んでいただろうと思います。でもよく考えれば、そのファンたちだってアメリカ人に伝わりやすいように英訳されたものを見ているわけで、直接オリジナルに触れているわけじゃないんですよね。結局は、伝わらないと意味がないわけです。今回であれば、日本のコミックを読んだことのない、そもそも『デスノート』を知らないアメリカの一般の人々にも楽しんでもらわないと、ハリウッド版を作った意味がないんです。ハリウッド版を見て『デスノート』をもっと見たいとなったら、すでにすばらしい日本の実写映画やアニメがあるのだから、コミックと合わせて見てもらえたらいいと思う。本作がNetflixで世界配信されることで、世界中に『デスノート』シリーズのファンが増えればいいなと思います」
現にキャストやスタッフたちも『デスノート』の世界観に夢中とか。
「ナットやラキースはもちろん、リューク役のウィレム・デフォーも原作コミックを読んだと言ってました(笑)。みんな『デスノート』仲間です!」(本紙・秋吉布由子)
監督:アダム・ウィンガード 出演:ナット・ウルフ、マーガレット・クォーリー、ラキース・スタンフィールド、シェー・ウィガム、ポール・ナカウチ、ウィレム・デフォー(声の出演)他/1時間46分/原作: 大場つぐみ、作画:小畑健作画「デスノート」(少年ジャンプ)/Netflixにて独占配信中
STORY:高校生のライト・ターナーはある日、奇妙な“ルール”が記されたノートを拾う。それは相手の顔を思い浮かべながらその名を書き込むと、たちまちその人物が死を迎えるという恐ろしい力を持つノートだった。ライトは生きる価値がないとみなした人物を抹殺していく…。