堀潤氏と有馬隼人氏が語り合う「2020年を控えた東京のビジョン」

撮影・蔦野裕

TOKYO MXの2大キャスターが初顔合わせ
 ジャーナリストの堀潤氏がメインキャスターを務めるTOKYO MXの人気番組「モーニングCROSS」の日曜版「激論!サンデーCROSS」の放送が10月8日から始まった。

 TOKYO MXは秋の改編でニュース番組と情報番組を大幅リニューアル。夕方の報道番組「TOKYO MX NEWS」は10月から時間帯を変更し新キャスターに元TBSアナウンサーで現在アメリカンフットボールのコーチも務める有馬隼人氏を起用した。

 この改編にあたりMXでは堀氏と有馬氏の特別対談を企画。「2020年オリンピックを控えた東京のビジョンを語る」をテーマに2人はさまざまな意見を交わした。

 堀氏が「日中ジャーナリスト交流会議」で中国の上海へ行った時の体験を踏まえ「都市やテクノロジーの発展に驚かされた。特に決済。日本だとまだクレジットカードが使えないお店も多い。でも上海や北京では全部スマホで決済ができる。大きなお店からちょっとした屋台なんかでも。東京に帰ってくると逆に不便。2020年に向けて、東京が思ったよりしょぼいなって海外から思われるんじゃないかとすごい危機感がある。規制とか古い慣習に縛られて、東京ががんじがらめになっているのは嫌だなと感じた。そういうものを解放したい」と切り出すと、有馬氏は「東京にいいイメージを持ってきてくださるお客さんは多いと思う。東京に来るとこんないいことがある、こんな魅力があるという情報をどんどん発信できるベースを作らなければいけないということがひとつ課題としてあると思う。そして海外からの人を迎えるにあたっては東京都のすべての人がホストになるので、ホストとしてきっちりお客さんに対して的確なガイドをできるような状態にしておかないといけないと思う。 “よく分からない人が来ちゃったな”という顔で迎えちゃうと来られたお客さんも嫌な思いもしますし、イメージが変わってしまう。そういったことがないように機運を作っていくというのがこれからの課題。それは政治の問題ではなく、都民みんながやるべきことなんだと思います」とともに2020年へ向けての危機感と改善点を上げた。

 そして堀氏が昨年のリオパラリンピック取材時の経験から「東京はパラリンピックの選手や障がいのある方が自由に行き交うのに便利な街かというと、そうでもない。そういうところを指摘していくのがニュースの腕の見せ所なんじゃないかと思ったりします」とも付け加えると、有馬氏は「東京全体が素晴らしい街だったということを世界にアピールするチャンスだが、ネガティブに働いてしまう機会にもなりうるので、この3年というのはすごく大事」と応えた。

 また報道の在り方について堀氏は「一方で2020年という大号令はパワフル。どんなテーマであれ、“2020年を”っていえば、それが印籠のようになって“仕方がない2020は”という空気がある。いわば大本営発表をそのまま垂れ流す、みたいな感じ。そんな空気からは逃れたい。ダメなものはダメと言うことはしっかり言いたいし、批判の声もちゃんと上げていきたい」と新番組の方向性を感じさせる発言を飛ばした。

 一方、有馬氏はアスリート目線から「オリンピックパラリンピックの会場はスタンドはなくてもいいんです。例えば全世界で必ずライブでその中継が見られるということを東京が責任を持ってやればいい。“全世界のみなさん、ライブで見てください。その代わり、ここはスタンドがないのでお客さんは入れませんよ”といったことがあっても構わないんです。例えばボート競技とかマラソンとか1カ所にいると一瞬しか見られない競技というのは、“会場には来ないでくれ。その代わりカメラを何台も使って素晴らしいものをお見せするから、中継で見てくれ”と言えばいいんです。そうなると世界中の人たちが同じ時間に同じものを見られるようになる。そういう試みで“観客を入れない試合を東京が初めてやったぞ”となれば、それがレガシーになる」と意外な提言をした。

 その後も、「多様性について」「中立とは」といった報道にかかわるテーマで対談は続く。最後に堀氏が2人に「何を言ってもいい自由な局です。何を言ってもいいけどすべて自己責任ですから(笑)」とアドバイスを送った。

 タブーなき報道姿勢が人気となっているTOKYO MX。今後もその姿勢に磨きがかかっていきそうだ。

番組開始に合わせたように解散総選挙!!
 番組開始早々に解散総選挙という大きなニュースを扱うことになる。

 堀氏は「都知事選の時もそうだったんですけど、主要政党とか主要候補の声はメディアでピックアップされるものの、泡沫候補というレッテルを張られるとその人の声は伝わらない。でも僕たちには潤沢な議論の時間があるので、いろいろな候補者サイドの声も伝えていきたい。NHKでは選挙中に選挙の話はなかなかできなかった。それは不公平があってはいけないという公共放送の宿命なんですが、逆に、選挙期間中なんだから政治の話をしよう、個別の候補者の話をしよう、ということができたらいいなと思っています」と話した。

 また有馬氏は「他のニュースと全く同じ重さを持っていると思いますので、特別視は全くしていない。ただ地元の小学生の男の子が“なんで全員解散するの? 仕事をしている人は残して、仕事をしていない人を辞めさせる選挙をしたい”と言っていたんです。まさにそうだと思う。でも制度は変えられないから、それに近いような情報は届けたい。なぜこの人は何回も当選しているのか、なぜこの人は1度落ちたのにまた帰ってきているのか、といったこと。日本人はすごく数字が好きだから何年ぶり何回目というように数字で処理をしてしまうことは多いんですが、その背景に何があったのかということは細かく伝えなければいけないと思っています。そこが伝えられていないから、自分が持っている1票の重みを実感できない方が多いままなんだと思うんです」と話した。

「激論!サンデーCROSS」(日曜11時59分〜13時25分放送)
【MC】堀潤、宮瀬茉祐子
「TOKYO MX NEWS」(月〜金17時59分〜18時30分放送)
【キャスター】有馬隼人、田中麻耶、結城香織