日々真剣に向き合っていてこその気づき「受付の仕事が好きだった」

 受付は企業においては真っ先にお客さんを迎える場所。形はさまざまあろうが、人がいて、訪問理由を伝えると内線電話で訪問先の部署に取り次いでくれて…というのがだいたいの流れ。しかしここにメスを入れたのがディライテッド株式会社代表取締役CEOの橋本真里子さん。橋本さんはかつて受付として11年働いた経験をもとに全く新しい受付システム「RECEPTIONIST」を開発した。

 まずこの「RECEPTIONIST」というのはどういったシステムなのでしょうか?

「基本的に受付って内線で取次をしているところがほとんどなんですけど、弊社のサービスは内線電話を一切使わずに、Slack、チャットワーク、あとフェイスブックのWorkplaceといったチャットツールを使って、お客様が担当者を直接呼び出すということを実現するプロダクトになっています」
起業動機を教えてください。

「私は企業受付を11年経験してきました。11年働く中で、受付ってすごくアナログで、世の中はこんなにIT化が進んでいるのに、いまだに名刺2枚をいただいて1枚をホルダーに入れてとか、手書きで受付票を書いたりとかずっと変わらないな、と思っていました。お客様側にも取り次ぐ私たちにも、それを管理する企業側にもすごくストレスがあることもずっと感じていたので、それをITの力を使ってもっと効率化していきたいという思いを持ったのが起業の動機です」

 起業で困ったこと苦労したことは?

「資金ですね。そもそも派遣で受付の仕事をしていたので、手元にそんなにお金があったわけではないんです。なので割と早くエンジェル投資家の方に投資をしていただいたり、出資の相談はしていました。もう一つは、プロダクトを作ってそれありきのビジネスをやろうと思っているのに、それは自分で作れるものではないという課題があったので、エンジニアさんの採用といった人材集めが最初は大変でした」

 起業準備で一番印象に残っていること。苦労したことは?

「起業を考えているときもしてからも、すごく日々の密度が濃いんです。あまりにいろいろなことがありすぎて、何が一番かと聞かれると…なんでしょう…。時間が経つスピードが変わりました。早いです。そして足りないですね」

 起業人生を振り返って。

「今までの1年8カ月を振り返ってみて思うことは、私は起業してすごく良かった思っています。今まで働いてきたところは大手の企業が多かったのですが、大手って自分がしたことに対して、直接的な喜びをもらうことってあまりない気がするんです。でも今は小規模でやっているので、直接お客様から感謝の言葉をいただいたり、実際に会社を訪問した時に弊社のサービスを使っているところを見たり、友人から“この前、あなたの会社のサービスを使っていた会社があったよ”という話を聞いたりするとすごくうれしいんです。あと、一緒に働いている社員のみんながすごく楽しそうに働いてくれているとか、そういう小さい喜びを日々感じられるのはすごくいいことだと思います」

 今後の目標は?

「日本でまだ受付システムとしてスタンダードといわれているものがない状態で起業しているので、まずは日本で受付システムのスタンダードといえば、 “RECEPTIONIST”だよねっていわれるところにまで持っていくこと。そして世界に共通して使えるサービスなので、海外にも広げていきたいというのが今後の展望ですね」

 今後、起業を考えている人にアドバイスをいただければ。

「私が実際に作っているプロダクトは受付の現場にいながら日々感じていたこと、すごく身近にあったことを課題ととらえてプロダクトにしてお届けしているので、起業を何か特別なことと思わず、日常をひとつアレンジして過ごしてみると、ヒントは転がっているものなんじゃないかって思います」

 日々仕事をしていて、課題や問題点に気づくか気づかないか。橋本さんが気づいたのはなぜ?

「受付の仕事がすごく好きだったというのがあると思います。なので毎日向き合って仕事をしていましたし、受付の仕事から離れたくないから、“じゃあ今までの経験を生かせる、次のステップとか仕事ってなんだろう?”って考えたときに、こういうアイデアが生まれた。やはり自分がやっていた仕事が好きだったからというところはあるのかな、と思いますね」

橋本真里子(はしもと まりこ)
ディライテッド株式会社 代表取締役CEO。1981年11月生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。11年という企業受付の現場の経験を生かし、もっと幅広い受付の効率化を目指し、16年1月にディライテッドを設立。17年1月に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

平均的な1日のスケジュール
7時半  起床
7時45分 ランニング
9時45分 出勤
〜10時30分 メール確認
11時〜18時 アポ(1日平均6アポ)
19時半以降 面接や社員とMTG
20時 会食
23時 帰宅。ここから約1時間メール返信や事務作業
1時 就寝

起業家データ
【起業時の年齢】34歳
【起業時の資本金】100万円
【起業後の収入】1期目は変わらず。2期目は受付の時より少し上がりました。
【座右の銘】有言実行。やらない後悔より、やった後悔。昨日より今日、今日より明日。

Company Profile
ディライテッド株式会社 
2016年1月創業。
内線電話を一切使わないクラウド型受付システムRECEPTIONISTを2017年1月にリリース。
「受付から快適さを」をモットーにベンチャー・IT企業を中心に導入拡大中。
現在13名で稼働中。

起業をする人・考える人への応援メッセージ

 私には受付としてのキャリアしかありませんでした。それでも起業することができ、現在も続け、たくさんの企業さまにお使いいただけるプロダクトを作ることができました。
 起業とは何か特別なものを持った人だけができるというわけではないと思います。遅い・早いもないと思います。
 一昔前と比較すると起業という言葉が身近になっていると思います。
 そして、起業を支援する環境も整ってきていると思います。
 起業家も増えてきていると思います。そういった環境を大いに利用し、自分にしかできないビジネスを展開することを目指して頑張ってください。
 一人でできることは限られていますが、たくさんの力を借りることで大きな力になります。

橋本真里子

「派遣社員から始める起業」
橋本真里子セミナー(ディライテッド株式会社 代表取締役CEO)


【開催日時】12月13日(水)19時〜
【場所】Startup Hub Tokyo

 企業受付を11年経験し、派遣社員から起業したディライテッド株式会社の橋本真里子さんが登壇。受付としてのキャリアしか無かったという橋本さんが、派遣社員からの起業を実現できた理由とは? 現場での経験を生かし効率的な受付システムを発案した橋本さんから、日々の現場業務から起業アイデアを見つけるヒントを学ぶ!