寺戸伸近が延長の末、久保を破り2度目の防衛【11・5 Krush.82】

寺戸(右)のローが久保を襲う(撮影・荒熊流星)

寺戸が徹底的なローキックで久保を撃破
 立ち技格闘技「Krush.82」(11月5日、東京・後楽園ホール)のメーンで行われたKrush-55kgタイトルマッチで王者・寺戸伸近が延長ラウンドにもつれ込む熱戦の末、判定で久保賢司を破り、2度目の防衛を果たした。

 寺戸は1Rからローキックで久保の左足を徹底的に蹴りまくる。久保はローをもらいながらもパンチで反撃。2Rには寺戸のローで久保がバランスを崩す場面も見られるようになる。しかし3R序盤、寺戸のローに久保がカウンターでパンチを合わせ連打を打ち込むと寺戸はぐらり。久保の連打の前に一瞬、棒立ちとなった寺戸だったが、下がりながらもパンチを出し続ける。かさにかかってパンチの連打で追い打ちをかける久保。いつ倒れてもおかしくない状況だったが寺戸は手を出し続け、残り30秒はともに足を止めてパンチを打ち合った。

 3Rが終わり、判定は1人が30-29で久保を支持したが2人が残る2人は29-29でドロー。延長に突入する。

 延長ラウンドに入っても2人はこれまでの戦い方を貫き通す。寺戸はロー、久保はパンチで相手を倒しに行く。延長ラウンドでローキックで勝負に行くのはジャッジに与える印象からリスクは高かったが、寺戸は試合後「最初から打ち合ったら3Rと同じ展開になると思ったので、ローを起点にした」と振り返ったように、久保の左足は限界寸前までダメージが蓄積。寺戸はボディーへのヒザ、パンチも繰り出し久保を追い込み、延長ラウンドを制し、勝利を収めた。

 寺戸は試合後のマイクで「防衛することが応援してくれた人たちへの恩返しだと思って頑張った。先月、娘が生まれました。娘にベルトを見せてやりたいと思っていたんですけど、今ようやく胸を張って、娘に“父ちゃん、勝ったぞ”と言いたいです。今日勝ったことで俺の格闘家としての人生は首の皮一枚つながったと思います。これからも一歩一歩やっていくのでよろしくお願いします」と話した。

勝負が決した後、久保をねぎらう寺戸(撮影・荒熊流星)

試合後、久保は「今回が最終章のつもりだった」と引退を示唆
 2人はこれまで2度対戦。一度目は2010年に寺戸がKO勝ち、二度目は今年4月、久保がKO勝ち。今回の戦いに向け、久保が激しい言葉で寺戸を挑発するなど、リング外でも大きな注目を集めた対戦だった。

 試合後の会見で寺戸は久保に対し「1選手として頑張っていると思う。僕は彼に憎しみや恨みはないし、彼はああ言っていたが、あれは俺に対するひがみだろうと思っていた。陰と陽で言うなら、俺が陽であいつが陰だった。それだけ」と話した。また今後については「今回防衛できたので、次はもう一本、K-1のベルト。条件が合えば。K-1でタイトルマッチやらせてもらえるなら、それなりの条件もあるし、俺は条件が合わなければやらないので、条件次第。条件が合えばやります」と話した。

 一方、久保は「試合が終わった今は、いろいろありましたけど、寺戸伸近あっぱれでした。本当にありがとうございましたと言いたいです。ローのダメージはありましたが、それより寺戸さんの精神力の強さ。それに負けずに根競べをしたので、それはそれで楽しかったです。足のダメージもあったが、それより根性のぶつかり合い。彼は大人のキャラクターでしたけど、心のどこかで『コノヤロー!』って気持ちはあったと思うんで、それが伝わってきて楽しかった。3Rが終わって、延長があると思ったし、ダウンを取れていなかったの、心のどこかで“延長になってくれ”という気持ちがあった。そこからの根競べをしたかったので。1-0で最後の判定はこっちに上がれというよりは延長をやりたいなという気持ちがあった。そこから絶対復活してくると思ったので、こっちも負けずにやってやろうと思っていた。それを一回りも二回りも上回る精神力で来たんで、あの人はすごいですよ」と試合を振り返った。
 
 試合前の舌戦については「Krushのメインイベントという意義を感じていての発言でもあったが、それ以上に本心でもあった。やはり僕の格闘技人生は8年前から寺戸伸近あってのものというところがあった。だから彼に対して対抗心も復讐心もあった。憎しみという形を持って、それがモチベーションにもなったんですが、リング上で彼に“ありがとうございます。これで終わりにしましょう”と伝えた。今は感謝の気持ちでいっぱいです。」と話したうえで、今後については「……4回目はないと思う。僕は(4月のK-1の)トーナメントで一発限りの復帰だと思っていて、今回のオファーも断るつもりだったんですが、相手が寺戸伸近ということで、今回が最終章のつもりだった。宮田プロデューサーにもお話したんですが、選手としてはこれで終わりです。今、自分はK-1ジム五反田と蒲田の代表をやらせてもらっていて、今日も山田泰士という選手がうちのジムから出場しました。まだまだ選手が育ってきていて、これからどんどん選手を送り込んでいこうと思っている。期待の選手たちばかりなので、彼らを応援していただけたらと思います」と話した。

圧倒的な強さを見せたゴンナパー(奥)(撮影・荒熊流星)

ゴンナパーは林を1RKO
 セミファイナルではゴンナパー・ウィラサクレックと林健太が対戦。1R2分7秒でゴンナパーがKO勝ちを収めた。

 ゴンナパーはK-1で山崎秀晃のヒザを破壊し、卜部功也のアゴを折るなど、林の所属するSAGAMI-ONO KRESTのトップファイターをことごとく撃破。今回はKrush初参戦だった。

 対する林は9月にBigbang王座を獲得するなど上り調子の23歳。先輩2人の敵討ちに立ち上がった格好だった。

 試合は序盤からゴンナパー得意の左ミドルが林を襲う。ロープに詰め、左ミドルからの左ストレートで林はぐらり。しかし林は果敢に前に出て、ゴンナパーをコーナーに詰め連打を放つが、ゴンナパーはパンチをかわすと右フック一閃。まともに食らった林はバッタリとダウン。立ち上がったものの、足元がふらつき、レフェリーが試合を止めた。

 ゴンナパーは「こんにちは、今日はありがとうございます」と日本語で挨拶した後に「ムエタイは負けません」とアピールした。

【写真左】瑠輝也(左)の左ハイが決まる【写真右】判定ながら圧倒的な勝利の瑠輝也(撮影・荒熊流星)

瑠輝也が3つのダウンを奪い“圧勝”
 第6試合では2月のK-1、7月のKrushと2連続で派手なKO勝ちを見せ、現在売り出し中の瑠輝也と他団体で戴冠歴のある恭士郎が対戦。瑠輝也が全ラウンドでダウンを奪い、KOこそならなかったものの圧倒的な判定勝ちを収めた。

 1R序盤、瑠輝也はいきなり右ローから2段蹴りの左ハイでダウンを奪う。ダメージの浅かった恭士郎はパンチで反撃も、瑠輝也はガードを固め、左ミドルや左ストレートで反撃する。2Rは恭士郎がプレッシャーをかけて前へ。コーナーへ詰めてパンチの連打で攻め込むが、瑠輝也は右ひざからの左ハイキックを鮮やかに決め2度目のダウンを奪う。

 瑠輝也は3Rにも2段蹴りの左ハイでスリップ気味ながらダウンを奪う。後がない恭士郎が前に出てくるところ、カウンターの左フックを決め、なおもパンチの連打、ヒザをボディーにめり込ませKOを狙うが、タフな恭士郎を倒すことはできず、試合は判定に。三者とも30-24で圧倒した。

王者の軍司(左)と金子(撮影・荒熊流星)

金子が-53kg次期挑戦権獲得も王者・軍司が辛辣コメント
 第5試合では「Krush-53kg次期挑戦者決定戦」で出貝泰介と金子晃大が対戦。金子が3-0の判定で勝利を収め、軍司泰斗への挑戦権を獲得した。

 1Rから出貝はプレッシャーをかけ前に出るが金子は出貝の攻撃を当てさせない。金子は左ミドルを主体に攻め込み、序盤から出貝の右脇は赤く腫れあがる。ラウンド終盤にパンチをまとめた出貝だが、手数が少ない印象。2R以降も金子は一気に踏み込んでの左フック。左ミドルで攻撃の糸口を探るが、キャリアで勝る出貝は金子の攻撃をさばくとバックブロー、バックスピンキックとトリッキーな動きで戦況の打開を図る。3Rも金子はパンチ、左ミドルを繰り出し攻め込む。出貝はミドルからパンチで反撃するが、全体的に手数で上回った金子が判定で29-28、30-28、30-28と勝利を収めた。

 試合後、金子が「今日はいい試合ができなかったが、無敗のままタイトルマッチをしっかり勝ってベルトを取りたい」とアピールすると、王者の軍司は「会見を見たが、ベルトに興味がないみたい。そんな人にベルトは渡したくない。今日の試合はも全然盛り上がってなかったので、やる時は盛り上げます」と痛烈なコメントを返した。