小池百合子のMOTTAINAI 第14回「場当たり的ではないリアルな政治を!!」

小池百合子
「脱」「卒」「反」だと、原発を巡る言葉遊びを続けているうちに、日本にあるすべての原子力発電が停止しました。42年ぶりの脱原発です。

 こどもの出産や入学、卒業など、将来の日程が明確であるように、13か月ごとの定期検査を考慮すれば、原発の全停止は十分予測されていたはずです。この1年間、いったい何をしていたのか。

 消費税増税に「政治生命」と全エネルギーを傾ける単線志向の野田総理ですが、「日本のエネルギー問題」こそ喫近の国家的課題。おまけに電力不足は国民の生命にも関わる問題です。複線志向で、目指す方向を決めながら、次に何をするかを考え、一つひとつ実行する…。政府の役割はこれに尽きるのではないですか。

 3・11以後、多くの国民、そしてほとんどの日本の政治家は、濃淡はあれど、原発に依存しない社会を望むようになりました。世界のすう勢が原発推進の流れだとしても、地震や津波の危険性の高い日本では慎重にならざるをえないことは当然というものでしょう。

 ただ、電力を所管する大臣が「5月6日から一瞬ゼロになる」と言い放ち、「集団自殺するようなことになる」と与党幹部が脅したりと、事態は複雑、かつ情緒的になるばかりです。場当たり的な政策や判断の繰り返しが、ますます国民を不安と混乱に陥れているわけです。

 技術的、科学的、客観的な判断を下す組織が必要であり、原子力規制庁の設立が急がれます。環境省の外局方式を主張する政府・与党案、いわゆる三条委員会方式で独立性の確保を重視する自民党案などの折り合いがつかず、いまだ宙ぶらりん状態です。早急に結論を出しましょう。そのためにもさっさと問責を受けた2大臣の入れ替えが必要です。

 また、地球温暖化対策として二酸化炭素の25%削減や、原子力発電計画の倍増を謳ってきた民主党です。改めるべきは、改め、早急に今後のエネルギー政策を明らかにする責任があります。

 その上で、どの原発は安全性が高く、どの原発に不安があるか、より明確に、率直に国民に説明をすべきです。この1年間に生じた「すべての原発が危険」との印象を抱かせている現状では、かつての「原発の安全神話」の裏返しになりかねません。オール・オア・ナッシングではリアルな政治とはいえないのです。

 原発問題だけでなく、あらゆる分野での日本政府のモタモタぶりを世界が見ています。現政権には、そのことを心していただきたいものです。

(自民党衆議院議員)