「ならぬことはならぬ」綾瀬はるか

大河ドラマ『八重の桜』で「ならぬことはならぬ」

柔らかな雰囲気はしばらく封印? 今年の綾瀬はるかは戦う女だ! 主演する大河ドラマ『八重の桜』で、幕末から昭和まで激動の時代を「ならぬことはならぬ」の精神で生き抜いた新島八重を演じる。「たくさんの人に愛されるドラマになれば」と、日々、全力投球中の綾瀬に注目だ。

「八重さんがいれば大丈夫と思える、そういう女性だったんだろうな」

 大河ドラマ『八重の桜』は、幕末から昭和まで激動の時代を生き抜いた新島八重と彼女を取り巻く人々、そして激動する時代を描く。綾瀬が演じるヒロイン・八重は、戊辰戦争時、スペンサー銃を持って会津のために戦い、後には日本初めての篤志看護婦として戦傷者の看護にあたった、進歩的で力強い女性だ。
「愛情たっぷりで活気のある現場で、毎日楽しく演じさせていただいています。今は子ども時代を撮影しているので生き生きと演じていますが、会津を出て京都に行ってからのことは、まだ先になりますし想像がつかないんですね。だから、先のことを考えるよりも今台本にあるものを形にして、一緒に時を重ねて成長していければいいなって思っています」
 綾瀬の演じた時代物といえば大ヒットしたドラマ『JIN』シリーズがある。あちらも、舞台は幕末。武士の娘でまっすぐな性格、芯の強さを持つ女を演じたが、今回の八重は腕っぷしも強い。
「今回初めてなぎなたに挑戦しました。稽古で出演者の人と対戦するんですけど、部活みたいな感じで、みんなで汗をだらだらかきながらやっています。うまくなってくるとスピード感も出てきたりして、やればやるほど楽しくなっています。みなさんすごくお上手なので、迫力のあるものになるんじゃないかなと思いますね」
 ずっしりと重い銃を打つことにもトライ。6日の初回放送では、砲弾が飛び交うなかを走り回り、それでもしっかり敵方に命中させるというシーンもあった。
「最初に銃を持ったとき、すごく重くて、少し持っているだけで手がぷるぷるしちゃって大丈夫かなと思いました。腕立て伏せをして鍛えて、だんだんいい感じになってきました。今も軽くは感じられないですけどね(笑)」
 クランクインから3カ月超。資料にあたったり、会津・京都とゆかりの地を訪れるといったリサーチを下敷きに、撮影シーンを重ね、八重への理解を深めてきた。「とても魅力的な女性です」と、綾瀬。
「八重さんは、子どものころ、男の子と俵の持ち比べをして競ったりしたそうなんです。私にもそういうところがあって、似ているというか、分かるなという部分がたくさんあります(笑)。……とても、すごくまっすぐで、男勝り、勝気な部分もあって、いつもポジティブ。意志も強くて、自分がこうって思ったことに対して納得するところまで突き詰めていく人だけれども、すごく愛情深くて朗らかで女性らしいところも持っているんですよ。八重さんがいると大丈夫と思える、そういう女性だったんだろうな」
 そんな八重を演じる上で重要なのが、会津魂を象徴するフレーズ「ならぬことはならぬ」。八重はこの言葉を胸に、己が信じる道を突き進んだ。
「私にとっての『ならぬこと』は、手を抜くこと。自分が思う限りでは、お芝居で手を抜いたことは今までないですけど、それでも後になってこうしておけば良かったということはあるんです。お仕事に限らず、日々の生活でもそう。辛いと思ってもそこをぐっとこらえて頑張ると自信になったりもするので、手を抜くようなことはしたくない。あとで、ああって思いたくないんです」
 その想いを胸に、この1年八重と向き合う。
「八重さんが生きていた時代はすごく大変な時代だったと思うんですけど、そんななかでも八重さんはいろんなことを全部乗り越えて前に進む力に変えていった。そんなポジティブな姿を通じて、安心だったり、そういうことって大切だなってことだとかが伝わったらいいなと思っています」
 この作品にはまた、復興や被災地へのエールの意味も含まれている。特に、八重が生まれ育った福島への想いだ。
「八重さんの苦難を乗り越えて少しずつ前に進んでいく姿を見ていただいて、元気になれるとか力になったとか思ってもらえるように、毎週楽しみだなと思ってもらえるようなドラマになっていったらいいなと思います。そのためにも、一日一日後悔しないように全力で演じていきたいですね」
 大河ドラマ『八重の桜』はNHK総合で毎週日曜午後8時、BSプレミアムで毎週日曜午後6時放送。再放送はNHK総合で毎週土曜午後1時から。
(本紙・酒井紫野)