江戸瓦版的落語案内
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。まずは、寄席や噺の中で使われるさまざまな用語を解説する「らくごのいろは編」。
【む】無筆(むひつ)
読み書きができない人。当時は、職人の多くが無筆だった。逆に読み書きができると、気取っていると嫌われることも。無筆な人が出てくる噺も多い。三人無筆、手紙無筆、代書屋など。
【う】後ろ幕(うしろまく)
真打昇進や襲名時に、高座の後ろに飾られる幕。ご贔屓や後援者から贈られる。
【ゐ】一枚看板(いちまいかんばん)
一人で客を呼べ、客席をいっぱいにできる芸人のこと。大看板、大真打。
【の】幟(のぼり)
客が贔屓の芸人や寄席に贈る名前の書いてある布のこと。寄席の前に立てる。
【お】大喜利
寄席や興行などで、最後に複数の落語家で行う演芸。小咄をしたり、お題を受けて謎かけをしたりすること。最後に行うので、大切(おおぎり)と言われていたが、「切」の字が縁起が悪いとされ、「喜利」の字をあてた。笑点でおなじみだが、あくまで形態のひとつ。本来は最後の意味なので、番組の中ごろに落語家が複数出てきて、謎かけなどをしても大喜利とは言わない。
【く】くすぐり
本筋ではなく、演者がダジャレや内輪ネタなどで笑いをとること。内容などにからめ時事ネタや時の人の実名などを出し、笑わせる手法。
【や】宿屋の仇討
神奈川宿の武蔵屋という旅籠に泊まった万事世話九郎という侍は隣の部屋の江戸っ子三人連れが騒ぐのにイライラ。その度に番頭の伊八を呼んで静かにさせろと文句をつける。そのうち三人連れの1人が、ある侍のご新造と親密な関係になったものの、それがバレると二人を切り殺し、あげくに300両を持って逃げたとうち明け話をした。それを聞いた侍は「隣の部屋に妻と弟の仇を見つけた。今踏み込んで血煙を上げて欲しくなかったら、明日まで逃がすな」と伊八に命令。震え上がった伊八は3人を縄で縛り、朝まで見張る羽目に。次の日、出発しようとする侍に伊八が「仇討の件は…」と聞くと、「あれは嘘だ」とあっさり。伊八が「寝ないで監視をしていたのに!」と怒ると「ああでも言わなきゃ、拙者のほうが夜っぴて寝てられない」