STAGE 舞台を見た後に思わず原作にも手が伸びそう

葛河思潮社『冒した者』

 作・演出家である長塚圭史のソロプロジェクトである葛河思潮社の第3回公演。前回公演の『浮標』に続き三好十郎の『冒した者』を上演する。

 この作品は1952年に描かれた三好最後の長編戯曲。1952年というのは朝鮮戦争の真っただ中で、米ソの冷戦構造のなか日本がアメリカの核の傘の下に身を寄せようとしていた時代。三好はこの作品の中で、唯一の被爆国でありながら核の傘の下に入ろうとする日本の矛盾を鋭く突いている。

 舞台は戦後の東京の郊外。かろうじて焼け残った大屋敷に集まって穏やかに暮らしていた9人。しかし一人の青年の訪問をきっかけに徐々に日常が崩壊。そしてそれぞれが抱える「戦後の混乱」が一挙に表面化していく。

 2013年の日本では、東日本大震災以降、原発のあり方にさまざまな議論が巻き起こっている。61年という時を経て、今度は長塚によって新たな問題提起がなされる。
 9月20日からは吉祥寺シアターでも上演される。

【日時】9月5日(木)〜10日(火)(開演は木金19時、土17時、日火14時、月14時/19時。開場は開演30分前。当日券は開演の1時間前)【会場】神奈川芸術劇場 大スタジオ(日本大通り駅)【料金】全席指定 6300円【問い合わせ】ゴーチ・ブラザーズ(TEL:03-6809-7125=平日10〜18時 [HP]http://kuzukawa-shichosha.jp/)【脚本】三好十郎【演出】長塚圭史【出演】田中哲司、松田龍平、松雪泰子、長塚圭史、江口のりこ、尾上寛之、桑原裕子、木下あかり、中村まこと、吉見一豊
※東京公演【日時】9月20日(金)〜10月7日(月)【会場】吉祥寺シアター(吉祥寺)

劇団、本谷有希子『ぬるい毒』

 久しぶりに劇団、本谷有希子が公演を…と思ったらなぜか「本谷有希子」のところに斜線が…。どうやら「劇団、本谷有希子(特別公演)」ということらしい。

 今回は本谷は原作で参加。「な〜んだ」と思う人もいるかもしれないが、代わりといってはなんだが、本作は映画『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が舞台初脚本・初演出という注目作だ。

『ぬるい毒』は2011年発表で、その年の三島由紀夫賞、芥川龍之介賞の候補となり、第33回野間文芸新人賞を受賞した、本谷にとっては出世作ともいえる作品。人生のタイムリミットをなぜか23歳に設定して生きる主人公・熊田由理が、ある日突然電話をかけてきた謎の男・向伊に魅了され、堕ちていく。復讐の機会をうかがう熊田の魂、その再生の物語。

 吉田は2007年には映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でも監督を務め、本谷ワールドを見事に映像化した。本谷自身が「舞台化不可能」とジャッジしていたこの作品を吉田がどう仕上げるのか? 注目が集まるところ。

【日時】9月13日(金)〜26日(木)(開演は水金19時、木土14時/19時、日祝14時。※千秋楽は14時開演のみ。火曜休演。開場は開演30分前。当日券は開演の1時間前)【会場】紀伊國屋ホール(新宿)【料金】全席指定 前売6500円/ヤングチケット(25歳以下)3500円【問い合わせ】ヴィレッヂ (TEL:03-5361-3027 [HP]http://www.motoyayukiko.com/)【原作】本谷有希子【脚本・演出】吉田大八【出演】夏菜、池松壮亮/板橋駿谷、札内幸太、新倉健太、高橋周平、石井舞、一之瀬麻衣、井端珠里、川村紗也