SPECIAL INTERVIEW 谷原章介
谷原章介が1年ぶりの舞台に挑む。シアタートラムのリニューアル後初公演『クリプトグラム』の相手役は初共演となる安田成美。子役を含む3人だけの舞台は、タイトルが示すようにさまざまなクリプトグラム(暗号)が散りばめられ、ストーリーがスリリングに展開していく。
昨年の舞台『こどもの一生』(作:中島らも、演出:G2)では、ファンの多い伝説の舞台を大成功に導き、舞台役者としての評価も高い谷原が、今回はアメリカ演劇界を代表するデイヴィッド・マメットの作品に挑戦する。
「それまでも年に1回ぐらいのペースで舞台はやっていたんですが、昨年の『こどもの一生』は、ちょっと時間があいてしまい久しぶりだったんです。それで舞台を改めてやってみて、これは年に1回はやりたいと思いました。司会やナレーション、そしてテレビドラマや映画といった映像でのお仕事って、集中して一発勝負のものですが、舞台はひとつの作品に時間をかけて作り上げていく。稽古もそうですし、本番もずっとそのシーン、その役、そのセリフに向き合って何回も自分の中で飽きるまで向き合える。飽きるというか、突き詰めたと思っても、その後にまだ再発見するものがあって、自分自身の芝居に対して栄養がもらえるんですね。それを去年感じて、改めて年に1回ぐらいは、舞台に立ちたいなと思いました」
今回の作品の登場人物は、子ども(ジョン)と安田成美演じる母親(ドニー)、そして谷原演じる男(デル)の3人。
「この物語は、言葉のやり取りで状況やストーリーが展開していくんですが、文章と文章の間に含まれている行間に、そこで語られないまま終わってしまったことがどういうことだったのか、そしてこれから何が起きるのか、もっと言えば、過去にどんなことがあって、舞台上に3人がいるのかなど、語りきれていない言葉の中にいろいろな事を想像させるようなお芝居です。セリフにはない、でもさっき言っていたことに、何か伏線があるような…。そんなことがいっぱい散りばめられていて、今までに自分が演じたことがないタイプの芝居なので、僕自身もどうなるかすごく気になります。それをお客さんに想像させるような部分も多いんですけど、答えは決してひとつじゃない。見た方が自分なりの結末を感じられるような舞台になるような気がします」
舞台は1959年のシカゴ。しかし年代や国を超えた普遍的なものがあると語る。
「日常生活でも結局確信のことをあまり言えないまま過ぎていくことのほうが多いですよね。なかなか確信に触れられないまま、時間が経てば経つほど言えなかったり、言いたかったことはあるけど、言うべきじゃないと思ったり、蓋をしちゃうこと。そういう男女や家族の営みとか友人関係って、とても普遍的なものだし、今の日本でも起こっていることだと思うんです。だから見てくださる方が自分の生活に無意識に投影して、芝居の中の誰かのセリフに、なんだか分からないけどザラっとしたものを感じることがあるかも知れない」
子どもの視線でストーリーは展開する。
「父親と母親、そして子どもの3人家族がいて、そこに親友の僕がいる。でもなぜかそこには父親がいないという状況からストーリーが始まります。そういう背景の中で子どものジョンがどう成長していくかというのがこの物語のテーマになっています。さらに言うと子どもの成長物語と一緒に、僕が演じるデルも変化する。だから子役の比重がとても大きいけど、僕らが子どもだから合わせてあげようなんて思ったら痛い目にあうんじゃないかな。今回子役は、ダブルキャストなので、どちらの子とやるかによってもまたお芝居は変わって来ると思いますし、今からそれぞれどんな舞台になるのかがすごく楽しみです」
映像以外でも、ナレーションなどの声の仕事、情報番組の司会など、忙しい谷原の気分転換は料理。
「料理は結構ストレス発散になりますね。舞台って、いつ完成したかわからない。公演初日で完成というわけではありませんし、千秋楽を迎えてもどうだったんだろうって迷うことも多い。でも料理はおいしいかどうかは別にして、完成してくれるので(笑)。そういう意味ではすっきりするんです。料理という完成するものを作ることで、舞台という完成形が見えないものを作る作業とバランスを取っているのかも知れませんね」
(本紙・水野陽子)
【日程】11月6日(水)〜24日(日)【会場】シアタートラム【出演】谷原章介、安田成美/坂口湧久、山田瑛瑠(Wキャスト)【料金】一般:5000円/プレビュー公演:4500円、劇場友の会割引:4500円、アーツカード割引:4700円/高校生以下:一般・プレビュー料金の半額(劇場チケットセンターのみ取扱・要年齢確認)、U24:一般・プレビュー料金の半額(前売のみ取扱・要事前登録・枚数限定)※全席指定・税込【発売】世田谷パブリックシアターチケットセンター TEL:03-5432-1515(10〜19時)/世田谷パブリックシアターオンラインチケット http://setagaya-pt.jp/(PC)、http://setagaya-pt.jp/m/(携帯)