『印象派 NEO vol.2−灰かぶりのシンデレラ−』6月12日開幕 夏木マリ&西島千博

ミュージシャン、アーティスト、俳優…夏木マリを語る時、さまざまな肩書きが用いられる。しかしこの人の前では肩書きという概念がどれほど意味のないものか思い知らされる。そんな夏木の『印象派 NEO vol.2−灰かぶりのシンデレラ−』が6月12日から上演が始まる。今回はシンデレラを題材にプリンシパル・ダンサーで振付家の西島千博をゲストに迎える。
夏木「シンデレラには圧倒的な身体言語と美しさが欲しかった」西島「ふだんとは違う自分が見せられるので、ラッキーなんです」

『印象派』は夏木自身のクリエーションによる作品で、1993年にvol.1が上演された。



夏木(以下、夏)「かつてフランスで、モネやマネといった画家たちが、当時の主流派であった宮廷画家たちに反抗して“何か新しいものをやりたい”とイーゼルを持って外に出て行ったんです。そんな彼らの精神にインスパイアされて『印象派』というタイトルになりました」

 以降、2006年のvol.8まで9作品が発表された。
夏「モネたちのサロンが8回続いたので、私も8回続けようと思ってスタートしたんですけど、その8回目はすぐにやってきてしまいましたね」

「あっという間に」というくらい、まだまだやりたいことはあった。ファンの側もまだまだ見たかった。そんな作品が『印象派 NEO』として2009年に復活。今回は5年ぶりの公演となる。

夏「そうなんです。あっという間の5年でした」
『——NEO』から舞台の風景が変わった。それまでの夏木の“一人舞台”から集団での創作に。
夏「マリナツキテロワール(MNT)というチームを持っています。NEOからは彼らと年2回と公演前に1カ月ワークショップをやりまして、その中で創造したり破壊したりしながら作品を作っています。何かについてずっとディスカッションするとか、そういうところからみんなでモチーフを切り取って作品に生かしていくんです。今回は西島さんをゲストとしてお迎えするんですが、ゲストをお呼びするという形が初めてのことなので、また新しい作品になっていくと思います」

西島は印象派にはどんな印象を?



西島(以下、西)「強烈ですよね。コンテンポラリーダンスの世界もいろいろ見てきていますけれども、夏木さんが作る舞台はインパクトの強い表現が印象に残っています。そしてそのインパクトが連続する。そこにすごく興味を持ちました。僕はクラッシックバレエから入って、いろいろなダンスの作品に関わってきているので、細かいディテールについては学んできたことが多いんですけれども、今回は大きい枠組みの中にいきなり入れられるような気がして、そのなかでどうやって泳がせてもらえるのかなって、すごく楽しみなんです」

 その作品性は夏木のバックボーンとか頭の中から出てくるものなのか…?

夏「私は印象派では“非日常の90分”を作りたいと思っているんです。簡単な言葉で言うと“なんだこりゃ”という舞台をやりたいのね。そういう意味で、私たちのボキャブラリーである身体言語をいかに整理して作品にするかということが、私の役目だと思うんです。だからふだんみんなでワークショップをやりながらボキャブラリーを増やしているんですね。前回は赤ずきん、今回はシンデレラというテキストはありますけど、あの童話をそのまま展開するわけではありません。どこの入り口から入るかということは稽古に入ってみなければ分からないので、いつもとても怖くもあり、楽しくもあるんです」

題材にシンデレラを選んだのは?



夏「みなさんが分かりやすいモチーフ、テーマ、コンセプトがあったほうがいいと考えました。印象派をvol.8までやって、いつも作品のことを説明するのが大変だったんです。それで私もちょっと大人になりました(笑)。それに世界中のフェスティバルなどに行くときに、赤ずきんやシンデレラだったら誰しもが分かるでしょ。シェイクスピアでもよかったんですが、私が童話が好きなので、童話から始めようと思いました」

初めて外部から西島を呼んだ意図は?



夏「今回やりたいのはシンデレラで、シンデレラを演じる人には圧倒的な身体言語と美しさが欲しかったんです。ずーっと探していたんですが、偶然ラジオでご一緒したときに“ここにいらした”と思って、お話しましたら、“イエス”って言ってくださったんで、とてもラッキーだったなって思っています」







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