江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 猿後家(さるごけ)

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 ある大店の後家さん、後ろから見るといい女なのだが、顔を見ると猿そっくり。外出するたびに猿に似ていると指を指されるので、ノイローゼになり、家に引きこもるようになってしまった。店では、周囲の者に決して「サル」という言葉は絶対に言わないようにきつく申し付けていた。ちょっと前も出入りの植木屋がうっかり「百日紅(さるすべり)」と言ってしまい出入り禁止になったばかり。太鼓持ち並みの口八丁手八丁で、おかみさんの機嫌をとるのがうまい源さんが顔を出した。この日も、おかみさんの顔を見るなり、親類の京美人と見間違えたふりをするなど大サービス。すっかり機嫌が良くなったおかみさんは、女中に酒や鰻を用意させ、ご馳走攻め。「ところで最近すっかりご無沙汰だったじゃないか。一体何をしてたんだい?」と尋ねると源さん、東京見物に来た親戚を案内していたと言う。「まず、皇居を見物して、日比谷、銀座…。そして上野から浅草の浅草寺へ。仲見世を抜けると、何やら人だかりで、それを掻き分けて見ると、なんと今時珍しい“猿回し”が…」。あっと思ったが、後の祭り。烈火のごとく怒ったおかみさんが永久追放を宣告。困った源さん番頭さんに泣きつくと以前出入り禁止になった仕立て屋の話をしてくれた。曰く子どもの踊りの話からうっかり“靭猿”と言ってしまったこの男。あくる日物乞いの格好で現れ、四国巡礼の旅に出るという。しかし、たまたま目にした錦絵がおかみさんにそっくりだったので、それをご本尊としたいと許可をもらいにきた。すっかり気をよくしたおかみさんが、“お前は知恵者だな”と褒めると、うっかり“ほんの猿知恵でして”と言ってしまい万事休す。そこでひらめいた源さん、おかみさんの所に再び現れた。カンカンに怒っているおかみさんに「なぜ怒られたのかわからない」ととぼけると「浅草で何を見たって!?」「えー、皿回しです」。そしてダメ押しで「おかみさんは小野小町にそっくりですね」。機嫌を直したおかみさんが「いやだよ、お前は。生涯出入りしていいからね。その代わり私の気に入らないことは言わないでおくれ」「ありがとうございます。ここをしくじったら、あたしゃ木から落ちた猿…」「なんだって!?」「いや、猫同然」。

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