江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 雛鍔(ひなつば)

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 ある大きな武家屋敷で仕事をしていた植木屋が一服していると、庭にお付きの者をぞろぞろと引き連れた若様が入ってきた。その若様、泉水のところにトコトコと歩いて行くと、そのほとりで一文銭を拾いお付きの三太夫に「これは何か?」と尋ねた。三太夫「いっこうに存じませんが、若様はこれを何だと思われますか」と逆に聞くと「丸くて、四角い穴が空いていて、文字が書いてあります。おそらくこれはお雛様の刀の鍔ではないでしょうか」と答えた。すると三太夫は「そうでございますか。不浄のものでございますから、お捨て遊ばしたほうが良いかと思います」。そう言われた若様は「そうか」と言って、銭を投げ出してどこかに行ってしまわれた。不思議に思った植木屋が三太夫に聞くと、今年お八歳になられる高貴な若様には、汚らわしい銭のことは教えないようにしているという。これを聞いた植木屋はすっかり感心。「うちのバカガキも若様と同じお八歳なのに、口を開けば“銭をくれ、お足をくれ”とギャーギャーさわぎやがる」。家に帰って女房にそんな愚痴を言っていると、その話をこっそり聞いていた子どもがやって来て、早速「遊びに行くから銭くれよ」と小遣いをせびりにきた。あまりのしつこさに根負けした女房が銭を渡すと、外にすっとんで行った。それと入れ替わりにやって来たのが近所のご隠居参さん。しばらくの間茶飲み話をしていると、さっき遊びに出て行った子どもが、一文銭を手にして帰ってきた。「おとっつぁん、こんなものを拾ったんだけど、何だろう。丸くて四角い穴が空いていて、文字が書いてる…。あたいはこれ、お雛様の刀の鍔だと思うな」と、さっきの若様のセリフを丸パクリ。その言葉に感動したご隠居「坊やはいくつになるんだい?」「あたいはお八歳になります」「お八歳はよかった。この子は銭を知らないのかい?」植木屋はとっさに「女房は元屋敷奉公をしておりまして、ためにならない銭は渡さないようにしていて…」としどろもどろの説明。ご隠居「そうかい、坊や、おじさんが銭を…と言っても銭を知らないのか。では、何か好きなものを買ってあげよう」「ありがとうございます。良かったな。おい、拾った銭をまだ持ってやがるな。そんな不浄なもの捨てちまえ」すると子どもが「いやだい!これで焼き芋を買うんだ」。

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