地方創生 ×TEAM2020 横須賀市から日本を元気に
地方創生を推進し、日本を元気にするために、各市町村が行っている取り組みを紹介する不定期連載。JAPAN MOVE UPの総合プロデューサー・一木広治がさまざまなキーマンに鋭く迫る集中企画。
一木「市長になられて6年目ということですが、横須賀だからこそ実現できた、また横須賀ならではの独自政策があればお聞かせ下さい」
吉田「今一番力を入れているのは、「“転出超過日本一”からの挑戦」なんです。一昨年のデータなのですが、転出者が転入者を上回る転出超過数が全国で一番大きい。これを分析すると、横須賀市から転出する人が多いというよりも、横須賀市に転入する人が少ないことが分かりました。そこで掲げたのが、“横須賀は子どもが主役になれるまち”というスローガンです。横須賀を若い人にとって魅力的なまちにするには、子育てや教育環境、不動産環境を含む住宅政策などの充実が不可欠だと思っています。中でも子育てについては、英語コミュニケーション環境の充実に力を入れています。横須賀はご存じの通り、市内に外国人が多く住んでいます。その状況を活用して、気軽に英語に触れられる環境を作ることで、大学を卒業するころには、日常会話やビジネスシーンでの英会話に不自由しないようになることを目指しています。その1つとして、米海軍の基地内にある大学に、横須賀市民限定で、語学留学ができるプログラムをスタートさせました。また先日記者発表しましたが、横須賀の市立高校と米海軍基地の高校の交換留学生制度も始めます。英語教育に力を入れる子育て支援は、横須賀市独自の政策だと思います」
一木「地方創生を実現する上での東京都との連携についてどのようにお考えですか」
吉田「まず、2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、横須賀市にとっても、大変重要なイベントだと思います。高速道路でも電車でも首都圏から1時間以内で来ることができ、気候も温暖で食べ物もおいしい。そういう地理的な環境や利点を生かして、オリンピックのいい影響をうまく横須賀に波及させることができればと考えています。例えば、外国の選手のキャンプ村や、日本の強化選手のトレーニング施設など。現在、そのような集中した場所にあるトレーニング施設は、実は屋内競技のものだけなんですね。ですから、屋外競技用のトレーニング施設をぜひ横須賀に作っていただきたい。海があるので、水上のセーリングとかカヌーでもいいし、大きな土地があるので陸上でもいい。そういう立地に加え、先ほど言った気候や食事面も含め、施設を作るのに適した所だと思いますので、東京と連携して考えていければと思います」
一木「横須賀市の観光誘致政策について、特徴的なことがあれば教えてください」
吉田「英語コミュニケーション環境の充実というところにもつながるかも知れませんが、一昨年から 、横須賀市内でドルが使える “ドル旅”というプロジェクトをスタートさせました。ある旅行メディア社の調べで、タンスなどに眠っている外貨が日本全国では1兆3000億円もあるらしいんです。ですから、横須賀でドルが使えるとなれば、海外旅行に行った時のドルを手元にお持ちの方や観光客にもっと来ていただけるんじゃないかと。始めはレートの問題とかいろいろ抵抗がありましたが、お願いして回り、最初は2カ月だけのスタートで、去年は8カ月、来年度4月からは、1年中やることになりました。“ドル旅”から“ドル街”ですね。外国のお客さんにとっても便利だし、お店によってレートを決めていただくので、ドルで払ったほうがお得とか、海外旅行気分も味わえる(笑)。また、実はインバウンド政策でもあり、1万人を超える米海軍基地の人もドルが使えると市内にどんどん出てきてくれます。お店には英語表記のメニューもあるし、レートもちゃんと書いているので、安心ですから、それがクチコミで広がればという狙いもあります」
一木「今後、横須賀市をどのような都市にしていきたいかビジョンはありますか」
吉田「私は“選ばれるまち”というビジョンを掲げています。それは単に横須賀に住みたいという人を増やすということではなく、赤ちゃんからも生まれてきたいと選ばれるまち。成長する過程でもいじめがなく、将来は自然と英語が身についている。福祉も備わっていて、高齢者の方には最後まで横須賀に住みたいと選ばれ続ける。そういう大きなビジョンをぜひ実現していきたい。そのためには、横須賀は世界で一番イノベイティブなまちにならないといけない。イノベーションは破壊的価値創造だと思っています。それが横須賀だったら常にできるんだという、そんなまちにしていきたいですね」