2020年東京五輪の追加種目を目指し各団体が熾烈な戦い

 2020年東京オリンピック・パラリンピックまであと5年…なのかもう5年なのか。開幕まで2020日となった先月12日には東京都庁舎前の都民広場で初のカウントダウンイベント「みんなのスタート! 2020 Days to Tokyo 2020」が開催された。「まだ2000日もあるのか〜」と思うのは見る側。やる側は計画の一部変更もあり、そう悠長には構えてはいられない。そんななかでも追加種目に名乗りを上げている競技団体は今がまさに勝負時となっている。

 まず全体の動きとしては、2月4〜5日の日程で準備状況を確認する国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会などによる事務折衝である「第3回IOC−東京2020プロジェクトレビュー」が東京都庁で行われた。

 開催都市の追加種目提案権や分散開催を認める五輪改革案承認後、初めての会合となる。4日の冒頭の挨拶でIOCのコーツ調整委員長が「(改革は)五輪をさらに良いものにするために導入した。東京が現実のものにしてくれると思っている」と期待感を示した。組織委の森喜朗会長も「よりよい大会作りのために活発な意見交換ができれば」と応じた。そして昨年12月の五輪改革で承認された開催都市の提案による種目追加について「国民の関心の極めて高いテーマ。(選定)スケジュールなどの議論に入れることを期待している」とあいさつした。

 事務折衝では、追加種目の選定基準、建設コスト削減の観点から見直しが進められている会場計画のほか、2月中にIOCに提出する大会開催基本計画の内容などが協議された。

 会場計画見直しについて、コーツ委員長は「今年の第1四半期(までに)と考えている」と述べたが、組織委の武藤敏郎事務総長は会議後「期限がそこだということにはならないのではないか」との認識を示した。

 昨年12月に国際オリンピック委員会(IOC)で採択された中長期改革「五輪アジェンダ2020」で示された種目追加数は「1つまたは複数」と曖昧で、選定の基準も示されなかったこともあって、野球・ソフトボール、空手、スカッシュ、ウエークボード、ボウリングが相次いで立候補を表明。綱引き、ビリヤード、ダンススポーツなども関心を示すなど乱立模様となっている。

 一般的には国際的普及度、競技力や国内での人気度が選定の柱になるとみられ、競技力や人気度では2008年北京五輪まで実施されていた野球・ソフトボールが圧倒的に優勢。メダル候補であり、チケット収入も見込めるからだ。ただし、団体球技とあって約1万500人という五輪参加選手数の上限を大幅に上回りかねず、米大リーグの参加問題なども課題に挙がる。
 国際的普及度では、空手とスカッシュに分がある。空手は全世界で1億人ともいわれる愛好者がいるとされ、メダル獲得も有望。一方で、テコンドーなど既存競技との類似性も指摘される。スカッシュは参加選手数が64人というコンパクトさと低コストが武器だが、国内の知名度では大きく後れをとっている。1988年ソウル五輪で公開競技として実施されたボウリングは日本でも広く親しまれているが、「競技として認知されにくい」(全日本ボウリング協会)のが悩みとなっている。

 そんな中、9日には組織委が「東京2020種目追加検討会議」の第1回会合を東京都庁で開いた。

 会議は御手洗冨士夫経団連名誉会長を座長とする有識者7人で構成。初会合では、実施種目入りを希望する競技団体への聞き取り調査を行うことなどを確認した。

 メンバーからは「東京として盛り上がるかどうかも頭に置く必要がある」との意見が出たという。

 国際オリンピック委員会(IOC)は4月に選定の評価基準をまとめる予定で、組織委には9月中の提案を求めている。御手洗座長は会議後、「ホストシティの組織委が新しい種目を提案する権利をIOCが決定したことは、オリンピック史上、大変画期的なこと。東京2020の大会ビジョンとして掲げている、“2020年大会を、史上最もイノベーティブで、世界にポジティブな改革をもたらす大会とする”という視点を踏まえながら、日本の国民、世界の人々の期待に応えるような議論を続けていきたいと思う」と話した。

追加種目決定までの主な日程

2015年2月 
IOC理事会(リオデジャネイロ)で追加種目選定までの詳細な日程を決定
4月 
IOC理事会(ソチ)で追加種目の選定基準を決定
9月 
組織委がIOCに追加種目を提案
2016年8月 
IOC総会(リオデジャネイロ)で追加種目を正式決定