ふだんとはちょっと違った一面が見られる公演
『売るものがある性』財団、江本純子
「財団、江本純子」は毛皮族の江本純子が、祝祭的な趣向を排して、江本自身のパーソナルな問題を取り上げた新作を上演する場。
江本曰く「毛皮族で行っていることは“非日常”。いわば“ハレ”とするなら、財団、江本純子は“日常”。“ケ”の世界。財団、江本純子ではハレを封印し、全くハレてない、些細な日常“ケ”の描写を軸に、世の中の不条理について描いてきた」という。しかし今回は「日常の枯れた状態を喜劇的に描くだけでは、わざわざ劇を作る意味がないと思って。ケがあるから生まれるハレ、ハレを得るためのケを描きながら、人生を戦い抜くための揺るぎない“性(せい)”を提案する劇を作っている」とのこと。
今回の作品では「わかりあえないことが連続しているこの世の中で、どうしよう?」というテーマが掲げられている。劇の中では、“ケ”の象徴物として、無数の「おばさん」が登場する。一見、ひたすら枯れているように見える「おばさん」たちの「性」の問題のこと、変わりたいのに変わらない「性格」やその醜い生態のことを、笑いを中心とした独特の手法で描いていく。そして彼女たちの人生に時折訪れる見過ごしてしまいそうなほど細やかな“ハレ”の瞬間のことも。
最後に江本は「人生に革命は起こらないかもしれないが、私自身は常にもがいてあがいている。それも生きる上で必要な戦いかな、と思ってあきらめていたが、すごく身近にこの戦いに勝っている人がいた。その人の姿こそ、生きて究極の“ハレ”を得るための特別な“性”だな、と思っています」という言葉もくれた。頭の片隅にこの言葉を置いておくと、より理解が深まりそう。