3.11から4年。忘れちゃダメだよね 舞台 風煉ダンス『泥リア』

 風煉ダンスは1990年に旗揚げした劇団。もう今年で25年になるのだが、開店休業中の時期もあり、決して作品数は多くはない。しかし生バンドによる劇伴やアーティスティックな舞台セット、スケールの大きい野外劇といったインパクトの大きい作品で根強いファンを持つ。そしてその作品世界は常に時代に対する批評性にあふれ、見る者に“気づき”を与えてくれる。

 そんな彼らが2011年5月に発表した『泥リア』は、その3月に起きた東日本大震災に真正面に向き合った作品だった。

 リア王をモチーフとした同作は「娘たちに疎まれた痴呆症の老人が王と道化に分裂して魂の荒野をさまよう」といったお話。老人がさまようのは震災前後と過去と未来、死者と生者の狭間。ふらふらとさまよう中で、原発や震災を想起させるキャラクターに遭遇し、そこで起こるさまざま出来事に観客の心は大きく揺さぶられた。

 この作品が9月19日から井の頭恩賜公園 西園(ジブリ美術館奥の広場)で再演される。

 作・演出の林周一は「もともと再演してほしいという声が多かった。野外でという声も。でも僕たちは別にそんなに再演にはこだわっていなかった。ただ、主人公の老人が劇場の中ではなく、外をリアルにふらふら歩く姿を見てみたいという初動的な衝動に駆られた。いざやるとなったら3年でもなく5年でもなく、4年という時間がしっくりきた。やるなら今かなって。4年間にいろいろなことがあったけど、あれだけ衝撃を受けたはずなのに、自分たちの中でも記憶が薄れている。でもいまだに2万人近い人が仮設住宅にいるという状況は変わっていない。しかも原発はますますひどいことになり、住めない場所はそのままになっている。“これはなんだ?”“4年経って自分たちはどう考えているのか?”ということを考えた。だから再演という気持ちではない。むしろアンサーソング?という感じ」と話す。

 再演にあたっては「震災を忘却している人に“ちゃんと思い出してほしい”という意味もある。でも震災は過去ではなく現在進行形。過去の時間を見せるというより、現実に引き戻し、まだこれから続く時間に思いを馳せたい。自分もみんなも」という。

 公演の詳細は風煉ダンスHP(http://furen-dance.info/)で。