江戸瓦版的落語案内 金明竹(きんめいちく)

Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE【ネタあらすじ編】

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 骨董屋のおじさんの所で働いている与太郎が留守番していると上方から来たらしい男が入ってきて、いきなり口上を述べ始めた。

「わては、中橋の加賀屋佐吉方から参じました。先度、仲買の弥市の取り次ぎました道具七品のうち、祐乗、光乗、宗乗三作の三所物。ならびに、備前長船の則光、四分一ごしらえ、横谷宗岷小柄付きの脇差し、柄前は、旦那はんが古鉄刀木と言うとりましたが、ありゃ埋れ木やそうで、木ィが違うておりまっさかい、念のため、ちょっとお断り申します。次は、のんこの茶碗、黄檗山金明竹、遠州宗甫の銘がございます寸胴の花活け、古池や蛙飛び込む水の音と申します風羅坊正筆の掛け物で、沢庵、木庵、隠元禅師張り混ぜの小屏風、あの屏風はなあ、わての旦那の檀那寺が、兵庫におまして、その兵庫の坊主の好みまする屏風じゃによって、表具にやって兵庫の坊主の屏風いたします。と、かようお言づけを願いとう申します」と関西弁で立て板に水のごとく言い立てる。何を言っているのかまったく分からない与太郎は、そのあと2度同じことを言わせた後、おかみさんを呼んだが、2度聞いたおかみさんも何のことだかさっぱり分からず。何度も言わされた男は喋り疲れて帰ってしまった。さて、おじさんが帰ってきて来客がなかったかおかみさんに尋ねると「あの…えっと…確か半ば氏の加賀谷佐吉さんのお使いの方が…」。

「おお、仲買の弥一が来たのか。弥一が何と?」
「いえ、仲買の弥一さんが気がふれたとか…」
「何だって?!弥一の気が…。それでどうした?」

「…なんでも遊女が孝女で、掃除が好きで…それで千艘や万艘と言いながら遊んでいて…、終いに遊女をずん胴斬りにしちゃったって…。それから、インゲン豆や沢庵ばっかり食べて、いくら食べてものんこのシャーで…。それで…逃げようと思って、備前の国に親船で行こうとしたら、兵庫へ着いちゃって…。確か…そこにはお寺があって、坊さんもいたんです。そこに屏風を立てて、その陰中でお坊さんと寝たとか…」

「さっぱり分からねえ。どこか一か所でも、はっきり覚えているところはないのか?」「…あっ、思い出しました。確か、古池に飛び込んだとか」

「何だって! 弥一が古池に…。それを早く言いなさい。あいつに道具七品を買うように手金を打ってあるんだが、それを買ってっかな?」

「いいえ、買わず(蛙)でございます」

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