工藤阿須加 映画『夏美のホタル』で有村架純の恋人役を演じる
2012年にデビューし、翌年には大河ドラマに抜擢。さらに2014年、大ヒットドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」で大ブレイクした工藤阿須加。6月公開の映画『夏美のホタル』では有村架純と共演する。
「原作のモデルとなった実際にある商店をメインに撮影することが多かったので、演じる上ですごく気持ちが入りましたし、集中できました。映像を見ても分かるように、舞台はとても自然が豊かで美しいところ。ロケ当時は真夏ですごく暑くて大変でしたが、日陰に入ると涼しく、田舎ならではの良さを日々感じながら撮影に挑めました」とロケ地の風景を思い出しながら語る工藤。
工藤が演じるのは、主人公・夏美(有村架純)の恋人・慎吾。カメラマンを目指している2人だが、がむしゃらに夢に向かう夏美に比べ、心の奥底ではプロになることに迷いを持っているという役柄だ。
「慎吾はプロのカメラマンを目指す学生なんですが、実家は酒蔵を営んでいるというバックグランドがあって、プロを目指してはいるものの限界を感じ挫折しかけていて、どこか自分で逃げ道を作ってしまっている人間。夏美は真っ直ぐ夢に向かって走っているのに、自分は悩み、答えを出せないでいて、どこか諦めかけているところがあります。その二人の温度差が少しでも出せれば、気持ちの変化や慎吾自身の成長が見ている方に伝わるのではないかと思っていました」
微妙に変化していく2人の関係を象徴するシーンがある。
「夜の公園で夏美と2人でやり取りをするシーンがあるんですけど、そこはすごく印象的というか、思い入れがありますね。悩みぬいた慎吾が夏美に今の想いを伝えるシーンで、交わす言葉は少ないんですけど、僕の中でも大切な場面だったんです。何度も何度もテストを繰り返してもらったんですけど、なかなかうまくできなかったんです。あの時は、自分の力のなさに直面して、頭の中が混乱していましたが、今振り返ってみると、何を大切にすべきかということを教えてくれたシーンでもありました。というのは、そこで監督の廣木さんに、“お芝居は引き算だから”と言われたんです。“とりあえず、頭で考えるより、気持ちからわきでるものを大切に”と。その時はまだ理解する余裕がなかったのですが、最近もしかしたらこういうことを言いたかったのかなって感じられる瞬間があったんです。廣木監督の言葉が今やっと、少しずつ自分の中に吸収できているのかなと感じています」
監督からの助言のほか、共演者からも多くのものを学んだという。
「有村架純さんとは、撮影の合間にいろいろとお話をさせていただきました。その中で感じたのは、仕事に対する姿勢が真っ直ぐな方だということですね。真面目で、優しく、すごく周りが見えていて、魅力的な方。ほかの共演者は光石研さん、小林薫さん、吉行和子さんなど、ずっと第一線で活躍されている方ばかり。皆が一同に集まるシーンでは、緊張感がありましたけどスタンバイ中は気さくに話しかけてくださり、本当に作品の舞台となったたけ屋に集まった人々のような雰囲気でした。とても自然で演じているという感じさえしない。でも、演じている上でのエネルギーや逆に一緒の空間にいるだけで伝わる安心感だったり、さまざまな感情を動かされた気がします。しかし、自分自身はちゃんと応えられているだろうかという不安とも戦っていたように思います。また、この作品を通して自分の弱点にも気づくことができました。やっている時は気が付かなかったんですが、頭で考えようとしている自分がいるんだなと。何かの意識が働いたのか、どこかで自分を良く見せたいと思いすぎているのか、自分自身もそこは分からないんですけど。自分への課題も含めて多くの事に気づかされた作品だったなと感じています」
そこに暮らす人々の細やかな心理描写を丁寧にすくった同作品のテーマはずばり“愛”。
「男女の愛、親子の愛、家族の愛。人間って愛が基準になっていると思うんです。楽しいとか悲しいという感情の原動力も愛情の部分から出てくるものだと思うので、そういう意味ではこの作品には愛がいっぱい詰まっていると思います。ストーリーの中に大きな事件があるわけではありません。しかし、日常にあふれているものが詰まっている。人と人との見えないつながり、家族の大切さ、身近すぎて普段はあまり気がつかないところにある優しさなど。一緒に観てくださるのであれば、家族や友達、パートナーなど大切な人と観に来ていただければ。僕自身この映画と出会ったことで、この仕事に対する意識が変わりましたし、スタートラインに立たせてもらったと思っています。監督の廣木さんには感謝していますし、有村さんはじめ、共演者の方々とご一緒させていただいて、とても勉強になりました。大きな優しさにつつまれている映画なので、その優しさを感じながら、何か持って帰っていただければうれしいです」
作品や監督、共演者から多くのことを吸収しつつ、着実にキャリアを重ねている工藤がこの先目指すところは。
「今は30代、40代に向かった準備段階だと思っているので、語学はもちろん、殺陣などいつどういう役がきても動ける準備だけはしておかなきゃいけないと思っています。今は真面目な人間というか、真っ直ぐな男の役を頂くことが多いんですけど、いつどんな役を頂いてもいいように20代、30代をどう過ごすのかを大切に過ごしたいです。今は、1歩ずつ進んでいくという事を丁寧に、目の前の事を大事にしていけば、将来につながると思っています」
(THL・水野陽子)
6月11日(土)全国ロードショー
【出演】有村架純、工藤阿須加、淵上泰史、村上虹郎、中村優子、小林薫、光石研、吉行和子
【監督】廣木隆一
【公式サイト】 natsumi-hotaru.com
【配給】イオンエンターテインメント