22年前、博多で上演された伝説の野外劇 風煉ダンス『スカラベ』を立川で再演
演劇の野外公演や音楽の野外ライブなどは時に“伝説”や“幻”という言葉を伴って後世に伝えられることがある。
この演劇集団・風煉ダンスの『スカラベ』もそんな作品のひとつ。22年前の1994年、彼らはクソ暑い福岡・天神で1カ月半かけ警固公園全体を舞台に仕立て上げ、1週間ほどの公演を行った。今回はこの伝説の作品を再演することになった。再演といっても前回は10人程度だったキャストも増やし26人で作る「大改訂版」だ。
主宰で作・演出を務める林周一は「実際のところ自分たちでもあれはなんだったんだろうという思いもある。あの公演はひとつの事件になった。それをもう1回掘り起こして、遊んでみるのも面白いんじゃないかと思った。それで読み返してみると、そこにはまだ若くてバブルの追い風と高度経済成長期に育ちポリティカルなものが全くない自分がいて面白かった。阪神淡路大震災やオウム事件が起こった95年以降、僕らもポリティカルな作品が多くなっていった。だからスカラベという作品は能天気でひたすらくだらないギャグで終始している。意味ありげでなにも言っていない。最近は時代と相まみえる作品が多かったので、そういうちょっといい加減なものもやってみたいなと思ったんです」
太陽のない“闇市場”を舞台とした狂騒と混乱に満ちた物語。設定を見ると福島第一原発事故に伴う双葉町とか浪江町の状況を想起させるが、この設定は22年前の初演時に考えられたもの。「今回は枝葉の部分で多少そういう話は出てくるかもしれないが、あまり深いことは考えていない」という。
初演時は博多ということで物理的に足を運べない人も多くいた。また今のように情報があふれかえった時代でもなく、公演後の記事で初めて知って、地団太を踏んだ者も多くいた。
立川と聞くと遠いイメージもあるが、新宿から通勤快速だと約30分。公演期間中は土日祝日も多いので、ちょっと足を延ばして新たなる伝説の目撃者になってみるのもいい。
演劇集団・風煉ダンス 野外劇公演『スカラベ』
【日時】9月16日(金)〜25日(日)18時開演 【会場】立川市子ども未来センター 芝生広場(立川市錦町3丁目2番26号)【問い合わせ】風煉ダンス(TEL:080-3939-2020 〔HP〕 http://furen-dance.info )