一木美里のおいしくたべようの会 vol.05『2つの扉とやさしい朝』
一木美里です。
夏の終わりの週末は、麻布十番祭りにa+nationと夏の風物詩を一気に味わってきました♫
お祭りで偶然会う友人との会話とか、フェスで親友と並んで聴く懐かしい曲への新しい感覚とか、今年も楽しい思い出を増やせました。
毎月第1週目のテーマは「朝ごパン」。
例年より雨の多かった8月よりも夏らしいかもしれない、燦々と照りつける太陽が暑い9月の週末、晴れた朝。
9月のカレンダーだけで途端に涼しくなったような勘違いをして、原宿駅から散歩がてら代々木公園を通り抜けて向かうのは
富ヶ谷で1983年から続く「ルヴァン」。レトロな雰囲気漂う木の看板の前で日傘を閉じる。
左手に、パン屋さん、右手にはカフェスペース。
それぞれに扉がある。並んだ2つの扉の向こうにそれぞれの朝がある。
右手の扉へ入ると、一人で座っている人もいれば、何人かでわいわい朝食を摂っている人もいて、なんだかジブリの映画の1シーンがそのまま実写されたかのような印象。
本物のパンでできた照明が店内を温かく照らしていて、光を放つパンたちが映画の世界にいるかのような気分をさらに強めてくれた。
ウッド調とかそういう感じでなく、木のおうち、という表現があっているような場所。
木の椅子に座っている、ピンクのTシャツを着た友人の肩に手をおいて「おはよう」と声をかける。
ドリンクをオーダーして火照った身体を冷やそうとする私に、
「冷えるのはよくないよ」と、丸い大きなカップを両手で包むように持ち上げて言った。
同じカフェラテが好きなんだけど温度は別、私たちはいつもそんな感じで、「一緒」と「別々」があるからいいコンビなんだと思う。
同調する部分がありながらも、足りない部分を補い合う、それが最高の人間関係なんじゃないか、と思ってる。
どこにだって完璧な人なんていないのは、神様が完璧な人間を作ろうとしなかったからじゃなくて、それぞれの描く完璧像自体が違うから。
昔は完璧になりたくて、その答えを探して、そして遥か遠いその完璧像になりたくてなりてくて仕方なかったけど、’’そういうことじゃないんだ’’ってことに最近ふと気がついた。
手書きのメニューとにらめっこしてオーダーしたのは「チーズトー ストプレート」。
風味豊かなカンパーニュにトマトなどの季節の野菜とチーズがのっ たトーストは食べ応えがあり、香ばしいパンにふわふわしたチーズ がのっていて、ハイジがおじいさんに作ってもらったあのパンを思 い出す。
カンパーニュのもっちり、しっとりした味は心にしっとりとした音 楽でも流してくれるような風で、毎日でも食べたいと思うほど。
友人は一番人気という「ゴマミソサンドプレート」を。25%が全 粒粉でできたコンプレ25でサンドされた胡麻味噌は、少し酸味の あるパンと驚くほど相性が良くて、一口もらってから「わたしもそれも食べたい」と声に出した。彼女 の選択はいつも魅力的。
近くで魅力的な選択をしている人がいると、視野が広がると思う。 同じものを選ぶことはなくても、その選択の行方を見ていると新し く知ることや感じることがある。
狭い世界に生きてその場所しか知らないことを、幸せだと言う人も いるけど、せっかくだから他の場所も覗いたりしてみたいと私は思 うから。
それが誰かのためっていう意味も含んでいたならきっと最高。シー タのために飛行船に乗ったパズーとか、ジブリの映画の主人公たち もそうしたみたいに。
「やさしい気持ちで目覚めた朝はおとなになっても奇跡は起こるよ 」とユーミンが歌っていたように、私はまだ奇跡を信じてて、探し ているのかも。
だからやさしい朝をつくりにきたのかもしれない。
一度外に出て、今度は左の扉を開ける。
いつものパンを買う人、初めて訪れてわくわくとパン見つめる人。並んだパンたちの奥で、パンが焼き上がるのが見えた。
たくさん並んだパンの中から、気になった子たちを選んで連れ帰る、そんな表現をしたくなるパン屋さん。
パンたちに使われているスペルト小麦は小麦の原種にあたる古代穀物で、世界最古の文書と言われる旧約聖書にも登場しているんだそう。
そのせいなのか、どのパンも、まるで何かの「実写版」というコメントがついてきそうな風貌をしてる。
この小麦は豊富なビタミン、ミネラル、アミノ酸、食物繊維をも含んでいて、
ヨーロッパでは小麦アレルギーを持っている人が食べても85〜90%は発症していないという研究結果さえある、と聞いた。
ナッツ風味な小麦の味がわかるクロワッサン、素朴な甘さのあるバナナブレッド。
どこか素朴で、レトロで、とても美味しく、長くそのおいしい後味を残す。
サクサクのパイを噛んだ奥にある、はちみつと絡んだくるみのぎゅっとした噛み応えとはちみつの甘さが一瞬だけ時を止めてくれたような気がした。
やさしい朝はルヴァンから、テイクアウトもできるかも。
ルヴァン
【住所】東京都渋谷区富ケ谷2-43-13 03-3468-9669
【URL】 http://levain317.jugem.jp/
【営業時間】[火~土]8〜19時30分 [日・祝]8~18時
【定休日】月曜・第二火曜
歌手、DJ、SamanthaThavasaグループブランドレップ。
1989年12月6日生まれAB型。学生時代より読者モデル、リポーター、バックダンサーなど多岐に渡って活動。
SNSや雑誌を通してファッション、ライフスタイルを発信中。
【公式instagram】▶︎ https://instagram.com/misato_ichiki/