江戸瓦版的落語案内【粗忽長屋(そこつながや)】

Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE【ネタあらすじ編】

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 長屋住まいの八五郎と熊五郎。兄弟同然に仲がいい2人は粗忽、すなわちそそっかしいことこの上ないところもそっくり。無精とマメの差こそあれ、番付があればともに大関をはれるところ。ある朝、八五郎が浅草の観音詣でに出かけると、雷門でなにやら黒山の人だかり。なんでも身元不明の行き倒れだという。人垣の股ぐらをくぐり抜け、強引に最前列に躍り出た八五郎はコモに横たわる死骸を見ると「あっ! 熊の野郎だ!」。「熊さんといいなさるのか。

 それじゃ、早速身内の方に知らせてお取引を願おう」と言う役人の言葉に「身内? いやー、こいつは天涯孤独のかわいそうな奴で。朝出がけに気分が悪いと言っていたんだが…。こんなところでおっ死んじまうなんて」「朝出がけに? じゃ、別人ですよ。この仏さんは昨晩から倒れていたので」「いやー、そんなことはない。この顔は熊公だ。きっとそそっかしいから死んだことに気が付かないで、家に帰ったに違いない。ちょっくら行って、今本人を連れてきますよ」と、役人の言う事も聞かず長屋へ取って返した。長屋へ駆け込むや熊五郎の部屋に行き、本人を叩き起こすと「大変だよ! 浅草寺の近くでお前が死んでるよ」。寝ぼけながらも熊五郎「死んだ? 俺が? まだ起きたばかりで、死んだ心持ちはしねえな。人違いじゃないのか」と反論。「お前はそそっかしいから死んだことに気づいてないんだよ。

 その証拠に、昨夜はお前何してた?」「うーん…昨夜は、本所の親戚の家でしこたま飲んだあと、吉原を冷やかして、浅草寺の境内を歩いたところまでは覚えているが…。その後はとんと記憶がねえ」とあやふやな答え。「そうだろ。気分が悪くなって浅草寺で倒れて、そのままおっ死んじまったんだよ」。そう言われるとそんな気がしてきた。「兄貴ー、どうしよう」「とりあえず死骸を引き取りに浅草に行くぜ」。そう言われて、再び浅草に向かった2人。到着しコモをまくると熊五郎、死体をさすり、「確かに俺だよ。なんだってこんな浅ましい姿に…。こうなると分かってりゃ、もっと旨いもの食っておくんだった」。2人で死骸を運ぼうとすると、再び熊五郎が「でも兄貴、何だか分からなくなっちまった」「何が」「抱かれてるのは確かに俺だが、抱いてる俺はいっていどこの誰なんだろう」

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