【江戸瓦版的落語案内】鰻の幇間(うなぎのたいこ)

Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE【ネタあらすじ編】

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 明治の中頃。真夏の土用、暑さの盛り。炎天下の中、野だいこの一八(いっぱち)が、客を見つけて昼食をごちそうになろうと通りをさまよい歩いていた。お金のありそうな旦那の家を訪ねるも、避暑を兼ねた湯治で東京を留守にしているという。こうなったら、手当たり次第声を掛けようと通りの向こうを見ていると浴衣姿の男がやって来た。どこかで見た顔だが、どこで見たのやら…。しばらく考えるもさっぱり思い出せない。

 しかし、ここは背に腹は代えられぬと、思い切って声をかけた。「いよっ! 旦那、お久しぶりです」「おお、師匠じゃないか。無沙汰だな」と笑顔で応じる。なんとか、その素性を探ろうと、会話をするが、一向にわからない。そのうちに旦那が「見ての通り、これから湯へ行こうと思っていたのだが、せっかく会ったんだから、ここはひとつ鰻でも食べに行こうじゃないか」と誘ってきた。思いがけず、鰻にありつけるとあり、一八は喜んで旦那について行った。連れて行かれたのは路地裏の薄汚い鰻屋。それでも、気を取り直して2階の座敷に上がり、かば焼きと新香をつまみに酒を飲みだした。しかし、まだ旦那の正体が思い出せない一八、なんとか糸口をつかもうと「そうそう、そのうちまたお宅にお伺いをしたく存じます。えっと、お宅はどちらでしたっけ?」「先のとこじゃねえか」「あ、ああそうですね。えっと、あっちのほうでしたね」と、なかなか確信に触れられない。そのうち旦那が「ちょっと手洗いに…」と立ち上がった。

 しかし、待てど暮らせど旦那が戻ってこない。あまりにも遅いので、心配になって便所をのぞくともぬけのカラ。女中に聞くともう帰ったという。「粋なもんだ、勘定を済ましてスーッと帰っちまうとは」と感心していると女中が「勘定お願いします」と言ってきた。「お連れ様が、先に帰るけど、二階で羽織着た人が旦那だから、あの人にもらってくれとおっしゃってました」と。「いや、やられた! これじゃ、食い逃げじゃなくて、食わせ逃げだ。しかし、ずいぶんと高い勘定だ。こりゃ、高過ぎねえか?」「お連れ様が6人前のお土産を持って帰られました」と女中。「なんてこった! そこまでやるとは大した野郎だ」と、勘定を払い帰ろうとしたがゲタがない。「あ、あれもお連れさんが履いてらっしゃいました」

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