「パラレルキャリア」を実践する一木広治氏が未来の起業家に伝えたいこと【WASEDA-EDGE人材育成プログラムリポート】

「起業特論Aトップリーダーマネジメント」第2回講師:一木広治氏『2020年オリンピック・パラリンピックに向けて』(2018年4月13日実施)

文部科学省が推進する「グローバルアントレプレナー育成促進事業」に選定されている「WASEDA-EDGE人材育成プログラム」の一環として、早稲田大学では注目のトップリーダーを講師に招く特別講義「起業特論Aトップリーダーマネジメント」を開講(6月1日まで全8回)。第2回目の講師はフリーペーパーTOKYO HEADLINEを発行する、株式会社ヘッドラインの代表取締役社長の一木広治氏が登壇した。



パラレルキャリアの始まりは「東京から日本を元気に」という合言葉

「私は早稲田大学建築学科を卒業したのですが、私の在学時には早稲田大学の位置づけは今ほど高くはなかったんです。当時はバブルの真っただ中で、私もよくクラブやディスコに遊びに行ったのですが、早稲田生はクラブなどでは市民権がありませんでした。“早稲田生はクラブやディスコなんかに来るな”なんて言われたものです。そんな時代が早稲田にもあったんです。悔しかったので“みんなでビッグになろう!”と自分たちでサークルを作って、とにかく目立つようなイベントをたくさん主催しました。ここでの経験が私の原点です。

 その後、1987年21世紀における人材育成を目的に二十一世紀倶楽部という組織を立ち上げ、以降はこれを中核にして、志を同じくする仲間たちとさまざまな活動を行っています。2004年には株式会社ヘッドラインの代表に就任し、日本初のニュース型フリーペーパー・TOKYO HEADLINEを発行しています。東京を拠点にしながらもより幅広い活動を念頭にしており「東京から日本を元気にしよう!」を合言葉にしています。この合言葉のもとでさまざまな活動をしてきた結果、EXILEなどが所属する株式会社LDHの顧問や株式会社ローソンの顧問など、気づけば、さまざまな肩書を持って活動するようになりました。

 これが「パラレルキャリア」という働き方です。パラレルキャリアとは、もともと経営学者のドラッカー教授が提唱した考え方です。パラレルキャリアでは、起業や組織といった境界を越え、3つ以上の肩書を持って活動します。そして、それぞれの活動が絡み合って、ものすごい化学反応を引き起こすのです。私は、先ほどの合言葉のもと、さまざまな活動をしていましたが、それが契機となって、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの招致委員会の広報アドバイザーという、貴重な体験をすることになりました。



2020年招致広報を任されて

 2016年に、リオでオリンピック・パラリンピックが開催されましたね。2016年大会の招致にも、東京は手を挙げていたのは知っていますか? 実は、これを知らない人が意外といるんです。2016年大会の招致に失敗した理由は、ここにあります。実は大会の招致には、3つのハードルを越えなければいけない。大会の開催計画、その実現のための財政状況、そして開催の国内支持率の高さです。2016年大会の招致に失敗した理由は、この国内支持率でした。リオの支持率は80%強だったのに対し、東京は59%しか支持率がありませんでした。そもそも、招致をしていること自体を知っている人があまり多くありませんでした。この反省を生かすために、2020年大会招致のために、まずは“招致をしているんだ”ということを知ってもらわなければいけませんでした。そのために、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』とのタイアップや、広報ポスターにEXILEを引っ張ってくるなど、とにかくみんなの目に触れるようにしました。地道な活動が功を奏し、見事2020年大会は東京でやることになりました」



「志」を掲げて

「ここで私の活動の合言葉を思い出してほしいと思います。“東京から日本を元気に!”です。2020年大会招致を通して私が考えていたことは、このチャンスを日本はどう生かすべきかということでした。オリンピック・パラリンピックには、選手だけでも1万5千人が来ます。それについてくるスタッフ、報道関係者、観客などを考えると、膨大な数の人々が世界中から日本に来ることになります。日本はこれからインバウンドで食べていく国になっていきます。ですので、2020年大会を契機に、インバウンドでやっていけるような国にしていく体制づくりをやっていかなければなりません。つまり、東京に来た人々を、地方に流していけるように、地方創生のための施策を講じていく必要があります。東京五輪は“日本はこんなにいい国なんだ”、“実はこんないいところがあるんだ”ということを世界にプレゼンテーションする絶好の機会です。この機会を活かして、ここに行ってみようと思ってもらうために、日本中が力を合わせていかなければいけません。そのために、私は“JAPAN MOVE UP! 日本を元気に!”という合言葉を掲げ、全国の首長と連携したり、『JAPAN MOVE UP!』というラジオ番組やAbema TVの『JAPAN MOVE UP FRESH!』という番組で日本を元気にしている人をゲストに迎えさまざまなお話をしていただいています。出演してくださった方には、東京オリンピック・パラリンピック開催が決まった2020年に向けて、自分は何ができるのか、何をするのかを宣言する”アクション宣言”をしてもらっています。心にあることを文字に起こすことは、非常に大事だと思いますので、皆さんも、2020年に向けて、何ができるのか、何をするのかを実際に書いてみてください。

 JAPAN MOVE UP!という簡単な合言葉、私は“志”と呼んでいますが、これを宣言して活動することで、
素晴らしいネットワークを築くことができました。ネットワークづくりに大事なことは、テーマ(志)を宣言して、少なくとも3人の仲間づくり、ネットワークづくりをしていくことです。皆さんも自分の志に共感してくれる仲間とともにネットワークを作り、2020年のその先に向けて“日本を元気に!”していってください」

一木広治
1964年東京都生まれ。早稲田大学建築学科卒。一級建築士。株式会社ヘッドライン代表取締役社長。二十一世紀倶楽部理事事務局長、ライオンズ日本財団理事、株式会社LDH顧問・エグゼクティブプロデューサー、株式会社ローソン顧問、東京2020オリンピックパラリンピック招致委員会事業広報アドバイザー(2011年―2013)など他にも多数の企業の顧問、また全国の小中学生を対象とした「夢の課外授業」、地方創生を目指す「JAPAN MOVE UP」とさまざまな方面で活躍を続ける。
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