【インタビュー】avengers in sci-fiは、アップデートし続ける

 大量のエフェクターを駆使し、スリーピースとは思えない音圧の厚い電子音サウンドを作り出す、唯一無二のロックバンドavengers in sci-fi(アベンジャーズ・イン・サイファイ)。今年でデビュー16周年を迎える彼らは、11月7日、3rdミニアルバム『Pixels EP』をリリース。その最新作の制作秘話や、16周年に馳せる思いなどをインタビューした。

写真・蔦野裕

——まずは、avengers in sci-fiについて、簡単に教えてもらえますか?

木幡:いつの間にか15年もやってしまいました。初期の頃は「他のバンドがしないことの、隙間を縫いたい」なんて言って、SF……サイエンスフィクションを音楽で表現しよう!っていうコンセプトだったんですよね。

——確かに、avengers in sci-fiのサウンドってどこか宇宙めいた、浮遊した雰囲気がありますよね。

稲見:狙って作ってるので、そう思ってもらえたならうれしいです(笑)。

——ソングライティングはすべて、ギターの木幡さんによるものなんですよね?

木幡:そうですね。たたき台を僕が作って、あとはみんなでワーワー言いながら切磋していく感じです。作曲のインスピレーションが舞い降りてきた! なんて言う人もよくいるけど、そんなもの降ってくるものじゃないよな、って僕は思ってます。僕は機材からインスピレーションを受けたりしますね。直感で買っちゃった機材の音を無理矢理曲の中で生かしたり。泥臭く作曲してますね……。

 インタビューはソングライティングを行っているGt木幡太郎の言葉を中心に進められていく。木幡は控えめな口ぶりで、しかし伝わる内容に齟齬を産まないように気をつけているかのような繊細な話ぶりで、インタビューは進んでいく。

木幡太郎

——今回のアルバム『Pixels EP』は、さまざまなアーティストとのコラボ楽曲がアルバムの半分を占めているんですね。

木幡:すごく自由に、自分の作りたいものを作れたなあ、と自分でも思っています。特にTENG GANG STARRさんとのコラボは感慨深かったですね。バンドシーンとは今のところ接点が無いと思うので……意外性のある組み合わせだと思います。

——今回のアルバムの聴きどころがあったら教えてください。

木幡:リリックには毎回こだわっています。今作では平成最後の年ということもあって、僕らのような非インターネットネイティブというかオフライン世代(笑)が時代の変わり目に向き合う上での思いとか、SNS時代に対する僕らなりの視点とか。昔は、自分の理解しがたい一過性の流行とかにヘイトを露わにしてたんです(笑)。でも今は、いい意味でそういう新しい流行や時代性を俯瞰できるようになっていて。だから今回のEPは僕たちの作ったものの中でも、前向きな印象のものが作れたと思っています。

稲見:今回のアルバムは僕たちが独立レーベルを立ち上げてから初めてのアルバムなんですけど、やっぱりレーベル所属していた時より、すごく自由に制作できてるし、自分たち自身納得のいくものには仕上がったよね。

——ご自身たちでレーベルを立ち上げて、そこからのリリースということなんですね。

木幡:そうなんですよ。だから今は事務作業もMV制作も、全部自分たちでやってるんです。

——Instagramを模しているんですね。MV制作まで自分たちで行うのは大変ではなかったですか?

木幡:いや、楽しかったですよ。MVやアー写を撮るにあたって、今まではレーベルとか監督に任せちゃってた部分も、自分たちでちゃんとどうするのがかっこいいか考えて作って。MVに関しては、プロの監督ほどの技術を自分たちが持っているわけではないから、めちゃめちゃ頭を捻って……アイデア勝負でって考えた結果が、Instagramの画面を使って作るものだったんですよね。

——このアカウントはPV制作用に新しく作ったんですか?

木幡:そうです、なんとなく全体の見え方とかも、ビデオっぽく見えるようにこだわったり。試行錯誤と努力は滲んでるんですけど、制作費自体はほぼかかってないんですよ。

——ちなみに、今回のMVの制作費って、お伺いしてもいいですか…?

稲見:リアルな話、2、3万円くらいなんじゃないかな。

——やすっ(笑)

木幡:スタジオもアー写を撮るためにレンタルしたついでにMV撮影に使ったっていう意味では実質タダだし、MV中で食べてるラーメン×5の代金くらいしかかってないんじゃないですかね。(笑)

稲見:お世話になってる下北沢ERAっていうライブハウスとか、知り合いにいろいろ助けてもらったことも大きかったんです。

木幡:そういったものも背負って、今回のアルバムでは納得のいくものを作ることができたと同時に、次の制作へのモチベーションみたいなものもしっかりと持てました。

稲見喜彦

——今後、どういうところを目指して音楽活動を続けていかれるんですか?

木幡:海外での活動も考えていきたいなあ……というのが長い目で見た目標ですね。

稲見:ただその前に、飛行機に載せられる量にエフェクターを減らさなきゃいけないっていう大きい課題があるんですよね……。

https://www.instagram.com/truecolor_cmyk/

——エフェクターの多さには定評がありますよね。全部でどのくらいの量のエフェクターを使ってるんですか?

木幡:重量で言ったら200キロくらい? ケースで言ったら10個分くらいですかね。

——半端ないですねそれ(笑)。でも確実にそれがavengers in sci-fiのアイデンティティでもありますよね。私もライブを見に行った時はその量の多さに驚きましたし、何よりイヤホンで聴いていた時の何十倍もの音の深さに驚きました。

木幡:そこは僕たちのライブのいいところでもあるんです。CDで聴いているだけじゃ、何してるのか全くわからないと思うんですけど。ライブで生演奏を見て、やっとどんな風に音作りしてるか分かるところもある。それに、今回のアルバムに関しては、PCでの音作りも多くて、正直ギターもベースもいらねえじゃんって曲も多いんですけど、ライブではそこにバンドアレンジも加えるので、ライブでしか聴けないサウンドと、より厚い音を感じてもらえると思います。

——ライブでこそ、avengers in sci-fiの本領が発揮されるんですね。新アルバムとツアー、とても楽しみですね! 木幡さん、稲見さん、ありがとうございました。

 バンドは、新譜を引っさげて、11月から東名阪を周るワンマンツアーを開催する。フューチャリングソングのライブアレンジも気になる。ぜひその目でavengers in sci-fiの音の深さを確かめて欲しい。まるで月の周回旅行に来たかのような、コズミックな浮遊感を感じることができるだろう。

(聞き手と文・ミクニシオリ)

『Pixels EP』はPCI MUSIC から11月7日リリース。 2130円 (税抜)。
【PROFILE】avengers in sci-fiアヴェンジャーズ・イン・サイファイ)……ギター、ベース、ドラムスという最小限の3ピース編成でありながら、数々のエフェクターを駆使したコズミックで電撃的なロックを響かせ“ロックの宇宙船”とも称される。09年12月にメジャー・デビュー。木村カエラのシングル『BANZAI』をプロデュースや、CM曲の書き下ろしも手掛けている。2016年4月に約2年ぶりとなるニューアルバム「Dune」のリリースし、FUJI ROCK FESTIVAL '16出演を始め、全国ワンマンツアーを行った。2017年に結成15周年を迎えた。11月7日に『Pixels EP』をリリースする。




東名阪を巡る、avengers in sci-fi “Pixels Tour”は11月9日に名古屋からスタート! 11月9日(金) 名古屋 APOLLO BASE 18時30分開場  19時開演 11月11日(日)梅田 Zeela 17時30分開場  18時開演 11月22日(木)代官山 UNIT 18時開場  19時開演   ライブの詳細は公式ウェブサイト( http://www.avengers.jp/ )で!