【インタビュー】蒔田彩珠 デヴィッド・ルヴォー演出、草彅剛主演の音楽劇『道』で舞台初出演

 フェデリコ・フェリーニの映画『道』を原作とする音楽劇『道』が12月8日から東京・有楽町の日生劇場で上演される。デヴィッド・ルヴォー演出、草彅剛主演ということで大きな話題を呼ぶ本作で草彅の相手役に抜擢されたのが蒔田彩珠。今回が初舞台となる。

(撮影・蔦野裕)

 蒔田は子役でデビュー後、着実にキャリアを重ね、これまで映画、ドラマといった映像作品に多く出演。CMでもシリーズものへの出演も多く、企業名を聞くと「ああ、あの役の!」とピンと来る人も多いかもしれない。今年7月に公開された映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』では南沙良とダブル主演を務めるなど着実にキャリアを積み重ねている。

『志乃ちゃん——』ではミュージシャン志望の女子高生・加代役を務めたのだが、ギターは上手いが歌は下手という難しい役を与えられた。歌が上手い人が演技で下手に歌うというのはかなり大変だったのでは?

「歌うことは好きです。でも楽器ができるのに音痴というのは、複雑な役で難しかったです。映画で歌ったのはもともとは知らない曲だったので、なるべく覚えないようにしていました。」

 確かに作中では最近の女子高生は歌わないような歌が歌われていた。

「『あの素晴らしい愛をもう一度』とブルーハーツさんの『青空』という曲を歌わせていただいたんですが、『あの素晴らしい愛をもう一度』は小学生の時に学校で歌ったことがあったので知ってはいました。『青空』に関しては知らなかったのですが、好きな系統の歌でした」

 そんな蒔田が今回、初めて舞台に挑戦する。

「今までは、舞台をやるのが少し怖いなと思っていました。マネジャーさんから、そろそろ舞台に挑戦してみる?と言われ、オーディションに臨みました」

 怖いというのは?

「映像だとシーンごとに、本番を撮影していくのですが、失敗したとしてもまた撮り直しができました。でも舞台は本番を通しでやるので、間違えたりハプニングがあっても、やり直しができないという不安があったので」

 今回はオーディションを受け、草彅の相手役であるジェルソミーナ役を射止めた。ちなみに演出家のデヴィッド・ルヴォーのことは知っていた?

「知らなかったです。作品を拝見したこともなくて。でも初めてオーディションでお会いした時に、『道』という作品をどういう舞台にしたいのかということをすごく楽しそうに語っていただいて、本当にこの作品が好きで舞台をいいものにしたいんだなということが伝わってきました。この方なら安心してお芝居をぶつけられる、と感じて。そこで一気に不安はなくなりました。ほかにも、雑談をしたり、ギターの弾き語りをしたり、“いいよ! これからもギターを続けてよ!”みたいな楽しい雰囲気だったので、オーディションという感じではなかったですね」

 ルヴォー作品に出たい女優はたくさんいる。

「“今度ルヴォーさんの作品に出ますよ”というと、みんなに“ルヴォーさん? うらやましい“とは言われました。すごい人だとみんな声を揃えて言いますね」

 ジェルソミーナをやるにあたり準備していたことは?

「もともとドラマや映画に出演することが多く、声を張るということがあまりなかったのでボイストレーニングに通っています。あとはトランペットです。音を出すところから始めました」

 共演の草彅剛にはどういう印象を?

「草彅さんとはまだお会いしてないんですけど、草彅さんはいつも周りを気にされていて、優しい表情で笑う方だなという印象です」
 ルヴォー、草彅、日生劇場…初舞台にしてプレッシャーがかかりそうな要素がたくさんある。

「不安はもちろんあるんですが、毎日の稽古では新しいことを発見できると思うので、楽しみな気持ちのほうが大きいです」

 映画の『道』は見た? どういう印象?

「この作品のオーディションを受けるにあたって、見たのが初めてです。見るたびに違う 印象が浮かび上がる映画だと思いました。最初は、ザンパノのジェルソミーナに対する態度がかわいそうだなとか切さを感じることが多かったんですが、何回も見ていると登場人物それぞれに優しさがあるんだなと感じて。ザンパノも本当は優しい人なんだ、とか…。台本を読んだだけでは、ジェルソミーナの感情が分からないところもあったので、映画を見て研究したりしています。稽古が始まる前にやれることはやっておきたいと思うので」

 ジェルソミーナは自分とかぶるところはある?

「私自身はジェルソミーナに似ている部分はあまりないですね。ジェルソミーナはうれしかったら笑うし、悲しかったら泣く。感情が顔の表情にすぐ表れる、素直な子なんだと思います。ただ、私自身は感情をそのまま表に出すのが苦手なタイプです(笑)。」

 今後、目標にする人は?

「満島ひかりさんです。満島さんもいろいろなジャンルの作品に出ていて、シリアスな役もあれば陽気な役もできる。作品によって同じ人とは思えないような役作りをして演じているところに憧れています」

 女優としては正統派の演技を見せる薪田だが、その一方で映画『志乃ちゃん——』ではギター、今回の舞台ではトランペットと他の女優にはない武器を身に着けた。16歳という年齢でフェリーニ作品にも強い興味を示すなど好奇心も旺盛で今後、唯一無二の存在として大きな飛躍を見せそうな予感。

(TOKYO HEADLINE・本吉英人)

音楽劇『道』
【日時】12月8日(土)〜28日(金)
【会場】日生劇場(日比谷)
【問い合わせ】梅田芸術劇場(TEL:0570-077-039=10〜18時 [HP]http://www.umegei.com/michi2018/)
【作】ヘンリック・イプセン
【演出】デヴィッド・ルヴォー
【脚本】ゲイブ・マッキンリー
【出演】草彅剛、蒔田彩珠、海宝直人、佐藤流司 ほか