【江戸瓦版的落語案内】三枚起請(さんまいきしょう)
Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE【ネタあらすじ編】
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
「三千世界の鴉(からす)を殺し、ぬしと朝寝がしてみたい」。そんな都都逸が歌われるほど、カラスが多かった江戸。吉原の女郎に入れあげているイノさんに棟梁が意見した。しかしイノさん、お気に入りの女郎が来年3月に年が明けたら一緒になるつもりだとのろける。棟梁は「女郎なんてのは客をだますのが商売だ」と言ったが、イノさんは起請文、すなわち誓約書をもらっていると言う。棟梁がそれを見せてもらうと「一つ起請文の事。来年3月年季が明けそうらへば 貴方様と夫婦になる実証なり 新吉原江戸丁二丁目朝日楼内喜瀬川こと本名中山みつ」。「ん?」棟梁はしばし考え込んでしまった。なぜなら、棟梁も同じ起請文を持っていたからだ。「その喜瀬川って女郎は以前品川にいて、年のころは25、6…」「間違いない!同じ女郎だ!だまされた!」。2人がカンカンに怒っているところに、酒屋の清公がやって来た。二人の様子を見て話しを聞くと「2人してだまされるなんてみっともない」と棟梁の手から紙を奪うと、笑いをこらえながら読んでいる。
しかし、自分も同じものを持っていた! なんと同じ町内で3人もだまされていたことが発覚した。こうなったら吉原に乗り込みその女郎の化けの皮を引っぺがしてやろうと息巻くイノさんと清公に棟梁が「相手は女郎だ。しらばっくれられたり、開き直られたら、こっちが野暮だと思われる。ここはひとつ作戦を立てて…」なにやら相談していた3人は見世に上がり、イノさんを押し入れに、清公を屏風の後ろに隠し、棟梁だけが喜瀬川を呼び出した。部屋に入ってきた喜瀬川がいつものように、お世辞を並べ立て甘えてくる。しかし棟梁はムッツリ。「どうしたんだい。機嫌でも悪いのかい?」と聞いた喜瀬川に棟梁は「ほかの男にも同じ起請文を渡しただろう」と問い詰めた。しらばっくれていた喜瀬川だったが、2人が飛び出してきたのを見ると「大の男が3人そろって掛け合いかい?女郎はだますのが仕事なんだ。だまされるほうがバカなんだよ」と開き直り。「だますのは構わないさ。
しかし、嘘の起請文はいけねえ。嘘の起請を書くと、熊野でカラスが三羽死ぬって言われてるくらい罰当たりなんだぞ」「ふん、じゃ私は嘘の起請をどっさりと書いて世界中のカラスをみんな殺してやりたいね」「そんな事してどうする」「勤めの身だ。朝寝がしたい」