つけま、アイプチの「平成ギャル」はもういない? これからの若者文化を担う「ギャル2.0」

「平成」が終わる今年、平成の歴史や変化を振り返ることが多い。さまざまな分野でこの動きが目立つが、そのひとつが「ギャル」の存在だろう。平成前半を象徴とするものの一つとして、大流行。忘れがたいブームの一つだ。

写真:Fujifotos/アフロ

 当時の中高校生たちはこぞってスカートを短くし、ルーズソックスを履いた。『egg』、『popteen』、『Ranzuki』、『小悪魔ageha』など、ティーンファッション誌にギャル雑誌が増え、濃いメイクが流行した。ネットの普及で紙媒体が衰退し、『Ranzuki』は発行停止。その他の雑誌も次々と休刊、季刊誌化するなどしたが、今年は『小悪魔ageha』が復活。『egg』も『LOVEggg』として復活するなど、ギャルブームが再熱し「渋谷にギャルが帰って来た」などと叫ばれている。

 皆さんの想像する「ギャル」とはどういう姿だろうか?濃いメイク、つけまつげ。短いホットパンツに、ど金髪。そんな姿を想像するのではないかと思う。

 しかし、今都会で見かけるギャルたちには、そんな昔のギャルが持つある意味の「やり過ぎ感」が薄くなっている。メイクも濃いものの、昔の雰囲気とは一線を画する。二重幅を潰すほどの太いアイラインや、重たそうなつけまつげをしたりはしない。

 数十年の間に、ギャルたちにどんな変化があったのだろう。

 まず、世間的なブームとして、現代の若者文化を牽引する「韓国ファッション」の存在は大きい。韓国ではスポーティでメンズライク、ゆったりしたシルエットのファッションが流行しており、必ずしも露出の激しい服を好むわけではない。そんな韓国ファッションが、日本のティーンたちの中でもそのまま流行している。10代向けのファッション誌やWEBメディアには「韓国コーデ」「オルチャンメイク」などの情報も多い。そして韓国といえば、美容と整形の国だ。

 若者のメイクの濃さやしつこさが軽減されたように感じる要因の一つとして、「整形のプチプラ化」というものがあると考えられる。これもまた、整形手術においては先進的な国であるとともに、整形手術を受けるということが広く受け入れられている韓国のカルチャーは一役買っている。

 国内においても、目元の二重整形、ヒアルロン酸注入など人気の施術に関しては、十分に症例数が増え、低価格化も進んでいる。大手美容クリニックでなら、二重整形も1万円くらいからと、お小遣い程度のプチプラ金額で受けられるところも出てきている。

 2000年初期に「アイプチ」で必死に二重を作り、つけまつげを盛っていたギャルたちも、今は二重整形にまつ毛エクステを愛用する。整形は半永久的なもので、「アイプチ」を使い続けるよりもランニングコストが安く済む場合もあり、最近では親の承諾が必要な18歳以下でも、親の同意のもとで二重整形の施術を受けるケースもあるという。

 では、あの頃の「平成ギャル」はもういなくなってしまったのだろうか?

 都会に比べ、周囲の目を強く意識することが多くなりがちな地方においては、整形手術に対しても保守的な傾向があり、実際にトライするにしても都会と比べると絶対的に施設が少ないこともあって、「カジュアルに」とはいかないのも、その理由なのではないだろうか。

「平成ギャル」はもう都心にはいない。しかし、田舎に行けばまだ「ドンキでキティサン(キティちゃんの健康サンダル)プージャ(PUMAジャージ)のど金髪ギャル」もいる。平成ギャルは現代、地方のマイルドなヤンキーといえる女性たちのなかにしかおらず、トレンドから取り残された存在になっているように感じる。

 平成ギャルの証だったミニスカや厚底は、現在の世間的なファッショントレンドからはずれている。健康意識の向上によるスニーカーブームなどで、ここ数年はずっと「オトナカジュアル」と呼ばれるヘルシー:シンプルなファッションのブームが続いている。

 その一方、水原希子がギャルブランドとコラボして厚底のニーハイブーツなどの「ギャル靴」をリリースしたり、青山テルマがパラパラを踊ったりと、Instagramで力の強い女性芸能人の中で「ギャルの再熱」を感じるなどの動きも見られる。ギャルは、一つの個性のあるファッション・カルチャーとして定着、一部の人に好まれ続けていくということなのだろう。

 あの頃「強い女性」を象徴した濃いメイクも、時代と美容の変遷とともに着実にアップデートしている。つまり今のギャルたちは、「平成ギャル」とは一線を画す「ギャル2.0」なのだ。

 春には新年号になるが、新たな「ギャル2.0」カルチャーはまだしばらくは続くはずだ。韓国、Instagram、Tik Tok……現代若者に流行するコンテンツがどう変化していくのか、それによって今後のティーンズファッションの文化も変化していくのだろう。「新年号ギャル」がどう変化していくのか気になる。

(文・ミクニシオリ)