5年間の歩みを振り返る③【田口桃子の「死ぬまでモテたい」 第23回】

 さて前回までに、スマートフォンによって、女性とアダルトコンテンツの関わりがいかに密になってきたかということをお話ししました。

 今回は、どのようなコンテンツが求められているかということから、女性向けアダルトを見ていきたいと思います。

 女性がアダルトにアクセスすることのハードルはこの5年でぐっと下がり、それに伴いアダルトの映像それ自体に対して、女性も幾分か見慣れてくるようになってきました。

 SILK LABOが定義した丁寧なドラマ作品を好む女性ももちろん多いのですが、「それだけでは物足りない」「もっとこういうジャンルが見たい」という意思をもったユーザーが、特にこの2~3年は増えてきたように感じます。

 GIRL’S CHでの人気ジャンルも常に「イチャイチャ」と「無理やり」が人気を二分している状況です。

 オリジナルで制作している新作でも、「無理やり」「凌辱」といった以前よりハードな作品も売れるようになってきました。

 ハードな作品というと、「男性向けとどう違うの?」と言われることがありますが、企画内容自体で男性向けと女性向けをわけるのは難しいように思います。

 たとえばTシャツって同じ型だけど、色使いとか柄とかによって、女性が好むタイプと男性が好むタイプが分かれたりするし、男女どちらも着られたりします。

 AV作品もそういうところがあって、同じ企画でも出演者やシチュエーションなどによって、女性が好む内容になったり、男性が好む内容になったりします。

 なのでGIRL’S CHの最近の作品では、これまで男性向けの作品として作られた企画を、より女性が見やすくなるにはどうすればいいのか(たとえば出演者をイケメンにするとか、凌辱といえど互いの同意がある描写を入れるとか)というところを工夫しているので、ハード=男性的、というわけではないんですね。

 これがキーワードの3つめである、「作品内容のハード志向」です。

 この5年間で、女性ファンの見たいものが明確になり、さまざまなジャンルに興味を持ったり、自分の欲求を自身で認められるようになってきた方が増えたような印象です。

 そしてこの5年間を紐解く最後のキーワードは、GIRL’S CHの特徴でもあるのですが「男が責められるジャンルの開拓」です。

 これまでの女性向けAVでは、カッコいい、隙のない男性が描かれることが多かったのですが、そんなイケメンが感じてめちゃくちゃに取り乱すような姿を描いた作品の支持率が非常に高いのです。

 サイトオープン当初から「男子のくすぐりガマン顔いただきます」という企画や、2016年にシリーズを始めた「街角素人男子悶絶マッサージ」などをリリースしてきましたが、感じる男性を中心にした作品は、男性向けAVの世界ではありえませんでした。

 それらのような、これまでとは全く違った作品の方向性を打ち出せたことは、GIRL’S CHの5年間の歩みの中でも大きな一歩だと思います。

 今回はあくまでGIRL’S CHと女性向けアダルトコンテンツ、という視点でのお話でしたが、私たちが取り組んできたこと以外にも、他社さんでカップル向けAVが作られたり、男優さん自身がイベントを開催して女性ファンとの交流をしたりと、女性向けのアダルトコンテンツをめぐるさまざまな動きがありました。

 そして、私自身この5年間を通して一番強く感じることは、「女性ユーザー自身の変化」です。

 5年前はしきりに「性欲があることは恥ずかしいことじゃないよ」と言ってきましたが、今のユーザーの皆さんは、自分たちの好きなものに対して以前よりも自信をもっているように感じます。

 いかに罪悪感をなくすか?いかに周りの目を気にしないでコンテンツを楽しめる環境を作るか?がサイト立ち上げ時の第一の課題だったと認識していましたが(もちろん今でも忘れてはいけない部分です)、今ではそれを解決するだけでなく、その先にある「どんなものが欲しい」「どんなことをしたい」という部分まで考えることができるようになってきたなと。

 これからの5年間は、私たちがこれまで作ってきた「女性向け」の概念をぶち壊し、どんな女性でも、自分にあった性を満喫し、アダルトコンテンツを楽しめるように、より幅を広げていきたいなと思っています。

田口桃子(たぐち・ももこ)
GIRL'S CHプロデューサー。2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。
営業、マーケティング等の部署を経て、2012年よりGIRL'S CHの立ち上げに携わる。
以来現在まで、GIRL'S CHの現場リーダーとしてサイト運営をしつつ、オリジナル動画ではレポーター出演等をすることも。