【徳井健太の菩薩目線】第14回「2019年、俺はユンボで未来を開拓していく。」



誰かの役に立つって目線があると、きっと人生が豊かになっていると思う



 でもさ、真面目な話、ミュージシャンってすごいの。比較するのも変な話だけど、お笑い芸人は何度も同じネタを見せていたら飽きられる。ところが、ミュージシャンには世代を越えて語り継がれる名曲が存在する。同じことをしていても、人を喜ばすことができる。それに5万人の観客の前で演奏をしたら、おそらく、心の底から「ありがとう」って感じると思うんだけど、芸人が5万人の前で笑いを取ったら、「ありがとう」よりも「勝った」という自己陶酔感が間違いなく上回ると思う。

 そう考えると、芸人を続けていて、俺なんかは「何ができるんだ」って考える。しかも、俺たちはネタで笑いを取るようなタイプでもないから、誰かを喜ばせる、誰かが困っているときに、「実は何の役にも立たないんじゃないのか」って思うの。今でもギターは弾けるから、流しのようにさまざまな場所を巡って、歌で元気づけることもできるのかもしれない。でも、俺はもっと根本的な原動力として役に立つことはできないかなって考えた。それで、“重機を扱える人”になりたいって思った。

 災害大国の日本で、建設機械を動かすことができたら、いざってときに役に立てる。ユンボを動かせたら……って。そう思って、今年1月に、車両系建設機械の免許を取得した。取得するまでの流れについては、また今度話そうと思う。

 確かなことは、これで俺も何かの役に立てるかもしれない、という自信を少しだけ得ることができたということ。そういう自信ってさ、やっぱりキャリアとか自分が住んでいた世界とかあまり関係なくて、根本的な本質と向き合ったときに、はじめて身につまされるもの。俺みたいに40歳手前で気が付く人間もいるんだから、若いときに無理して「自信」「キャリア」なんてものに振り回されない方がいい。そんな奴はたいていカゴの中の鳥になってるよ。

 2019年以降は、俺がどう重機と関わっていくのか、自分でも楽しみ。吉村が、「どうも! 面白人間がやって参りましたッ!」ってハイテンションで現れる横で、俺はギター片手にユンボに乗って登場するかもしれない。自分の可能性を、俺はユンボで開拓していくんだ。

 俺さ、冗談抜きで、歌で誰かを励ましたりできる人って、超カッコいいと思うの。もし俺がもっと重機を扱えて誰かの役に立って、夜は酒場でギターを弾きながら誰かを応援できたら、そんな最高の人生ないよ。こんなにもワンカップが美味い人生はない。芸人? それも大好きだけど、人の役に立つことと、自分の職業がイコールの関係性であるとは限らない。誰かの役に立つって目線があると、きっと人生が豊かになっていると思うんだよね。