ジャーナリズム専攻ヒュー・ジャックマン、民主党の最有力候補から転落した男について報道陣に熱血解説

 映画『フロントランナー』来日記者会見が21日、都内にて行われ、主演のヒュー・ジャックマンが登壇した。

 1988年の米国大統領選でコロラド州から出馬し、民主党の大統領最有力候補とうたわれたゲイリー・ハートが、1つのスキャンダルの報道により転落していく3週間を描くサスペンスドラマ。

 1年ぶりの来日となったジャックマン。「おはようございまーす」と朗らかに挨拶すると「必ず、いま必要な議論を巻き起こす作品」と胸を張った。



 オファーを受けた理由について「理由は2つあって、まず監督のライトマンの作品が好きで一緒に仕事がしたかったこと。『JUNO/ジュノ』とか『サンキュー・スモーキング』とか『マイレージ、マイライフ』とか、彼の作品 が好きでずっと機会を待っていたんです。彼は白黒はっきりできない人物を描いていて、作品ごとに違うテーマに挑戦しながら感慨深い作品を作り上げてきた。次に、ストーリーにすごく引き込まれたということ。大統領最有力候補とされていた人物が転落するまでの3週間の物語。確かにこれまで僕が演じてきた役とは違っているし、本人もすごく知性的で頭が切れる人で、僕とはちょっと違っています(笑)。それにチャレンジしたかったということがあります」と語り「今の政治体制やいろいろなことについてアメリカだけでなく世界中の人にとって考えさせられる作品になっている」とコメント。

 さらに「僕は21歳で大学を卒業したんですが、そのとき専攻していたのはジャーナリズムなんです。もし俳優になっていなければ、みなさんの席に今、僕が座っていたかもしれない」と明かし「マスコミにも興味があって、ジャーナリストを非常にリスペクトしています」と報道陣に真摯な眼差しを向けた。



 存命の人物を演じるにあたり、かなりのリサーチをしたと語ったジャックマン。「まさにこの1987年という出来事は、政治とジャーナリズムのあり様を変えてしまった。今の時代の状況を生み出したターニングポイントだったと思います。この映画の中でもありますが、ジャーナリストが次期大統領候補にこういった記者会見の場で“あなたは不倫をしていますか?”と質問をするなんてそれまではあり得ないことでした。ジャーナリストが彼を待ち伏せして路上で朝の2時に直撃するなんてこともあり得なかった。そういうことが初めて起きたときの物語なんです」と、当時の状況やハートについて説明。さらに「彼は当時も今も理想主義者で、若い人をインスパイアする技を持っており、若い人たちに支持されてケネディの再来ではないかと言われていた。本当に変革ができる政治家だと思われていたんです。彼が政治家として特に優れていたところは10年、20年先を見ていたということ。彼は、スティーブ・ジョブスがガレージでコンピューターを作り始めたころにそのガレージで一緒にランチをしているんです。ジョブスとの会話の中で、これからはコンピューターの時代だからすべての教室にコンピューターを入れよう、ということも話している。83年には“アメリカはあまりにも石油にこだわりすぎている、これは中東での戦争になりかねない”ということも発言しているし、84年にはゴルバチョフとも会っていて、レーガンがどんどん宇宙開発戦争を進めているけれど冷戦自体も終わっているし、ロシアの変化に伴い中東に過激派が生まれると予測しています。2000年にはテロの襲撃を受けると警告もしている。もし彼が大統領になっていたら、より良い世界を築くことができたのでは、と思います」と熱く語った。

 映画『フロントランナー』は2月1日より全国公開。