ひふみんの格言「滝も止める」の意味とは?
滝は止めたが試合には負ける…。しかし言いたいことはそういうことではなかった
「ひふみん」の愛称で知られる将棋の加藤一二三・九段が1月23日に新刊『ひふみの言葉』を発表し、東京都内で会見を行った。
同書は加藤九段がこれまでの人生の中で学び、実践してきたことを本人の毛筆で書き下ろしたもの。人生の教訓ともいえる60の言葉が、それに合わせた撮り下ろしの写真と本人の解説付きで並んでいる。
「人生にはいろいろな勝ちがある」といった、勝負の世界で長く生きてきた者ならではの言葉があると思えば「やっぱり猫がすき」といった解説と合わせて読まねば凡人には理解しがたいものまで、加藤九段ならではの独特のセンスの言葉が並んでいる。
この日の会見では冒頭、お気に入りの言葉として「勝つためなら滝も止める」という言葉を上げた。
この言葉の意味について加藤九段は「大きな対局の時に旅館とかホテルで、前日に下見をする。その時に滝が流れているとそれを止めてもらうことがよくある。それは試合の前の日にあらかじめ問題を排除するという考えで滝を止めている。ただ今まで3回くらいあるんだけど、なぜか3回とも負けている」というエピソードを明かす。
また、これに付随する話として「我々は試合の前の日に部屋を割り当てられるが、部屋に入った時に、川に面している部屋だったりするとすぐに替えてもらう。それは3回あったが3戦全勝だった」とも。
こう聞くと「滝を止める」より「部屋を替える」のほうがしっくりくるような気もするが、加藤九段曰く「試合の前に何か問題が起こることが予測できたら、それは避けましょう、ということ」とのことだった。
羽生善治はまだまだやれる。藤井聡太はまだ秀才
将棋界の話については、昨年末に竜王戦で敗れ、無冠となった羽生善治九段については「大山康晴先生は48歳で名人を失冠してタイトルを全部失った。でもその後にタイトルをいくつか取り、名人戦にも出た。大山先生の例からいえば羽生さんもまだまだ。お元気だし、将棋の内容も最高のレベルに達している。今、タイトル数が99だが、近い将来100は実現すると思っている」と話し、「お体に気を付けて。我々は頭は衰えませんから、あとは体。ばりばり後輩を負かしてやってください」とエールを送った。
藤井聡太七段については「藤井さんは“肉を切らせて骨を断つ”という極めて厳しい将棋が特徴。それは唯一無二のもの。大山名人とか私とか羽生さんはもうちょっと柔軟、柔らかい。聡太さんは厳しい。まだ16歳なのに基礎が出来上がっている。藤井さんは2月5日の順位戦に勝ったらC1からB2に上がる可能性がある。2月5日は注目」と話す。しかし「私は18歳でA級の八段になった。私の記録を抜くのは非常に難しいといわれている。でも藤井さんにはこのまま成長してもらって、二十歳前後でA級の八段とか名人戦の桧舞台に出ることができれば天才といえる。今のところはまだ秀才」とやや厳しめの言葉も出たが、「学業との両立が大変だと思うが、学校生活との両立をバランスよくこなしてほしい」とこちらも最後はエールを送った。
引退後の自らについては「芸能界に入って、今まで日本の有名な司会者やタレントさんとはほとんど共演している。唯一していないのはタモリさんだけ」とタモリにラブコール。
ただし『タモリ倶楽部』は見たことがないようで、「NHKの『ブラタモリ』はよく見ています」と同番組への出演に意欲を見せた。