二ツ目さん数珠つなぎ【第6回】初音家左吉「寄席に出続けられれば幸せ」
落語ブームといわれて早ン十年。ブームはちょっと下火に?と思われているが、とんでもない。その頃まだ落語家の卵だった二ツ目さんが、現在の落語界を盛り上げている。そんなイキのいい元気な二ツ目さんを数珠つなぎでご紹介! 第6回は柳家喬の字さんからの紹介で、初音家左吉さんが登場!
ビシッと決まったオールバックが印象的な初音家左吉。本人は「昔の噺家の写真を見ても普通にオールバックの師匠もいますし…。前座に入った時に周りがみんな坊主だったから、自分はこれでいいのかなと思って」といたってクール。落語に興味を持ったきっかけについても淡々と語る。
「子どものころから落語好き…というワケではなく、たまたま大学の授業で “伝統芸能を学ぶ”みたいなコマを取ったのがきっかけです。その授業の先生が“寄席に行け”って言ったので、末廣亭に行ってみたのが始まり。街の中にいきなりあの建物が現れて、中に入ってみるとそれにも増してかなり独特な空間。そこで落語を聞いた時に、こういうのをやってみるのも面白いかも知れないと思ったんです」
大学の授業で…とは言うが、働きながら大学に入学したという。
「理学療法士の資格を持っていて、最初は病院で働いていました。その後、法政大学の人間環境学部に入学し、しばらくして老人ホームに移りました。大学は昼夜開講している学部だったので、夜とか休みの日の昼に通っていたんですけど、たまたま同じ学部に落語研究会の人がいて、人数が少なくて困っているから名前を貸してくれと。名前ぐらいならとオッケーしたら、半年ぐらいして学祭を手伝ってくれと頼まれたんです。働きながら通ってるから無理だと言ったんですが、相手の必死の説得に学祭を手伝うはめに。そこからなんかいろんな事が始まったというか…。同じころ、リハビリの仕事で治療していたお年寄りに、この前落語を聞きに行ったんですよみたい話をすると、私も若い時結構行きましたよ。なんて会話もあって。ちょっとずつ落語に近づいていくわけです」
何はともあれ、29歳で師匠、初音家左橋に入門。
「学校の授業で講師として落語についていろいろ話をしてくれたり、実際に落語をやってくれたりしたのがうちの師匠でした。落語研究会の縁で授業の手伝いをやっている時に面識ができて、そこから、だんだんと師匠の落語を聞きに寄席に通うようになったわけです。そんな事をしているうちに、入門するなら師匠かなと思うようになりました。人情噺とか、すごいなーと感動しましたね」