髙田延彦ロングインタビュー「統括本部長から素顔の髙田延彦へ。その理由と思い」

(撮影・上村彩夏)
これからは統括本部長じゃなく“高田延彦”として発言していく

 それはなにかきっかけが?

「RIZINの旗揚げ時、統括本部長の肩書をつけることはなんとなく納得できたんですよ。でも大晦日の太鼓については最初、私は“RIZINに私の太鼓はいらねえだろう”って思っていたんです。でも一発目はPRIDEの匂いを引きずっていた。途切れた時間を抱えたままこの10年近く、格闘技から離れちゃった人もいるし、やるなら見に行こうって人もいるだろうし。それを過去の匂いを出すことで失った時間をリンクさせる、今のこの瞬間に、クッと引っ張り出す、さいたまの空間に引き戻す役割としては太鼓が必要なんじゃんないかという結論に至った。じゃあ“この2015年の一発だけだったら、やったるか”と思って気持ちよくやらせてもらった。でも、やる以上はもう、“53歳だけど、こんなカラダなんだぜ”というのを見せてやろうと思って、太鼓の練習も含めてしっかり仕上げたんです。でも2016年も2017年も“今年もやって” “やっぱり今年も必要だ”とズルズルべったんになってしまった。そうなると自分では必要じゃないと思っていても、その考えに迷いが出てくるわけ。必要という意見が作り手の中に多数出てくると、“俺の言っていることは違うのか? 単なるわがままなのか?”って。やりたくないとかではなくて、新しいものを作っていくのだから脱皮しないといけない。新しいカラーを出して、オリジナリティーのあるものを作らないといけない。いつまでも高田延彦がふんどしで太鼓を叩いているのはいかがなものかと。これは私の感性です。リングに上がる人たちもガラッと変わっている。浅倉カンナちゃんなんて、1997年に私がヒクソンと戦った翌日の10月12日に生まれている。そんな子が出場しているリングで俺がふんどしやってる場合じゃないのよ。

 でも“なきゃダメだ。これはもう大晦日の一つの文化なんだ”と来るわけなんですよ。“そうなの? 俺は間違ってるの? 俺の感性は?”。結局、私が譲って3年やったんだけど、さすがに4年目は100%やらないと決心して辞退させてもらったという顛末なんです。もちろん、やっていた時は3回ともやれることは精一杯やりました」

 お酒を抜いたり食事制限はきつかったと番組では言っていましたね。

「すいません。そこはちょっと自虐的に電波用にデフォルメさせてもらいました(笑)。“酒を飲めないのはキツイ”とは言ったけど、あそこでお酒を抜くのは実は体にいい(笑)。普段なら年末に向かって酒の量が増えて12月に肝臓がパンパンになるんだけど、それが綺麗になるからよかった。いわば毒抜きですね(笑)」

 では今後はどういった活動を?

「肩書きを外す最大の理由は、自分らしく、自分が持つ情報をRIZIN愛を持ってファンファースト、選手ファーストで発言していくため。今以上に格闘技界が盛り上がるための力になりたいなという思いでやっていきます。

 だからこれからは私が感じたことをツイッターとかではなく、この口で吐いていくと思う。そこは時には賛否両論いろんな反応があるかもしれないし選手にとっては耳が痛いこともあるかもしれない。RIZINにとっては“よけいなことを言ってくれたな”ということもあるかもしれない。でも統括本部長じゃなくて、“高田延彦”として、格闘技界全体をみて発言したいことがあれば当然のことながら発言することになっていくと思う」

 決して落としめるのが目的ではなく、日本の格闘技界の発展を願い、それがRIZINの発展にもつながるという考えが根底にあってのことですね。

「仕事仲間にも友達にも息子にも“よくなってもらいたい”からこそ、敢えて言いたくないことをいう時ってありますよね。こんなやつどうでもいいと思ったら言わないし、言い方も変わってくる。これからもファンや選手、そして組織やスタッフのことも、大事にし、もっともっとステージを上げるために、こうしてほしいとか、したほうがいいんじゃないのということを口に出していくことになると思う。それは見えない線があるとしたら、アウトサイドという立ち位置だからこそ言えることだと思うんです。…僕、何か、おかしなこと言ってます?(笑)」