【インタビュー】『夫のちんぽが入らない』から『詐欺の子』まで中村蒼が「挑む」理由
現在、配信中の連続ドラマ『夫のちんぽが入らない』では“入らない”ために妻とすれ違い、苦悩する夫という役を、先月放送されたNHKスペシャル『詐欺の子』では実話をもとに“オレオレ詐欺”グループのリーダーを演じ、注目を集めた中村蒼。どんな難しい役どころにも意欲的に挑み続けてきた中村。「嘘のない芝居をしたい」と語る中村が、挑み続ける理由とは。
中村蒼(ヘアメイク・松本和也(W) スタイリスト・荒木大輔 撮影・蔦野裕)
タイトルは衝撃だけど…ドラマ“おとちん”夫婦を尊敬
「やっぱり最初はタイトルに衝撃を受けましたね。ああ、親が心配する…と思いました(笑)」
出演した中村蒼自身も苦笑する、衝撃的なタイトルの連続ドラマ『夫のちんぽが入らない』が現在、WEB動画サービスにて配信中。原作は主婦こだまが自身の実体験をもとにつづった自伝的短編小説。一度目にしたら忘れられないインパクト満点のタイトルと、共感せずにはいられない物語で、ネットでも大きな話題を呼び「Yahoo!検索大賞2017・2018」小説部門賞を2年連続受賞。
「僕は最初、原作を知らなかったのでまずタイトルにびっくりしたんですけど、中身はとても繊細で共感できる夫婦の物語なんです。特殊な事情を抱える夫婦が、世間が“普通”とか“当たり前”としていることとの違いに苦しみながらも、自分たちなりの答えを導き出していく姿を丁寧に描いています。その事情のために、すごく遠回りしてしまうけれど、そのおかげで普通なら当たり前、と素通りしてしまうような大切なことに気づくことができた。そんな夫婦の物語になっていて、見ていてすごく勇気づけられる作品だと思います」
中村が演じるのは夫・渡辺研一。妻・久美子は、よるドラ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』の石橋菜津美。監督は『百万円と苦虫女』、『ふがいない僕は空を見た』のタナダユキ。
「僕から見ると、すごく尊敬できる2人なんです。僕が演じた研一は相手を引っ張っていくタイプで、常に先を見据えてより良い選択をするために行動する姿も尊敬できますし、久美子と研一がいろいろな選択肢があるなかで最終的には自分たちの“夫婦の形”を見つけて一緒にいることを選んだ、そういう姿もすごく尊敬できるんです」
2人の間に発生した“入らない”問題はレアな状況とはいえ、描かれているのは相手を思うがゆえにすれ違い、傷つき、それを乗り越えて自分たちらしさを手に入れる夫婦の、普遍的な物語なのだ。
「久美子役の石橋さんも僕もグイグイいくタイプじゃないので(笑)、普段はたわいのない話をしたり、撮影しながら距離を縮めていきました。今回、作品のテーマもあって女性スタッフさんも多くて、ごくごく穏やかな現場でしたね。タナダ監督とご一緒したのは本作が2回目なんですが、監督の撮影方法ってすごく潔くて、長回しをしたり1カットでOK出したり、迷いが無いんです。現場はとても穏やかに進んでいきました。監督から芝居について何も言われなさ過ぎて、大丈夫かなと思ったくらいです(笑)。物語も基本的に、日常の会話や思いを丁寧に淡々と描いていくので、タイトルの印象ほど劇的ではないんですけど、それでも後半部分で、ケンカして家出した研一と久美子が再会してお互いの本音や今まで言えなかったことをぶつけ合うシーンは、やっと言えた…という感じでスッキリするというか、ドラマの醍醐味を感じましたね」