血飛沫無し!?「多十郎殉愛記」に見る「現代の時代劇」【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 今日から「令和」ですね。

 皆さんは昨日から今日にかけていろいろイベントとか、みんなで集まってなんかやったりしていたんでしょうか?

 僕は「平成の仕事は平成のうちに」ということで、しっかりお仕事していました。

 今日からは令和初の仕事に向けて頑張ります…とちょっと世間に合わせてみました。

 さて、今週は鑑賞記をやります。

 あ、令和になってもお悩みは募集中ですよ!
黒田勇樹
 高良健吾さん主演、中島貞夫監督のアクション時代活劇映画「多十郎殉愛記」を観てきました。

「ラスト30分、壮絶な死闘に泣け!」というキャッチコピーの通り、単純明快なストーリーに王道の殺陣。とにかく高良さん演じる主演の多十郎という浪人が強くてカッコイイ映画なのですが…

 冒頭のアクションシーン。あれ?なんだろう、ワクワクしない。

 その違和感の正体は、次のシーンで写された美しい自然の風景で明らかになりました。

「画質が良すぎるんだ!!」

 昔の時代劇って全てフィルムで撮られているので、ある程度画質が良くなかったりシャープがかかってたり「抽象的」とも言える映像なんですよね。

「見えていないところを心で補足して見ているから、リアルに見える」とでもいうのでしょうか?

 下手くそな漫画を見るよりも美しい言葉で綴られた小説の方がリアルな景色が脳内に浮かんでくる。

 映像も同じで、見えすぎちゃってると逆に没入出来ないところがあるんですよね。

 黒澤明監督の「椿三十郎」辺りから映画界の時代劇は血飛沫ドバドバが主流なんですが、今作はテレビ時代劇な、様式的な殺陣なので、ほとんどのアクションで血も出ないし服も破けない。

 画があまりにも鮮明すぎると刃物を振り回しているというよりアルミ巻いた棒で叩き合っている様にしか見えないんですよね。

 カツラなんかもカツラにしか見えなかったけど、多十郎は浪人で総髪(前髪を落としていない)だったから、ここだけは救われました。

「美女と野獣」の野獣や「アイアンマン」のアイアンマンが、まるで目の前にいるかのように、描かれる特殊メイクとCGの技術を浴びている現代人には、同じ画質で、同じ画面の大きさで、飛び散る血飛沫を脳内補完するのは難しい作業かもしれません。

 アクションもカッコいいし、殺陣も王道の「時代劇名場面集」の様な応報で面白いんですがちょっともったいなかったな。

 あ、でも画質が良かったのでヒロイン役の多部未華子ちゃんの演技やうなじ、ラブシーンでの指先や太ももが堪能できたので僕の中では全部チャラです。

 高良ファン、多部ファン、時代劇ファン、そして福本清三先生ファンには必見の映画でした!
黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23

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新作、執筆中!お楽しみに!

 


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