使う・貯める・運用・管理 お金とうまく付き合う7つのポイント

新緑のさわやかな風とともに町を行く新社会人たち。2019年度に新社会人になったみなさんは、お金についてどんな意識を持っているでしょうか。初任給の使い道は? ボーナスの理想の額は? 学生時代と打って変わったお金の余裕が生まれる期待から、あれこれとやりたいこと・買いたいものを考えているのではないでしょうか。

でも旅行や買い物をする前に、そのお金の使い道をもう少し長い目で考えてみませんか? 社会人1年目は上手なお金の使い道を学ぶ大切なファーストステップ。計画性のない買い物や、毎日のカフェ通い、仕事終わりに必ず立ち寄るコンビニなど、小さな浪費の積み重ねが大きな散財になりかねません。

また、複数の銀行の使い分けや、クレジットカードの取得、保険の契約など、先々を見据えたお金の選択肢もきちんと学んでおきたいところです。

そこで今回は、先々の明るい将来のために、新社会人がお金とうまく付き合う7つのポイントをご紹介します。

1.貯金はロマン! バイト代感覚のお金の使い方を卒業しよう!



学生時代に稼いだアルバイト代を、みなさんはどんなことに使いましたか? 旅行、ファッション、ゲームやレジャーなど、おおよそ好きに使った方が多いと思います。では新社会人たちは初任給もアルバイト代と同じように使うのかというと、新社会人は決してアルバイト代の延長として初任給を使っていないのです。

あるクレジットカード会社は、新社会人たちの初任給の使い道ランキングを調査しました。

第1位 貯金
第2位 親や家族にごちそう or プレゼント
第3位 趣味に使う

※JACCS 2015年度新社会人のお金に関する意識調査
https://www.jaccs.co.jp/lesson/research/0004/
※複数回答 対象者数:200人

「貯金する」と答えた人がダントツのトップです。第2位の「親や家族にごちそう or プレゼント」というのも実に微笑ましい回答で、新社会人たちの心優しさや思いやりを感じます。「趣味」と答えた人の数が第3位になり、多くの新社会人がアルバイト代の延長として初任給を使っていないことがわかるアンケート結果になりました。

会社勤めの給料は、これからも長く支給されるものです。お金を貯められない人の多くは、目先のものにお金を使い、先々のために必要な目標や計画を立てていません。初任給を使う前に、ちょっと一度考えてみませんか。いま買おうとしているものは、本当に必要なのか? と。

お金とは不思議なもので、手元に数万円しかなければ、欲しいものややりたいことがあっても、「どうせ無理だ」ときっぱり諦めてしまいます。

しかし50万円、100万円というお金が手元にあったら、欲しいもの、やりたいことがどんどん膨らんでいきます。貯金はロマンです。漠然と考えていた夢や希望が、まとまった貯金額が出来上がると、リアルなものに見えてくるのです。


2.ケチらない節約術を身に着けよう



いざ貯金をはじめるとして、真っ先に思いつくのはなんといっても「節約」。毎日払っている支出を切り詰め、毎日のカフェ通いをやめて缶コーヒーにしたり、みんながランチへ向かうとき、ひとりでコンビニのおにぎりを外でかじったり・・・。そういう節約はやめましょう。新社会人がやるべき節約は、ケチらない節約術です。

あなたは社会人です。上司や先輩、同僚がいます。行きすぎた節約は周囲に「あいつケチだから」と思われるだけです。吝嗇が過ぎると、遊びの誘いやちょっとした仕事も頼みづらくさせ、周囲とのコミュニケーションに摩擦が生じるおそれがあります。仕事を頼みにくい、遊びに誘いにくい仲間というものは、そばにいて気持ちのいい相手ではありません。出世に響きます。

みんなと行くランチは楽しく、何気ない情報の交換場所でもあります。同僚と「きょうどこで食べる?」と相談したり、何かにつけて「よっしゃ、おれは昼飯を賭けるぞ」と強気な上司もいたり、顔見知りになった店のおやじさんやおばさんと交わす会話など、ランチ中のコミュニケーションはビジネスヒントがたくさん詰まっています。あの本田宗一郎は必ず社員食堂で社員たちと一緒に食膳を囲み、社員たちの小さな不満や大きな野心を吸い上げ、その情報をビジネスに活かしていました。

カフェ通いの代わりに缶コーヒー、というのもいいですが、社会人なら思い切ってマイタンブラーを買いましょう。ウォール街のスマートなビジネスマンのように、チタン製のマイタンブラー片手に出勤するのです。中身は家で淹れたドリップコーヒー。これで味とスタイルにこだわった節約ができます。決してケチには見えません。

作家の中島らもは、「出すものは舌でもイヤ、貰うものだったら病気でもいい」と、ケチを定義しました。そんなことはない、そんなにわたしはケチではない、と思うことができれば、あなたはきっとケチ体質を改善し、ケチらない節約術を実践できるでしょう。


3.入社初年度は貯金改革元年 適正な貯金金額をはじき出そう



貯金には計画性が必要です。「毎月、残った給料を貯金に回そう」と決めても、月末にお金が残ることは、なぜかほとんどありません。人間は意志の弱い生き物です。お金は手元にあればある分だけ使ってしまうのです。貯金箱を使うのもいいですが、1万円以上貯まると、いつの間にかその貯金箱の中身を第2の財布のように当てにし始め、いつまで経っても1万円以上貯まりません。人間は意志の弱い生き物なのです。

まとまった金額の貯金を作るには、3つの「貯金改革」が必要です。

まず1番目の貯金改革として、適正な貯金金額を自分ではじき出すことです。貯金は未来に使うお金であり、将来の自分に手を差し伸べるタイムカプセルのようなものです。いくら必要になるのか、いくら貯めればいいのか、未来にいる自分しかわかりません。ですが、未来の自分はあなたです! あなた以外はあなたじゃないのです! あなたが自分で適正な貯金金額を決めるのです!

「そんなの決められない!」という人は、とりあえずフツーに貯金をはじめてみましょう。結果オーライ、貯金は気楽にやるのが一番です。若手社会人の場合、理想的な毎月の貯金額は手取りの10%と言われていますが、5,000円単位の切りのいい数字がいいでしょう。貯金というゲームは不思議なもので、5万円貯めると10万円貯めたくなり、次第に20万円、30万円と、いい感じにエスカレートしていきます。

第2の貯金改革は、貯金専用の銀行口座を作ることです。この貯金銀行は、貯金箱のようにいつでもフタを開けられる財布ではなく、門番のいる金庫のような存在です。支店が職場や自宅に近い、広告をよく目にするなど、自分の視界に入りやすい銀行だとベターです。その貯金銀行を目にするたび「あ、貯金しなきゃ」とか、「もう〇〇万円貯まったぞ」など、モチベーションを持続させる効果が期待できます。

第3の貯金改革は、給料日当日に必ず貯金の振り込みをすることを鉄の掟と定めましょう。月末まで貯金を放置すると、絶対にその貯金予定のお金を使ってしまいます。人間は意志の弱い生き物ですが、あなたは意志の強い、カッコいい貯金のできる人物のはずです。

こうして貯金額が増えていくにつれ、本当に適正な貯金金額が見えてくるはずです。いきなり老後のことを考える貯金は、どこか他人事のように思えるものです。貯金銀行を使って給料の上手な管理ができれば、貯金額の増加とともに、漠然とした貯金から、適正な金額を決めた具体的な貯金へと必ずステップアップできるはずです。


4. クレジットカードを作っても、初年度はローンを組まない



クレジットカードは便利です。現金を持たなくても好きなものが買えます。外国でもネット上でもどこでも使える夢のようなカードです。夢のようなカードですが、しかし、計画性のない利用を続ければ、夢は一転して悪夢へと姿を変えます。利用には自己管理の徹底と充分な注意が必要です。

多くの新社会人がクレジットカードを持つのが初めてになると思います。言うなれば初心者です。クレジットカード経験値の少ない新社会人がいきなり大きな買い物でローンを組むのは、RPGゲームでレベルの低いままボス敵に挑むような蛮勇に等しい行為です。できればやめておきましょう。

クレジットカードの限度額は、グレードの低いカードでも月に約30万円ほどが使えるよう設定されています。これは2018年度の日本の大卒初任給の平均額である20万6,333円をはるかに上回る金額です。新社会人にとって、クレジットカードの限度額はまったく身の丈に合っていないと肝に銘じるべきです。

※2018年度 大卒初任給平均額 20万6,333円 産労総合研究所調べ
https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/chinginseido/shoninkyu/pr1807.html

クレジットカードは使用をはじめて2年目、3年目になってようやく、身の丈に合った使い方ができるようになります。それまでは大きな買い物はボーナスの時だけに控えるなど、支出の節制が必要です。ここはグッと我慢しましょう。



5 医療保険・生命保険は若く元気なときが最も掛け金が安い



新社会人たちが初任給を「貯金」にまわす理由として多く挙げるのが「いざというときのために」というものでした。では、いざというときの「いざ」とは、何時なんどきのことを指すのでしょうか。最も想像しやすいのは、ケガや病気といった突然の出来事に見舞われるケースです。

ケガや病気はある日突然やってくるものです。心配ばかりしているのも体に悪いですが、まったく不安がないという楽観論だけでは、いざケガや病気に見舞われたとき、オタオタしてしまうものです。

そういうときのために医療保険や生命保険というものがあります。医療保険や生命保険は、健康な若い人であればあるほど疾病などのリスクが低いと見做されるため、同じサービス内容でも掛け金が安く設定されています。いざというときのための備えとして、医療保険や生命保険への加入は、賢い選択肢のひとつと言っていいでしょう。

他にも、自動車の運転をする人なら自動車保険への加入や、ペットを飼う人ならペット保険への加入など、不安の芽を保険加入でカバーするのがいいでしょう。民間の保険商品の中には掛け捨てではない貯蓄タイプの保険もあるので、積み立ての資産運用代わりに使うこともできます。自分に入れる保険があるのか、窓口で相談するのがいいでしょう。


6.銀行は2つ以上の口座を持とう メガバンクとネット銀行の使い分け



給料の振り込まれるあなたのメインバンクのほかに、貯金銀行の口座を持つことを先ほど紹介しましたが、もうひとつ持つと便利な銀行口座があります。ネット銀行の口座です。

最近ではAmazonや楽天など、アプリを使ったインターネット通販を利用して買い物をする機会が増えてきました。クレジットカードも使えますが、新社会人がクレジットカードを使うのは、現金を出すとき以上に節制が求められるものです。

通販利用時の現金振り込みの場合、手数料が400円~1,000円ほどかかることがあります。もったいないと思いますが、ここがケチらない節約ポイントのひとつです。ネット銀行なら決済料金が安く済むケースが多いからです。場合によっては無料のケースも少なくありません。

ちなみに、ネット決済用のネット銀行を貯金銀行として利用するのはおすすめできません。小銭を貯める貯金箱が第2の財布なら、ネット銀行は第3の財布です。入金と振り込みの頻度が高く、あなたの大切な貯金を守る藩屏としては役不足の面があると言っていいでしょう。

給料の振り込まれるメインバンク、貯金を貯める貯金銀行、ネット決済を円滑にするネット銀行。この3つの銀行口座を持てば安心です。大いに活用しましよう。


7.キャッシュレスの波に乗って現金主義から脱却



手数料のムダや小銭が溜まるわずらわしさから解放してくれるのがキャッシュレスサービスです。現金を持ち歩くリスクも抑えられ、利用できる店舗もどんどん増えてきています。

中にはアプリの活用で多くのポイントが貯まったり、割引特典が受けられるキャッシュレスサービスもあります。これらを大いに活用すれば、消費税分の8%か、理想的な貯金額の目安である10%が、ポイントという形で買い物ごとに集めることができます。

給料以上の限度額が使えてしまうクレジットカードと異なり、多くのキャッシュレスサービスは額面のプール制で、自分が引き替えた額までしか使うことができません。ついついコンビニを使い過ぎてしまう新社会人の方なら、コンビニの利用額をあらかじめ決め、その予定利用額ぶんをすべてキャッシュレスサービスで行えば、節約の良い癖が身につくかもしれません。

節約で貯金を貯め、買い物上手になってポイントを貯める。キャッシュレスサービスの利用は、ケチらない節約術と貯金改革を一挙に断行できるいい機会になるかもしれません。近年では利用できるアプリやサービスの種類も増えてきましたが、集めるポイントを1種類に絞れば、より多くのポイントが貯まり、お得な買い物をタダで済ませるようなチャンスが増えてくるかもしれません。これもぜひ活用したいですね。

いかがでしたか? 新社会人向けの上手なお金の使い方をご紹介してきましたが、書いている筆者は「私もこうしとけばよかった・・・トホホ」と思いながら書いていた部分がたくさんありました(涙)。後悔先に立たず、です。初任給でパーッとやるのもいいですが、じっくり初任給の使い方を考えてみるのもいいのでは? ぜひ参考にしてみてください。