オダギリジョー「いいところだけ伝えて!」 初めての長編監督作『ある船頭の話』が完成



 映画は、明治と大正のはざま、時代の移り変わりに直面した山あいの村を舞台に、「本当に人間らしい生き方とは何か」を問うもの。脚本はオダギリが書き下ろしている。

 主人公の船頭・トイチを演じた柄本は撮影について「大変でしたね、朝から晩まで。毎日毎日、なんでこんなに疲れるんだろうと思ったら、改めて脚本を読んだらほとんど全シーン出てる。それで疲れたのかな(笑)。暑いし、逃げ場所がないし」。うーんと唸ると、オダギリは視線をそらし、恐縮していた。

 この日登壇した3名は言うまでもないが、伊原剛志、浅野忠信、村上淳、蒼井優、笹野高史、草笛光子、細野晴臣、永瀬正敏、橋爪功と、出演キャストはかなり豪華。キャスティングについて、オダギリは「……事務所を通したと思います」とまずは笑い、「好きな人に出てもらった」。

 撮影監督は『花様年華』や『欲望の翼』『恋する惑星』などウォン・カーウァイ監督や、チャン・イーモウ監督、M・ナイト・シャマラン監督、ジム・ジャームッシュ監督などとの仕事で知られ、自ら監督もするクリストファー・ドイル。衣装デザインはワダエミ、音楽監督はティグラン・ハマシアンが担当する。


 映画は、8月28日に開幕する第76回ヴェネツィア国際映画祭の「ヴェニス・デイズ」に正式出品される。この部門は、革新性、探求心、オリジナリティ、インディペンデント精神などに優れているハイクオリティ作品な作品を紹介することを目的としているという。

「身が引き締まりますね」と、オダギリ。「イタリアの監督協会が選んでくれている部門で、それが何ともうれしい。商業性やエンターテインメント性に目を向けたほうじゃなく、作家性の部門。“俳優・オダギリジョー”というフィルターがない形で選出していただけたんだと思うとすごくうれしいですね」と喜んだ。

 柄本も「大変光栄なこと。あちらの方にどういうふうに伝わるのかが楽しみ」と話した。



 イベントの最後にオダギリは「なかなか挑戦的なことをたくさんやっていて、見づらい映画なのかもしれません。正直なところ、それに挑戦したかったというのがありましたし、それをおもしろがってくれたキャストのかたやスタッフのばかりだった。いろんなタイプの映画があるべきだし、今の流行りや日本の映画が主流みたいなものではないと思う。どうとらえていただけるかはそれぞれだと思いますけれど、頑張って見てみてください」と、メッセージ。

 また、スクリーンの大きさに合わせて画作りや編集をし、サウンドも場所に合わせて調整しているとし、「この作品の良さは劇場で観ないとまったく伝わらない。DVDを待とうとか、タブレットで観ようとかは……」と強調。「気に入っていただいて、薦めていただけるなら、劇場で観なさいというのを言わないともったいない。それをお伝えください」と、アピールした。

もったいない!
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