【徳井健太の菩薩目線】第40回 欅坂46のドーム公演を目撃した日は「BiSHドハマり芸人」収録日だった
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第40回目は、欅坂46のドーム公演について独自の梵鐘を鳴らす――。
9月19日、欅坂46の東京ドーム公演最終日(2日目)に行ってきた。事前の段階での欅坂46に対する俺の印象は、第38回「欅坂46は、ジョン・レノンのような宗教性を持つからこそハマる」 を参照していただきたい。
同じ日、俺は『アメトーーク!』の「BiSHドハマり芸人」(10月10日放送予定)の収録を控えていた。欅坂46のドーム公演を見てからのBiSHドハマり芸人。正気でなんていられない。欅坂46のドーム公演を目撃した人なら分かると思う。俺は、ガンギマリでテレビ朝日に突撃した状態だった。何も所持していないけど、何かしらの検査をされたら“黒”と言われるくらいアグレッシブな抜け殻になっていた。
さらに収録後は、 BiSHドハマり芸人たちと酒を交わし、彼らと別れた深夜のタクシーの中では、50代と思しき運転手から“最高のお笑い論”をかまされた。眠りについて目が覚めたら、また同じ一日が始まってもいいと思えるくらい幸せな一日だった。
今月は、「欅坂46のドーム公演」(10日更新)、「BiSHドハマり芸人の収録」(20日更新)、「深夜のタクシー」(30日更新)の“秋の三部作”としてお届けしたいと思う――。すべて初秋の同日に起こった出来事なんだ。
俺の杞憂を全壊させるほどの超満員。欅坂46のドーム公演は、救世主の登場を今か今かと待ちわびるかのように、緑色のサイリウムが雲海のようにドームを覆っていた。世の中で生きていくにあたって、否定することを肯定してくれる神の降臨を待つ、そんな気分だった。彼女たちが登場した瞬間、富士山のご来光のような光が降り注いだことは言うまでもない。古来から、なぜ山岳信仰が必要とされてきたのか、俺はちょっと分かったよね。
メンバーに恋をしている人もいれば、社会にNOを叩きつける彼女たちの姿勢に共感している人もいるだろう。欅坂46のアナーキーな世界観に、一緒に拳を振り上げたい10代20代のファン。そして、「ああいう風になりたかった」、「あんな風に生きてみたかった」なんて具合に、諦観と憧憬が絡み合ってしまう俺のような30代、40代のファン。思いを寄せる、託す動機がこれほどまでにグラデーション豊かなグループも珍しいと思う。
ライブは、非の打ちどころがなかった。前日のアンコールで、1年9ヶ月ぶりに「不協和音」を“解禁” したこともあって、終幕に向けてボルテージは上がりっぱなし。アンコールのラスト、事前の情報通り「不協和音」が始まり、名フレーズ「僕は嫌だ」の生音を聞いた瞬間、鼓膜から三半規管まで、耳の機能という機能のすべてがぶっ壊れた。この日のために、「耳って生えていたんだな」って思ったくらいだった。
また無慈悲な日常に戻るのか、さぁ帰ろう――。でも、一向にドームは明転しない。ざわめきだすドームの観衆。不気味に妖しく光り続ける欅坂のマーク。たった一人で平手友梨奈が登場し、ソロ曲「角を曲がる」を歌い始めたとき、イエス・キリストってこんな感じで復活したんじゃないかなって想像してしまった。アンコールが終わってダブルアンコールが始まるまでの復活の間を、俺は一生忘れない。
恐るべきは、平手友梨奈という存在の特別感だよね。きっとメンバーの中には、「なんで彼女だけ」って思う子もいると思う。卒業公演ならまだしも、欅坂46の東京ドーム公演だもの。平手さんではない他のメンバーを推しているファンだってたくさんいる。でも、正も負も全部背負って、たった一人で歌い上げた彼女の姿は、カリスマそのものだった。歌い終わって、一言、「ありがとうございました」と伝えると、まるでろうそくの炎を消したかのように真っ暗になった。
徐々に明転するドームの中で、俺は「どう“BiSHドハマり芸人”のテンションにもっていけばいいのか」、気が狂いそうだった。そもそも入り時間に間に合うのかも疑わしい。気が気じゃない。彼女たちのパフォーマンスに圧倒されるあまり、遅刻しそうだったんだ。ごめんなさい。「僕は嫌だ」とは言えないから、全力でテレビ朝日に向かいました。
平手さんは、曲の合間に行われるMCタイムには顔を出さない。MCの最中は、欅坂のメンバーたちも、ニコニコと楽しげにトークを交わす。その姿に、10代の女の子らしさを感じ、安心感を覚えるんだ。だけど、繰り返すように平手さんはいない。そして、曲が始まると姿を現す。俺は、欅坂46は月のような存在と喩えているけど、平手さんは月の裏側だ。誰も覗いたことがない。もしかして平手友梨奈という存在は、ホログラムのように本当は実在していなんじゃないのか。社会の願いや幻想も似たようなもんだ。そんなことを酒でも煽りながら、ずっと喋っていたかったけど、もう一つのパンクの極北のために、俺はテレビ朝日にいた。
同じ日、俺は『アメトーーク!』の「BiSHドハマり芸人」(10月10日放送予定)の収録を控えていた。欅坂46のドーム公演を見てからのBiSHドハマり芸人。正気でなんていられない。欅坂46のドーム公演を目撃した人なら分かると思う。俺は、ガンギマリでテレビ朝日に突撃した状態だった。何も所持していないけど、何かしらの検査をされたら“黒”と言われるくらいアグレッシブな抜け殻になっていた。
さらに収録後は、 BiSHドハマり芸人たちと酒を交わし、彼らと別れた深夜のタクシーの中では、50代と思しき運転手から“最高のお笑い論”をかまされた。眠りについて目が覚めたら、また同じ一日が始まってもいいと思えるくらい幸せな一日だった。
今月は、「欅坂46のドーム公演」(10日更新)、「BiSHドハマり芸人の収録」(20日更新)、「深夜のタクシー」(30日更新)の“秋の三部作”としてお届けしたいと思う――。すべて初秋の同日に起こった出来事なんだ。
俺の杞憂を全壊させるほどの超満員。欅坂46のドーム公演は、救世主の登場を今か今かと待ちわびるかのように、緑色のサイリウムが雲海のようにドームを覆っていた。世の中で生きていくにあたって、否定することを肯定してくれる神の降臨を待つ、そんな気分だった。彼女たちが登場した瞬間、富士山のご来光のような光が降り注いだことは言うまでもない。古来から、なぜ山岳信仰が必要とされてきたのか、俺はちょっと分かったよね。
メンバーに恋をしている人もいれば、社会にNOを叩きつける彼女たちの姿勢に共感している人もいるだろう。欅坂46のアナーキーな世界観に、一緒に拳を振り上げたい10代20代のファン。そして、「ああいう風になりたかった」、「あんな風に生きてみたかった」なんて具合に、諦観と憧憬が絡み合ってしまう俺のような30代、40代のファン。思いを寄せる、託す動機がこれほどまでにグラデーション豊かなグループも珍しいと思う。
時代のカリスマを目撃したダブルアンコール
ライブは、非の打ちどころがなかった。前日のアンコールで、1年9ヶ月ぶりに「不協和音」を“解禁” したこともあって、終幕に向けてボルテージは上がりっぱなし。アンコールのラスト、事前の情報通り「不協和音」が始まり、名フレーズ「僕は嫌だ」の生音を聞いた瞬間、鼓膜から三半規管まで、耳の機能という機能のすべてがぶっ壊れた。この日のために、「耳って生えていたんだな」って思ったくらいだった。
また無慈悲な日常に戻るのか、さぁ帰ろう――。でも、一向にドームは明転しない。ざわめきだすドームの観衆。不気味に妖しく光り続ける欅坂のマーク。たった一人で平手友梨奈が登場し、ソロ曲「角を曲がる」を歌い始めたとき、イエス・キリストってこんな感じで復活したんじゃないかなって想像してしまった。アンコールが終わってダブルアンコールが始まるまでの復活の間を、俺は一生忘れない。
恐るべきは、平手友梨奈という存在の特別感だよね。きっとメンバーの中には、「なんで彼女だけ」って思う子もいると思う。卒業公演ならまだしも、欅坂46の東京ドーム公演だもの。平手さんではない他のメンバーを推しているファンだってたくさんいる。でも、正も負も全部背負って、たった一人で歌い上げた彼女の姿は、カリスマそのものだった。歌い終わって、一言、「ありがとうございました」と伝えると、まるでろうそくの炎を消したかのように真っ暗になった。
徐々に明転するドームの中で、俺は「どう“BiSHドハマり芸人”のテンションにもっていけばいいのか」、気が狂いそうだった。そもそも入り時間に間に合うのかも疑わしい。気が気じゃない。彼女たちのパフォーマンスに圧倒されるあまり、遅刻しそうだったんだ。ごめんなさい。「僕は嫌だ」とは言えないから、全力でテレビ朝日に向かいました。
平手さんは、曲の合間に行われるMCタイムには顔を出さない。MCの最中は、欅坂のメンバーたちも、ニコニコと楽しげにトークを交わす。その姿に、10代の女の子らしさを感じ、安心感を覚えるんだ。だけど、繰り返すように平手さんはいない。そして、曲が始まると姿を現す。俺は、欅坂46は月のような存在と喩えているけど、平手さんは月の裏側だ。誰も覗いたことがない。もしかして平手友梨奈という存在は、ホログラムのように本当は実在していなんじゃないのか。社会の願いや幻想も似たようなもんだ。そんなことを酒でも煽りながら、ずっと喋っていたかったけど、もう一つのパンクの極北のために、俺はテレビ朝日にいた。
※【徳井健太の菩薩目線】は、毎月10日、20日、30日更新です
◆プロフィル……とくい・けんた 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。