【インタビュー】古川雄輝 WOWOWオリジナルドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」“トレミー”が主人公に!
ミステリー作家・麻見和史の小説を原作としたWOWOW人気ドラマシリーズ「殺人分析班」。本作で話題を集めた猟奇的殺人犯「トレミー」こと八木沼雅人にスポットを当てたスピンオフドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」が10月よりスタート。視聴者から圧倒的人気を誇った殺人鬼が、3年ぶりにドラマシリーズに帰ってきた。日本のみならずアジア圏でも熱狂的なファンを持つ古川雄輝に主演作への意気込みを直撃。
古川雄輝(撮影・上岸卓史 ヘアメイク・赤塚修二(メーキャップルーム) スタイリスト・五十嵐堂寿)
冷酷無比な殺人鬼トレミー復活!
「殺人分析班」は、2015年WOWOWプライムで放送された「連続ドラマ 石の繭 殺人分析班」、「連続ドラマ 水晶の鼓動 殺人分析班」と続くオリジナルドラマシリーズ。3作目となる本作は、1作目『石の繭』で描かれた猟奇殺人の直前にスポットを当て、ひとりの青年が冷徹無比な殺人鬼へと変貌を遂げるまでを描く。主人公・八木沼雅人を演じるのは、人気俳優の古川雄輝。原作には描かれなかった殺人鬼の原点をどう演じたのか。作品への思いを聞いた。
3年ぶりの「殺人分析班」シリーズでWOWOW初主演。企画を聞いたときの心境は?
「純粋にうれしかったです。3回も同じ役をできることはあまりないですからね。『石の繭』では犯人役を演じましたが、犯人役って逮捕されたらその後、また出ることってなかなかないじゃないですか。でも『水晶の鼓動』という続編で、原作では登場しないのに脚本に書き加えてくださって。前回の打ち上げで“また撮れたらいいですね”なんて冗談で話していたのが今回実現したんです。同じスタッフの方とまた仕事ができるというのは、本当にうれしかったです」
3年経って、同じ役を演じる難しさは?
「役柄を研究するためにもう一回作品を見直しました。気になる動作や仕草を再確認して“こういうふうに座るんだ”とか“癖はこうだったな”とか。でも今作は同じ役でも殺人犯になる前の話なんです。『石の繭』、『水晶の鼓動』は、猟奇的殺人犯になった後の話なので。その状態でのお芝居しかしたことがなくて…。そこが難しかったですね。たとえば日常生活。雅人は、今まで人と会話をしているシーンが一度もなかったんです。人と話すときはどうしていたんだろう、とかそういう普通の部分に一番難しさを感じました。なので雅人がどの場面をきっかけにして猟奇的殺人犯・トレミーになってしまったのか、そのポイントがどこだったのか、を監督に質問しました」
原作にない役を演じる大変さとは。
「今回、大事になってくるのは“人との距離感”だと思ったんです。人物としては、殺人を長年計画していて、顔を隠すために髪を長くして、身分も隠して偽名も使っている人。でも、意外とこの作品では、同じアパートに住む老夫婦と普通に会話をしたりしているんですね。そういう場合はどうしたらいいんだろうって。これは新しい感覚でした。そういった部分の相談を監督と繰り返ししていきました」
物語の重要な要素となっているのが“母と息子”というテーマ。幼少期におけるその関係性が、雅人を殺人へと向かわせる人物形成に関わっている。母への思いは共感できる部分、と語る。
「殺人犯といえど、雅人に共感できる部分はあると思います。ダークヒーローというか、かわいそうな主人公なんですよね。殺人を犯しているんですけど、それは優しさが発端となったもので、それがトレミーという人物の魅力にもなっています。そういった背景が役に深みを与えていて、いいキャラクターになっていると思います。強いて言うなら、僕も母のことは好きなので、母親に対する思いとか、そこは一緒なのかなと思います」
古川自身は、幼いころの経験が今につながっていることはあるだろうか。
「ひとつは海外に行ったことですね。僕は7歳から11年間、海外に住んでいて。なので日本でずっと育った人とは少し感覚が違うところがあるのかなって思います。たとえば、よく“海外で暮らしたい”とか“留学したい”って言うじゃないですか。僕からすれば、日本って本当にすばらしい国だよ、と。実際、世界一の国じゃないかと思っています(笑)。そういうのって海外にいたからこそ持てた感覚なのかなと思います。あと、日本の製品が海外でものすごく高く評価されているんですが、それらが日本で作られていることを知っている人が少なくて残念に感じたりとか。日本のすごいところがなかなかアピールできなくて、歯がゆい思いをしたこともあります。役者としても、そう感じることがあります。海外の映画で日本人役が出てくる映画を見ていても、だいたい中国や韓国の人が演じていて、子供ながら“なんで日本人は海外で役者をやっていないんだろう”と思っていました。いまだって、海外で名前が知られている日本人の役者さんというと渡辺謙さんくらい。日本の外に住んでいたからこそ、日本人としてのプライドや国を思う気持ちは周りの人より強いかもしれませんね。英語を習得したことで、海外の作品もやらせていただく機会にも恵まれているので、そういう気持ちを胸に、活動の幅をこれからも広げていきたいと思っています」