ヴェンゲル氏が「街とサッカースタジアムの幸せな関係」をテーマに基調講演

第一部の講演に参加したFC東京の大金氏、ヴェンゲル氏、東京Vの羽生氏(左から)

トッテナムの「ビール戦略」には「ビールよりプレイヤー」


 モデレーターを務めたフローラン・ダバディー氏がアーセナルのライバルチームのトッテナム・ホットスパーの本拠地「トッテナム・ホットスパー・スタジアム」を例に挙げ「1時間前にファンを来させるために、ロンドンで一番うまいビールをサーブしていると自慢している。それは戦略としてありか?」と聞くとヴェンゲル氏は「ベストプレイヤーがいるということが一番の条件。目的はもちろんビールよりプレイヤー」とあくまで本質はサッカーであるべきことを強調。

 またかつてイングランドで80年代に問題となったフーリガンを念頭に「スポーツ、とりわけサッカーは社会的な責任を担っていると思う。サッカーファンがスタジアム内で取る行動もサッカーの社会的責任。だからそういうファンをスタジアム内で教育していくのも、サッカーの担う責任だと思う」などと話した。現在のイングランドのサッカーは「ここ20年くらいで変わってきたかもしれない。昔、フーリガンと呼ばれていた人たちはスタジアムから追い出された。イギリスではみんながスタジアムでサッカーの試合を見たいわけだから、そういった逸脱した行動をだんだん取らなくなってきたのではないか」などと現在のイギリスの状況を説明した。現在、イギリスのスタジアムは家族でも安全に観戦できる場所になっている。

 最後に「SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA」構想について、羽生氏は「やっと日本にもサステナビリティ―という言葉が世の中に出てきた。ずっと持続していくことの素晴らしさは日本人も知っている。もし渋谷にスタジアムができるのなら、長年にわたって人々の思いがそのスタジアムを変化させていくような建築物だったら素晴らしい」、大金氏は「365日毎日使える、必要とされる、行くと何かあるといったレガシーを感じられるスタジアムであることが必要なのではないかと思うし、まさに生きたスタジアムを作っていくことが大事だと思う」、ヴェンゲル氏は「スタジアムは多分、生活の一部、人生の一部といっても過言ではない。そのスタジアムに初めて足を運んだ日のことは忘れられない。どこに座ったかも誰と行ったかも、どんな試合を見たかも全部覚えている。そういうのがスタジアム。戻っていける場所、ホームみたいなものがスタジアムだと思う。ぜひそういったスタジアムができたら」などとそれぞれ期待をかけた。
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