【区長に聞く】いずれは代々木公園にスタジアムも!? 渋谷区・長谷部区長に聞く、変化し続けることを恐れない渋谷区
変化し続ける街、渋谷。今秋には、新スポット「渋谷スクランブルスクエア」(東棟)が開業するだけでなく、改装中のPARCOもリニューアルオープン。渋谷区はどんな未来を描くのか——。長谷部健渋谷区長に話を伺った。
渋谷区・長谷部区長(撮影・蔦野裕)
若者の街から幅広い世代が楽しめる街へ
「新しい街へと生まれ変わっているように見えるかもしれませんが、過去と現在と未来がミックスしていく渋谷区を作り上げていく」
そう長谷部健渋谷区長は、力強く語る。
「渋谷は絶えず変化し続けていく街です。私の祖父が見た景色、私が青春時代に見た景色、そして今の景色、世代によって渋谷の景色は異なります。常に推進力を持って前に進んでいく街。後ろ向きにならないからこそ、若い人がチャレンジできるような街でありたい」
DCブランド、109、キャットストリート。渋谷は、常に若者にとって新しい流行の発信地であり、呼応した若者が一旗揚げようと集う秘密基地のような場所だった。そのDNAは継承され、現在「100BANCH」を筆頭に、渋谷には若手起業家が集まり始めている。
もちろん若者だけではない。「幅広い年代にとって居心地の良い街にする。渋谷区は多様な人たちが認め合い、混じり合うことで新しいカルチャーを生み出してきた」と話すように、渋谷周辺にさまざまな世代が楽しめる商業施設が、次々と生まれているのも特徴だろう。
「私は第二次ベビーブーム世代です。渋谷の街は、最も人口のボリュームゾーンである1971〜1974年に生まれた世代にフォーカスを当てて変化をしてきた側面を持ちます。渋谷に思い入れのあるアラフィフの皆さんにとっても魅力的な街にしたい」
再オープンするPARCO劇場のこけら落としは、『志の輔らくご in PARCO 2020』。若者の街というイメージが先行する渋谷は、人口構成の変化に伴い、大人も楽しめる街へと変貌しつつある。また、「PARCOには、帰宅困難者支援機能が整備されます。昼間人口が多い渋谷区の大きな課題。大きな災害が起きたとしても対応できるような試みを展開していく」というように、ファッションやカルチャーの発信地に加え、地域と共生していく新時代を見据えた取り組みも行う。
「渋谷区は、渋谷駅周辺以外にも、恵比寿、広尾、原宿、千駄ヶ谷、代々木、幡ヶ谷など、個性豊かなエリアが集う。それぞれが渋谷区の“シティプライド”を持てるような、連動的な盛り上がりを作っていく」
“シティプライド”とは、例えるなら郷土愛のようなもの。ニューヨーカー、パリジャン、ロンドンっ子と呼ばれるように、渋谷区で暮らすことに誇りを覚える人が増えれば、自ずと街は活気づく。
「例えば、初台、笹塚、幡ヶ谷方面は大きな可能性を秘めています。玉川上水緑道を、(ニューヨークの)ハイラインのような世界に誇れる憩いの場にできればと考えています。また、ITの整備を進め、不燃化特区対策を施した古い建物に、NPO、NGO 、ソーシャルアントレプレナー(社会起業家)などが集えば、都庁とも近いため面白いシナジーが生まれるはず。都会の中で最先端の田舎暮らしをする——。そういったことも提案していきたい」
絵に描いた餅で終わらせないために、2018年、渋谷区は国内初の新しい形の産官学民連携組織である一般社団法人「渋谷未来デザイン」を設立。行政主導の枠組みを超え、渋谷区の民間企業や学校、市民などと協働・共創を推進している。そういえば、日本ではじめて「パートナーシップ制度」を導入したのも同区だった。「何か新しいことをしてくれるのではないか」。そんな期待が募る。
「私は、祖父の代から渋谷に根を下ろす3代目です。私自身、渋谷を愛する、シティプライドを持つ一人。一方で、京都や鎌倉に比べると、渋谷はまだまだ歴史が浅い場所です。可能性は大いにある。昔から渋谷区に根を下ろす人も、新しく渋谷区に根を下ろす人も、「渋谷区っていいよね」と思ってもらえるような街づくりを目指したい」