【インタビュー】戸田真琴の思う「孤独」とは? そして「考える」ことの大事さとは。

(撮影・蔦野裕)

「強いとか弱いとか、孤独かそうじゃないかということは、ただの振れ幅でしかない」


 本書では戸田真琴の考え方を述べるにとどまらず、その思考に至るプロセスを丁寧に書き込んでいる。書くにあたって整理した部分もあるとは思うが、これは常日頃から考えていること?
「そうですね。書くにあたって無理やりひねり出したようなものはほとんどないです」

 こういうことを常に考えていると疲れそう。
「ああ…。そうですね。疲れます。疲れますけど、いろいろなことを考えたほうが人生は楽しいとも思っています。

 孤独か孤独でないかとか、人間として強いか弱いかということについては、皆さん、言葉に左右されすぎてしまっているんじゃないでしょうか。孤独じゃないほうが、あるいは強い人間のほうがいいんじゃないかと、自分の価値を決められていることが多いと思うんですけど、強いとか弱いとか、孤独かそうじゃないかということは、ただの振れ幅でしかないと私は思っているんです。生まれながら孤独じゃない人も、孤独である生き方を知ることができたほうが振れ幅があって得だと思うし、逆もそう。弱者に生まれて、強く生まれた人のことを想像することも人間として価値があると思います。“自分は何不自由なく生きて来ました”という人も、ずっと一人ぼっちで誰にも頼れない人生を想像するとか。そういうところに価値があると思っているので、いろいろなことを考えてみたほうが、人生短いんだから得なんじゃないかな、という思いはあります」

 基本的には、ひとつの事象についてあらゆる角度から見たほうがいいということをさまざまなケースで推奨している気がします。昔からそういう見方をしていた?
「そうですね。偏った面からしか見ないと、結局真実は分からない。そうなった時に自分とは違った視点からものを見ている人とぶつかるだけになってしまうのは本当にもったいないと思っています。本当は争わなくてもいいところで争ってしまったりといったことがすごくあるなと思っていて、“多面的にものをとらえたほうがいい”ということについてはたくさん書いていると思います」

 本書を読むと幼少期からそういった考え方を持っていたよう。“大人びる”ともちょっと違う。それは環境が生んだものなのか、もともと自分にあったものなのか。
「一緒の環境で育った人が同じようなものの見方をしているわけではないと思います。姉は全くこうではないですし、もっと複雑な家庭環境にあっても、ここまでものを考えないで生きてきた人もいっぱいいるでしょうし。そこは私にもよく分からないです。そう生まれちゃったという話でしかない」

 では個人の資質? 気が付いたらこういう思考回路を持っていた?
「そうですね。特にきっかけとか、何かに影響を受けたということはないです」