【インタビュー】ノゾエ征爾「自分の青春の原点というか衝動の原点に立ち返ったような作品」

 劇作家で演出家、そして俳優としても活躍するノゾエ征爾が主宰を務める劇団「はえぎわ」の番外公演『お化けの進くん』が2月28日から東京・有楽町のニッポン放送 イマジン・スタジオで上演される。番外公演ではあるが、はえぎわの公演は約1年ぶり。今回は「“ミュージカルみたいな”作品」と言うノゾエに話を聞いた。
ノゾエ征爾(撮影・蔦野裕)

はえぎわの番外公演『お化けの進くん』が2月28日から上演開始


 まず「ミュージカルみたいな」というのは?
「世間一般で思われているミュージカルとは全く違うものになります。“ザ・ミュージカル”というものはやらなくていいというか、やるつもりはなくて、音楽と演劇が密に絡まるもの。世間的には“音楽劇”というのかもしれないですけど、歌もわりと入ってくる、そういう作品になるかと思います。僕は高校性の頃からバンドをやっていたので、これまでも作品作りにおいては音楽ってかなり大きなパーツだったんですけど、もう一歩踏み込んでがっつり絡んだような作品をつくれないかな?と思ってこういう作品を作ってみようと思いました」

 今出た音楽劇とミュージカルの違いはどうとらえている?
「なんなんですかね(笑)。僕の認識では、いわゆる台詞も歌っちゃうというのが、ミュージカル的なものという感触はあるんですけどね。それが答えかどうかは分からないんですけど」

 今回はSAKEROCKのメンバーであった田中馨率いるバンド「Hei tanaka」から田中、あだち麗三郎、池田俊彦の3人が参加し、生バンドで演奏する。「もう一歩踏み込もう」と思ったのはやはり田中馨の存在が大きい?
「田中馨君にはこれまで僕が脚本・演出を手掛けた作品で音楽を担当してもらったり、僕がHei Tanakaのアルバムの中の1曲を作詞したりということはしていたんですが、今回、ニッポン放送さんからお話をいただいて、何をやりたいかなと思った時に、彼ともうワンランクがっつり組んで演劇をやってみたいなと思ったのが最初でした」

 最近は小劇場出身の劇作家や演出家がプロデュース公演でミュージカルや音楽劇を手掛けるケースが増えているように思える。
「確かにそういう流れはあるなとは思っています。ちょっと違うかもしれないんですけど、その一端には権利の問題もあるのかなとも思っています。劇中で既成の音楽を使うことについて以前よりも厳しくなってきているということはちょっと耳にしたことがあります。それだったらオリジナルの音楽にしようか、じゃあいっそのこともっと音楽を作品の中に入れちゃおうか、そうなるとちょっと音楽的な要素が強まる作品になるな、みたいなこともなくはないのかなという気はしています。

 それに今はそれまでミュージカルや音楽劇をやっていなかった人がやることで注目されているところもあると思いますが、これからは音楽と演劇が深く絡まっていくこと自体が特別視されないようになっていけばいいなと思っています。特別視というのは、どこか特別枠みたいな印象になったりとか“普段と違うんだ”と思われるようなことですね。

 今回の作品も単純に普段作っている作品の延長線上にあるという意識でいます。前から台詞のリズムというものが好きなんです。言葉なんだけれど音にもリズムにもなっているというか。いわゆるラップのようなリズムではなくて、会話の掛け合いの心地良さなんかが好きだったんです。谷川俊太郎さんの言葉で“言葉は音楽に恋している”というものがあるんですけど、言葉自体がどこか地続きにあるような感覚が、自分の中で以前より強まっているとように思います」
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