齊藤工総監督!映画「COMPLY+-ANCE コンプライアンス」にみる“トンガる”ことの怖さ【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 今日からカプセル兵団超外伝!アクティブイマジネーション朗読劇「中国神話の世界」が阿佐ヶ谷アルシェで始まります。

 劇場も感染症対策など、出来る限り行っておりますので、皆様もしっかり対策の上、是非いらして下さい!

 みんな一生懸命いい作品を作り上げました!

 今回は鑑賞機です。

 では始めましょう。
黒田勇樹
 齊藤工さんが総監督を務めるコンプライアンスをモチーフにしたオムニバス映画、その名も「COMPLY+-ANCE コンプライアンス」を観てきました。
 コンプライアンスという言葉の本来の和訳は「法令順守」という、現代ではどこの企業でも耳にする単語なのですが、この映画で、ほぼ「自主規制」という意味で「コンプラ」が使われ、テーマとして描かれていました。

「エンタメ業界、自主規制ばっかりしてたら、こんなんなっちゃうよ?」という皮肉満載の作品群、僕はめちゃめちゃ楽しめたし、決してこの作品内と一般における「コンプラ」に対しての解釈のズレをツッコミたいわけでもないんですが、「どれほどの人に伝わるのだろうか」と考えてしまうのです。

「コンプラ」って、今や芸能界のギョーカイ用語、「根拠は明確でないけど、ヤバそうな要素を自主規制する」時の合言葉になっちゃってるんです。
 例えば一般企業で、性的な表現を注意しようとしたら「セクハラですよ?」とはなるけど、明らかな法令順守に反する言動でも「コンプラですよ?」とは、ならないじゃないですか。

 これをゲーノー界では「コンプラ」って言うのが流行っちゃった感じだとでも思って下さい。

 僕が恐ろしいと思うのは、このギョーカイ的「コンプラ」が腑に落ちていて脊髄で笑える人と、これが腑に落ちていない界隈の、一生懸命理解しようとする熱心な観客や、わからないことをわからないままでも観れちゃうライトな観客たちが終わった後に「面白い」と思えるかどうか。

 強烈なメッセージを内包した映画なんですが、大衆の感想が「わからなかった」だと、ちゃんと観て「自分は面白いと思ったのに」って人たちの感想まで「ま、確かにわかりづらかったし面白くなかったかも」と、影響力を弱めてしまう危険性があるんですよ。

 最近SNS界隈で耳にする「意見が“トガる”」
 広くネットに発言しているようで、実は自分を肯定する人だけが集まってくるので、自分の周囲の人間に承認されようと、意見がドンドン極端になっていくという現象なんですが、この映画にも(まぁ、自主映画界隈には元々この空気が渦巻いてるんですが…)それに似た怖さを感じました。

 さて、誰が見ても「自主規制」の「恐ろしさ」と「滑稽さ」がわかるようなエンタメ大作、誰が作ることになるのかなぁ。
 オムニバスという作品の寄せ集めで「コンプラ」の象徴である「モザイク」を表現した、ハイセンスな齊藤監督の次回作、ちょう楽しみにしています。
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